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[[ファイル:新本格ミステリを識るための100冊.jpeg|サムネイル|中央|『新本格ミステリを識るための100冊』の書影。]]
'''コナンかよ現象'''とは、ミステリーの話題になったとき、'''青山剛昌「名探偵コナン」'''<ref>青山剛昌「名探偵コナン」(小学館)</ref>などが引き合いに出されると、本格ミステリファンが「コナン(もしくは他の作品名)かよ」と思う現象のことである。
'''『新本格ミステリを識るための100冊 令和のためのミステリブックガイド』'''とは、[http://www.mystery.or.jp/member/detail/0811 佳多山大地]の著書である。


==概要==
==概要==
コナンかよ現象は、未熟な本格ミステリファンの心の狭さによって起こる。他の人を寛大な心で受け止めることができず、かといって自分の趣味を他人に話す勇気もない、一部の本格ミステリファンのこういう屈折した感情が、コナンかよ現象を引き起こしている。
『新本格ミステリを識るための100冊 令和のためのミステリブックガイド』は、2021年に星海社から出版されたブックガイドである。1987年から起こった本格ミステリ復権ムーブメント、いわゆる'''新本格'''の時代の国内ミステリに焦点を当てた内容となっている。また、「はじめに」で著者の佳多山は、
<blockquote>この本は、まだうら若き十代の――せいぜい草臥れて二十代の読者に向けて書いています。</blockquote>
と書いている。


コナンかよ現象は全ての本格ミステリファンが抱くと思われることもあるが、それは誤解である。また、名前に「コナン」とついているが、コナンかよ現象は「名探偵コナン」以外の作品にも起こり得る。
この本は、2011年に文芸誌『ファウスト』に掲載された、佳多山の「新本格を識るための100冊」という文章がもとになっている。新本格ミステリを大枠で捉えるために読むべき推理小説を100冊セレクトするという趣旨は、変わっていない。だが、選書は時代の流れに合わせて3分の1ほど変わっており、紹介文も充実している。また、島田荘司『占星術殺人事件』、竹本健治『匣の中の失楽』、殊能将之『ハサミ男』をそれぞれ題材とした短い評論が収録されている<ref>なお、この評論は題材作品のネタばらしを含むため、未読の人は注意されたい。</ref>。


==対象となる作品==
==内容==
コナンかよ現象の対象となる作品は人によって異なるが、その人が「'''これは本格ミステリではない'''」と見なしている作品が対象となることがわかっている。どの作品が本格ミステリか、そもそも本格ミステリとはなんなのか、そういった定義が曖昧なため、コナンかよ現象を起こす作品の特定は難しい。
この書籍はおおまかに10章に分かれており、それぞれ10冊ずつ、テーマにあった本の「あらすじ」と「ガイド」、「併読のススメ」が書かれている。それに加え先述した評論3編が主な内容である。


一般的には、本格ミステリとは「'''謎の論理的な解決を主眼とした、小説・漫画などの作品'''」とされる。他方、「名探偵コナン」には、実現不可能なトリックや論理の穴が目立ち、しかも近年では謎の解決ではなくアクションに主眼が置かれているから、広義のミステリではあっても本格ミステリではないとする人もいる。ただ、このような特徴を持つ本格ミステリとされる作品も多い、また仮に本格ミステリではなくとも何の問題もないという反論も多い。
先に引用した通り、このブックガイドは現在の[[WikiWiki:WikiWiki用語#「麻薬の常習者」|麻薬の常習者]]諸君にうってつけである。しかし、ガイドは充実しているが、紹介するためには少しは本の内容の核心に触れねばならない。それを避け、全く予備知識の無い状態で読みたいという人は、選ばれた本を後に列挙するので、ぜひ活用してほしい。


しかし、コナンかよ現象は個人の鬱屈した心理が原因のため、客観的な評価はあまり関係がないのが実情である。
==選出作品==
この節では、『新本格ミステリを識るための100冊』に選出された作品を紹介する。「併読のススメ」欄においては、文中の「併読のススメ」に名前が出た作品を紹介する。なお、番号欄は便宜上1~100までつけられたものであり、『[[東西ミステリーベスト100]]』のような順位ではない。


==具体例==
===第1章 第一世代の肖像===
この節では、コナンかよ現象の具体例を述べる。ただし、あくまで一個人の例である。
この章では、新本格草創期を代表する5人の作家の、デビュー作とそれ以外の代表作を紹介している。
 
===ミステリー全体の話題になったとき===
{| class="wikitable"
{| class="wikitable"
! 他の人の発言
! 番号
! 卑屈な本格ミステリファンの思い
! 題名と作者
! 併読のススメ
|-
| 1
| 綾辻行人『[[館シリーズ|十角館の殺人]]』
| アガサ・クリスティー『そして誰もいなくなった』<br>綾辻行人『[[館シリーズ|時計館の殺人]]』
|-
| 2
| 歌野晶午『長い家の殺人』
| パトリシア・ハイスミス『見知らぬ乗客』<br>ニコラス・ブレイク『血ぬられた報酬』
|-
| 3
| 法月綸太郞『密閉教室』
| 法月綸太郞『一の悲劇』
|-
|-
| ああ、コナンとか?
| 4
| いやコナンかよ。
| 有栖川有栖『月光ゲーム Yの悲劇'88』
| 鮎川哲也『黒いトランク』、『黒い白鳥』、『りら荘事件』
|-
|-
| ああ、天久鷹央<ref>知念実希人「天久鷹央の推理カルテ」シリーズ(新潮社)</ref>とか?
| 5
| まあ、うん。
| 我孫子武丸『8の殺人』
| [[ジョン]]・ディクスン・カー『三つの棺』<br>我孫子武丸『0の殺人』
|-
|-
| ああ、東野圭吾<ref>日本の小説家。1958~。</ref>とか?
| 6
| 人気だよね。
| 我孫子武丸『殺戮にいたる病』
| 『かまいたちの夜』(ゲームソフト)<ref>我孫子武丸がシナリオを担当した。</ref><br>我孫子武丸『叙述トリック試論とか』
|-
|-
| ああ、クロフツ<ref>F・W・クロフツ。イギリスの小説家。1879~1957。</ref>とか?
| 7
| こいつ、できる・・・!
| 法月綸太郞『法月綸太郞の功績』
| エラリー・クイーン『エジプト十字架の謎』、〈悲劇四部作〉<ref>『Xの悲劇』、『Yの悲劇』、『Zの悲劇』、『レーン最後の事件』の4作。</ref>
|-
|-
| ああ、小栗虫太郎<ref>日本の小説家。1901~1946。</ref>とか?
| 8
| こいつやべえぞ!
| 歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』
| 歌野晶午『ブードゥー・チャイルド』、〈密室殺人ゲーム〉シリーズ<ref>既刊は『密室殺人ゲーム王手飛車取り』、『密室殺人ゲーム2.0』、『密室殺人ゲームマニアックス』の3作。</ref>
|-
| 9
| 綾辻行人『Another』
| 綾辻行人『Another エピソードS』、『Another 2001』、『緋色の囁き』、『霧越邸殺人事件』
|-
| 10
| 有栖川有栖『鍵の掛かった男』
| 有栖川有栖『モロッコ水晶の謎』
|}
|}


===暗号ものの話になったとき===
===第2章 今日もどこかで〈日常の謎〉===
この章では、殺人等の犯罪が(少なくとも表立っては)登場しない「日常の謎」と呼ばれる作品を紹介している。
{| class="wikitable"
{| class="wikitable"
! 他の人の発言
! 番号
! 卑屈な本格ミステリファンの思い
! 題名と作者
! 併読のススメ
|-
|-
| コナンにそういう話あったよ!
| 11
| いやコナンかよ。
| 北村薫『空飛ぶ馬』
| 北村薫『夜の蟬』、『盤上の敵』
|-
|-
| パスワードシリーズ<ref>松原秀行「パソコン通信探偵団事件ノート」シリーズ(講談社)</ref>とか読んでたよ!
| 12
| なるほどね。
| 若竹七海『ぼくのミステリな日常』
| 若竹七海等『競作 五十円玉二十枚の謎』
|-
|-
| <ruby>都会<rt>まち</rt></ruby>のトム・ソーヤ<ref>はやみねかおる「<ruby>都会<rt>まち</rt></ruby>のトム・ソーヤ」(講談社)</ref>にそんなのあった!
| 13
| まあはやみねかおるだから許す。
| 加納朋子『掌の中の小鳥』
| 加納朋子『無菌病棟より愛をこめて』、『沙羅は和子の名を呼ぶ』
|-
|-
| 涙香迷宮<ref>竹本健治「涙香迷宮」(講談社)</ref>がすごかった!
| 14
| こいつ、できる・・・!
| 米澤穂信『氷菓』
| 米澤穂信〈小市民〉シリーズ<ref>既刊は『春期限定いちごタルト事件』、『夏期限定トロピカルパフェ事件』、『秋期限定栗きんとん事件』、『巴里マカロンの謎』の4作。</ref>、『インシテミル』<br>佳多山大地『新本格ミステリの話をしよう』
|-
|-
| 運命の八分休符<ref>連城三紀彦「運命の八分休符」(東京創元社)</ref>っていうのが面白かったよ!
| 15
| こいつやべえぞ!
| 倉知淳『夜届く 猫丸先輩の推測』
|}
| 倉知淳『壺中の天国』
 
===密室ものの話になったとき===
{| class="wikitable"
! 他の人の発言
! 卑屈な本格ミステリファンの思い
|-
|-
| コナンにあった気がする。
| 16
| いやコナンかよ。
| 大倉崇裕『やさしい死神』
| 『刑事コロンボ』(テレビドラマ)<br>大倉崇裕〈福家警部補〉シリーズ<ref>既刊は『福家警部補の挨拶』、『福家警部補の再訪』、『福家警部補の報告』、『福家警部補の追及』、『福家警部補の考察』の5作。</ref>
|-
|-
| 天久鷹央にあった気がする。
| 17
| あったねえ。
| 大崎梢『サイン会はいかが? 成風堂書店事件メモ』
| 近藤史恵『タルト・タタンの夢』<br>天祢涼『境内ではお静かに』<br>水生大海『ひよっこ社労士のヒナコ』
|-
|-
| O.ヘンリ<ref>オー・ヘンリ。アメリカの小説家。1862~1910。</ref>の短編にあった気がする。
| 18
| なんでもあるよ。
| 門井慶喜『人形の部屋』
| S・S・ヴァン・ダイン『僧正殺人事件』、『カブト虫殺人事件』、「推理小説作法の二十則」
|-
|-
| [[ジョン]]・ディクスン・カー<ref>アメリカの小説家。1906~1977。</ref>にあった気がする。
| 19
| こいつ、できる・・・! ってかほぼ密室ものだろ!
| 三上延『ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~』
| 梶山季之『せどり男爵数奇譚』<br>喜国雅彦『本棚探偵の冒険』
|-
|-
| クレイトン・ロースン<ref>アメリカの小説家、雑誌編集者。1906~1971。</ref>にあった気がする。
| 20
| こいつやべえぞ!
| 阿藤玲『お人好しの放課後 御出学園帰宅部の冒険』
| 西村京太郎『殺しの双曲線』
|}
|}


===伏線回収の話になったとき===
===第3章 ザッツ・アバンギャルド!===
この章では、実験的・批判的精神にあふれたいわゆる問題作を紹介している。
{| class="wikitable"
{| class="wikitable"
! 他の人の発言
! 番号
! 卑屈な本格ミステリファンの思い
! 題名と作者
|-
! 併読のススメ
| 5分後シリーズ<ref>「5分後に意外な結末」シリーズ(学研)</ref>すごいよな!
| いや5分後かよ。
|-
| 進撃の巨人<ref>諫山創「進撃の巨人」(講談社)</ref>すごいよな!
| ミステリだけじゃないもんな。
|-
|-
| 伊坂幸太郎<ref>日本の小説家。1971~。</ref>すごいよな!
| 21
| 人気だよね。
| 山口雅也『生ける屍の死』
| 山口雅也『奇偶』
|-
|-
| [[館シリーズ|黒猫館の殺人]]<ref>綾辻行人「黒猫館の殺人」(講談社)</ref>すごいよな!
| 22
| こいつ、できる・・・!
| 麻耶雄嵩『夏と冬の<ruby>奏鳴曲<rt>ソナタ</rt></ruby>
| 諸岡卓真『現代本格ミステリの研究』
|-
|-
| 龍神池の小さな死体<ref>梶龍雄「龍神池の小さな死体」</ref>すごいよな!
| こいつやべえぞ!
|}
|}


==脚注==
==脚注==
<references/>
<references/>
2,085

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