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==起==
{{お知らせ|内容=この記事は実際の出来事について記述しています。<br>'''内容をより正確にするために、加筆訂正にご協力ください。'''}}
「ねえ小島さん、'''叙述トリック'''って知ってます?」
<br>「急になんだよタケ。まあ知ってるけどさ」
<br> 朝の6時15分、僕はいつもより少し早く目覚めてしまい、同じく起きていた小島さんにこの質問をぶつけたのだった。僕はしばらく前にトラブルを起こして大学を退学になり、今は男4人で同居している。ルームシェアだと思えばましだけど…誰が進んで野郎共と一つ屋根の下で住むものか。4人というのは、僕と小島さん、そして京極さんと三津田さん。皆僕より年上だ。あとの2人はまだぐっすり寝こけている。
<br>「こないだ読んだ本にあって。ミステリーあたりはからっきしなんですよ」
<br>「はっ、マジかよ」
<br> 小島さんは鼻で笑った。お前がかよ、と顔が語っている。
<br>「小島さんはこういうの好きだったでしょう? 教えてくださいよ」
<br>「わかったよ。丁度叙述トリックについての昔話があってな、聞かせてやるよ。ただし、手を動かしながらだ」
<br> 見ると、三津田さんと京極さんがもぞもぞと起き出していた。いつも同じ時間に起きていると、アラームなぞ無くとも自然と目が覚めてしまうものだ。僕はため息を吐くと、布団を畳むために立ち上がった。
<br>「あれは俺が小4の時だった」
<br> そう言って小島さんは話し始めた。


<font face="Tahoma">
{{未検証}}
==序==
「ねえ亮二兄さん、叙述トリックって知ってる?」
<br>「急になんだよケン。まあ知ってるけどさ」
<br> ケンってのは俺、健児のあだ名だ。詳しくは覚えちゃいないが、お前と同様叙述トリックって言葉を何かの本で見たんだろう。亮二兄さんとは年が離れててな、子供心には何でも知ってるすごい人に思えたのさ。
<br>「叙述トリックっていうのはな、'''作者が読者に仕掛けるトリック'''のことだ」
<br>「作者が読者に?」
<br>「そうだ。普通のトリックってのは、'''犯人が被害者やら探偵やらに仕掛けるもの'''だろう? ほら、例えば」
<br> そこで兄さんは椅子から立ち上がった。俺はベッドに座ったまま黙って話を聞いていた。
<br>「頭で想像しながら聞くんだぞ。ここには俺の部屋のドアがある。部屋の中に死体が転がってるわけだ。そして俺はこの部屋を密室にしようとする。そこで、俺は長い長い氷の棒を持ってくる。『どこから?』とかは考えなくていい。あくまで例なんだからな」
<br> まさにそう質問しようとしていた俺は慌てて口を噤んだ。兄さんは簡易トリックを実演し始めた。
<br>「そして片方の端をドアの向かいの壁につけ、もう片方の端は左手で持っておく。とりあえずこのギターを氷の棒と思って持っとこう。そうしたら…、よっと、ドアを俺が通り抜けられるくらい開けといて、右手は外側のドアノブを掴んどく。そして氷の棒のもう片端をドアにくっつけて立て掛け、手を放すと同時に素早く外へ出る!」
<br> ゴトッとギターが倒れる音がした。
<br>「こうすると、氷がつっかえ棒となって、密室ができるわけだ。あとは鍵が掛かっているように見せかけて、溶けるのを待ってドアを破り突入した瞬間鍵を閉めれば、密室の完成というわけだ!」
<br> 正直後半はよく理解できなかったが、兄さんが見事に密室を作り上げたのがすごいと感嘆したよ。今思えば子供騙しのトリックだけどね。
<br>「どうだ憲、兄さんが何したかはわかったか?」
<br>「うん!」
<br>「はは、そら良かった。さすが俺の弟だな。よし、あれ、ギターが引っかかって、ギリ通れない…くそ」
<br> そこでバキッと嫌な音がした。
<br>「ああ、俺のギター! 高かったのに!!」
<br> 兄さんはギターを上手くつっかえさせ過ぎたようだった。策士策に溺れるっていうか、兄さんも抜けてたんだな。俺は大笑いして、しまいにゃ兄さんもつられて大笑いしてたよ。
<br> 笑いの波が収まると、兄さんは説明を再開した。
<br>「いまやったトリックは、犯人が警察もしくは探偵に仕掛けるトリックだ。密室にすることで、捜査側を困らせようとしているんだからな。でも、叙述トリックはそうじゃない」
<br>「ならどんなトリックなの?」
<br>「さっきも言ったが、作者が読者に仕掛けるトリックだ。具体例を挙げるなら、こんな感じだ。
<br> 太郎さんが殺されました。犯行が可能だったのは、太郎の弟と妹、次郎、花子のどっちかです。そして現場には口紅が落ちていました。さて、犯人は誰でしょう?」
<br>「花子!」
<br> 俺はすぐに答えた。
<br>「ブブー、残念! 実は次郎は女で、花子は男だったんです! というわけで正解は次郎でした!」
<br> 俺は唖然としていた。だって、そんなことないだろ? すると兄さんは少し焦ったような声で付け足した。
<br>「まあ、これは適当に作っただけだから。ちゃんとしたやつは、もっと丁寧に伏線が張られているから安心しろ。こんな風に、'''作者が読者を直接騙す'''のが、叙述トリックだ」
<br> 当時の俺は分かったような分からないような感じだったが、疑問は残った。
<br>「なんでそんなことするの?」
<br>「まあ、理由は大きく分けて2つだろうな。
<br> 1つは、'''ミステリの難易度を上げるため'''だ。ミステリには、犯人とかを当てる作者vs読者のバトルっていう一面があるんだ。どうしても勝ちたい作者が、こんなトリックを仕掛けるんだ。お前もさっき正解できなかっただろ? そういうことだ。
<br> 2つ目は、'''読者を驚かせるため'''だ。さっき俺の話を聞いたお前は驚いたろ? 世の中には、驚くのが楽しいっていう変な人種がいるんだ。そいつらを喜ばせるために作者は叙述トリックを仕掛けるのさ。
<br> おっと、長く喋り過ぎたな。もう小学生は寝る時間だ。じゃあ、おやすみ」
<br> こうしてその日の会話は終わった。
</font>


==承==
{{観点}}
 小島さんはそこまで話したところで、口を閉じた。いつの間にか京極さんと三津田さんも話に聞き入っている。
<br>「いいところだが、時間だ。続きはまた後でな」
<br> そう言って小島さんは時計を指した。6時45分。僕は大きく溜め息をつくと、顔を洗いに洗面所へ向かった。
<br>「タケ君は溜め息ばかり吐いてるねえ」
<br>「そんなんだと幸運も逃げていっちゃうよ」
<br>「そうだぞ。みっちゃん、ゴクさん、もっと言ってやれ!」
<br> 3人のおじさんは揃って僕を子供扱いする。まあ30代の小島さんはともかく、京極さんと三津田さんは還暦が近い。年の差を考えれば当然なのかもしれない。でも、気分のいいことではないからやめてくれと言ってるんだが、本人たちは改善する気がないらしい。僕はまた溜め息を吐こうとして、慌てて口を閉じた。


 僕たち4人は同じ工場で働いている。仕事は楽だし働く時間も短いが、僕は根っからの労働嫌いだ。できるなら働きたくないが、それができたら苦労しない。
'''ババアゲーム'''とは、纏足ババアゲームから派生した、ババアに任意の事物の特性を仮託させるというゲームである。
<br> 午前10時、僕たちは作られた商品をひたすら箱に詰める作業をしていた。まったく、暇で暇でしょうがない。そこで僕は、小島さんに話の続きをするよう催促した。叙述トリックの説明はあらかた終わったと思うんだけど、続きとは何だろう? 京極さんと三津田さんも、目を輝かせて小島さんを見つめている。この人たちホントに50代か? 目の輝きは小学生だぞ?
<br> 小島さんは「しゃあねえなあ」と言いつつも、どこか楽しげに続きを話し始めた。


<font face="Tahoma">
==概要==
====
纏足ババアゲームは、長距離ウォーキングの往路の後半に生み出され、一時の隆盛を誇ったゲームである。[[魯迅 (ゲーム)|魯迅ゲーム]]に続いて常習者を魅了したが、復路には[[畜生!]]に取って代わられた。
 その次の日の晩、夕飯の時間になって、母親に言われて俺は2階にいる兄貴を呼びに行った。兄貴の部屋をノックしようとしたところで、急にドアが開き、俺は鼻をしたたかにぶつけた。兄貴は笑いながら「すまんすまん」と謝ったが、こっちは痛いのなんの。不貞腐れたよ。鼻の頭に絆創膏を貼らないといけなかった。
<br>  ともかく夕飯になった。そのときは俺と兄貴、親父とお袋の4人暮らしだった。はは、今と同じだな。お袋は専業主婦、親父は市議会議員だった。親父はその日もいつも通り「政治を〜」と理想を語っていた。だから母親が、
<br>「せっかくトシちゃんが賞状貰ってきたのに、お父さんったら政治、政治ってそればっかり。少しは気にかけてやってくださいよ」
<br>と嗜めた。だが親父は、
<br>「大丈夫だ、弟ってのは兄の背を見て育つんだ。だからトシも優秀に育ってるし、これからもそうだろう。な?」
<br> 事実俺はそんなに気にしてなかったから、適当に返事して終わったと思う。兄は教育通り優秀に育ったんだ。まあ弟がそうじゃないことは、お前らも知っての通りだ。
<br> そしてその次の日の3時、俺は小遣いで買っといたプリンを食べようと、2階の自室からキッチンへ降りてきた。さあ食べようと冷蔵庫を開け放ったんだが、確かに2段目に入れといたはずのプリンがない。中を隅から隅まで探したが、ない。そこで横のゴミ箱を見ると、なんとプリンの空容器が捨ててあったのさ!
<br> それを見て幼き俺は愕然として落涙、この世の不条理を嘆いた…わけじゃあない。正直あんまショックは受けなかった。プリン大好きってわけじゃないし、小遣いは十分貰ってたから惜しくもなかった。たかがプリン1個くらいで家族を詰るような、狭量な男じゃなかったんだ、俺は。
<br> だが、ここで一つ疑問が残った。誰がプリンを食べたのだろう? 容器はゴミの上の方にあり、俺が昼飯のときにこぼしたレタスよりも上にある。でも、両親は昼飯の前から買い物に行っていて、まだ帰ってきていない。そして俺がレタスを捨てたとき、プリンのカップなんて無かった。なら、親が食べたのではない。そして、兄さんは珍しいことにプリンがとても苦手だ。食べるなんてこと絶対にあり得ない。今日は客も一切来ていない…。
<br> そこまで考えたところで、自分が無駄な思考をしていたことに気づいた。落ち着いて考えれば、答えは歴然じゃあないか…。
</font>


==転==
しかしその後、このゲームは変質し、纏足から脱却した「ババアゲーム」として生まれ変わった。再び息を吹き返したババアゲームはさらなる繁栄を謳歌した。
「おいそこ、無駄話するんじゃない!」
<br> そこまで小島さんが話したところで、高い椅子に座ったオヤジに注意された。三津田さんと京極さんはそそくさと箱詰め作業をし始める。まったく、いいところだったのに! あいつ、僕たちが働いてるのを見てるだけで給料が入るなんて…。工場勤めを辞められた暁には、あの仕事に転職しようかしら。まあ無理か。
<br> 小島さんが話を再開する気配はない。続きはお預けかあ。
<br> でも、プリンを食べたのは一体誰だろう? 僕はそのことばかりを考え続け、いつの間にか昼休憩の時間になっていた。


 昼飯食いながらでも話の続きを聞かせてもらおうと思ったが、小島さんは手早くリゾットをかきこむと、どこかに行ってしまった。京極さんはそれを見て、
常習者は数々のゲームを作り上げてきたが、ババアゲームを最後に新たな言葉遊びの創出は下火になり、やがてなくなった。ババアゲームは、常習者の自然発生的ゲームの集大成にして最後の花火であると言える。
<br>「ありゃ女だな。女に逢いに行くのさ」
<br>と顎をさすりながら言った。三津田さんも小指を立てて笑っている。まさかと思ったが、小島さんならあり得るかもしれない。
<br>「彼女さん、小島さんに相当入れ込んでるんすね」
<br>と言うと、2人のおじさんは揃って頷いた。この人らホントに中年か? ニヤケ面は中学生そのものだぞ?


 小島さんは仕事が再開する直前に戻って来た。よっしゃ話の続きをせがもうと身構えた矢先、残念ながら京極さんと三津田さんは離れた場所に増援に向かわされてしまった。2人のいないところで続きを聞くのは忍びない。だが…。
==歴史==
<br>「さっき聞いた話なんだが、叙述トリックにもいろいろあるらしいぜ」
===長距離ウォーキング往路後半――纏足ババアゲーム===
<br> 葛藤していると、小島さんが突然口を開いた。
きっかけは、常習者が興じていた魯迅ゲームの行き詰まりだった。「魯迅」に似た音は無数にあるが、複数名が一時間以上それを言い続ければ、アイデアは枯渇していく。一行の歩みにも沈黙が伴うようになった往路の後半、[[利用者:キュアラプラプ]]が突然このようなことを言った。
<br>「『'''意味なし叙述'''』ってのと『'''意味あり叙述'''』ってのがあるらしい」
<br>「さっきって、昼休みに?」
<br>「ああ」
<br>「もしかして、恋人?」
<br>「ん、さてはみっちゃんとゴクさんに入れ知恵されたな? あの爺さんたち、勘が鋭いからなぁ。すごいぜあの人らは」
<br> ならなぜこんな底辺の暮らしをしてるんだ。
<br>「まあそれはさておき、叙述トリックの説明だ。小説とかで叙述トリックが仕掛けられているとする。問題は、なぜ仕掛けられたのか、だ。」
<br> 何か小島さんのお兄さんが作中で話してた気がするな。
<br>「もし読者を驚かせるためだけに仕掛けられたものなら、それは『意味なし叙述』だ。でも、犯人当てとかの要素として組み込まれたものならば、作品の成立に不可欠だから、『意味あり叙述』となる」
<br>「えーっと、小島さんのお兄さんの話に合わせると…読者を驚かせるためのものが意味なし叙述、ミステリの難易度を上げるためのものが意味あり叙述ってことですか」
<br>「そうだ。よく覚えてるな。まあミステリ的な仕掛けに限らずとも、小説の主題に関わるなら意味あり叙述だとする人もいるらしい。そもそもこれらの概念自体が最近提唱されたもので、定義は人によってまちまちなんだと」
<br> むむむ、要するに驚かせるためだけか否か、ってことか。というか、彼女さんに会う貴重な時間を使ってこんなこと聞いてきてくれたのかよ。もっと別のこと話しなさいよ。
<br>「じゃ、そういうことだ。昔話の続きは、仕事終わってからな」
<br> 小島さんはそう言うと、あとは黙々と箱詰めをするだけだった。


 結局4人が揃ったのは夜8時半、布団を敷いて寝支度をする頃合だった。秋の夜は長いが、僕らは関係なく9時には寝る。他の皆も各々の布団に胡座をかいたのを見ると、僕は早速切り出した。
<blockquote>「[[[忘却]]された] (意味深な沈黙を挟んで) 豆腐屋ごまドレ」
<br>「それで小島さん、プリンを食べたのは誰なんです?」
~ 長距離ウォーキング往路にて、'''キュアラプラプ'''
<br>「なんだタケ、解らないのか? あれだけヒント出してやったってのに」
</blockquote>
<br> 小島さんは馬鹿にしたように笑うと、
<br>「ゴクさんとみっちゃんは解ったよな?」
<br>と水を向けた。
<br>「まあ、考える時間がたっぷりあったからなあ」
<br>「老体にはなかなかきつかったぞ」
<br> え? 解ってないの僕だけ?
<br>「じゃあ、タケのために続きを話すか」
<br> そう言うと小島さんはニヤニヤしながら話の最終章へ入った。


<font face="Tahoma">
「魯迅」とはかけ離れた音韻に一行は困惑したが、「故郷」の登場人物「豆腐屋小町」をもじった発言だという説明を受け、ようやく彼の意図を了解した。とはいえ、言葉が長すぎたのか豆腐屋小町がマイナーキャラだったせいか、「豆腐屋小町」に似た音韻が提示されることは一、二回しかなかった。しかし、豆腐屋ごまドレは大きなパラダイムシフトをもたらした。{{傍点|文章=魯迅じゃなくたっていい}}のだ。
==急==
 俺がプリンを諦めて源氏パイを食っていると、兄貴が2階の自室から降りてきた。そして兄貴は俺の顔を見るなり、笑い出したのさ。俺は少々ムッとして、
<br>「何が可笑しいのさ」
<br>と問うた。すると兄貴は、
<br>「アハハ、鼻の頭に絆創膏付いてるの見ると笑えちゃって」
<br>と言ってなおも笑い続けた。お前のせいで怪我したってのに、悪びれもせずよく笑えるもんだ。俺はカチンと来て、こう言い返してやった。
<br>「人のプリンを取って食べるような外道め!」
<br>「あ、あれお前のだったの? ごめんごめん、そんなに食いたかったのか。あとでアイスでも奢るから許せよ」
<br> まあそう惜しくもなかったからアイスの約束を取り付けられたのは思わぬ収穫で、小学生の俺はすぐに機嫌を直したよ。


 これで昔話は終わりだ。
ほどなくして、次段階への移行が起こった。「故郷」に登場し、豆腐屋小町と同様の名付けられ方をしている彼女が次の主役になることは、必然だったと言えるかもしれない。そう、'''纏足ババア'''である。
</font>


====
原初の纏足ババアは[[忘却]]されたが、魯迅ゲームの衣鉢を継ぎ、
「ちょっ、終わり?」
 
<br> 思わず大きな声が出てしまった。
 <big>「(そのババアを想起させる説明または演技)――(「てんそく」に近い音韻)ババア」</big>
<br>「どういうことですか。お兄さんはプリン嫌いなんでしょう? 説明してくださいよ」
 
<br>「まあまあ落ち着けって。出題者が解説するのもなんかヤだから、ゴクさんとみっちゃんに任せてもいいかい?」
と言う文化が瞬く間に形成された<ref>のちに[[利用者:芯]]がこの原則から逸脱した「バーバーババア」を生み出し、変革を引き起こすことになる。</ref>。魯迅ゲームが隆盛した理由もそうであるが、「纏足」に似た音韻から成る言葉は非常に多く、各人が途切れることなく矢継ぎ早に纏足ババアを言うことができたため、ゲームは大いに盛り上がった。
<br> 呼ばれた2人は顔を見合わせると、徐ろに拳を突き出した。
 
<br>「じゃんけんぽん!」
纏足ババアゲームは昼休憩地点の公園を再度出発するまで興じられた。以下は、そのとき生まれては消えた纏足ババアたちを含めた、纏足ババアの亜種どもである。
<br> 勝者は三津田さん。頭を抱えて悔しがる京極さんを尻目に、得意そうに話し始めた。
 
<br>「タケくん、今までのケンくんの話には叙述トリックが仕掛けられていたんだ」
{{大喜利|場所=この箇所}}
<br> そのくらいは見当がついている。そうでもないと、急にプリンの話になった理由がわからない。
この箇所は、当時言われた纏足ババア、および新たに思いついた纏足ババアを書く欄である。
<br>「じゃあそのトリックは何だったのか。結論から言うと、始めに出てきた兄とその後の兄は別人なんだよ」
*あっ、ババア、またババア、またババア。――連続ババア
<br> 兄が別人? 話の展開が急過ぎて理解が追いつかない。
*もしもし? あの、皿を盗む件なんだけど、車をよこしといてよ、うん、よろしく。――連絡ババア
<br>「厳密に言うと、『幼いケンくんに叙述トリックの解説をした兄』と『ケンくんに怪我をさせ、笑った兄』は別人ということだ。そしてプリンを好かないのは前者、プリンを食べたのは後者というわけだ。ケンくんは3兄弟だったんじゃないかな」
*ジジイ。――変則ババア
<br>「よく聞くと、前者は『兄さん』、後者は『兄貴』と呼び分けておったぞ」
 
<br>「じゃんけんで負けた者に解答権はないぞ。大人しくしとれ」
 
<br> 京極さんはすごすごと退き下がった。小島さんは僕らの様子をニコニコと見守っている。一方の僕には疑問が生まれた。
 
<br>「でも、小島さんは4人家族だと言ってませんでした?」
昼休憩が終わって復路が始まると、一行に[[利用者:Mapilaplap]]と[[利用者:せうゆ]]が加わった。そこでは纏足ババアゲームではなく[[畜生!]]が興じられ、纏足ババアゲームは(常習者が生み出した多くのゲームと同様に)一時のものとして消え去るかのように思われた。
 
===ある日、学校にて――ババアの再発明===
長距離ウォーキングからおよそ一ヶ月経った令和5年12月7日のことだった。常習者たちは[[多目的C教室|文芸部]]の活動として部誌「つぼみ第八号」の作成にあたっていた。そんな日の休み時間、[[利用者:Notorious]]がキュアラプラプとMapilaplapに対して次のようなことを言った。
 
<blockquote>「部員たちが『つぼみ』に書いてきた作品はみなファンタジーばかりだ。ファンタジーに頼らないノベルを書きたいものだ」
~ 自分も「[[Sisters:WikiWikiオンラインノベル#地図クライシス|地図クライシス]]」を書いてきたくせに、'''Notorious'''
</blockquote>
 
それを受けて、キュアラプラプはこのように答えた。
 
<blockquote>「じゃあミルクティー<ruby>婆<rt>ばあ</rt></ruby>を書いたら?<ref>ファンタの対義語がなんだったかは[[忘却]]されたが、後のキュアラプラプの「俺ならミルクティーと言う」という証言に基づきミルクティーとしている。</ref>」
~ ファンタジーの対概念を想定して、'''キュアラプラプ'''
</blockquote>
 
偶然に生み出された「ミルクティー婆」という概念に、一同はそれがどんなババアなのか考察した。この営みは、先日の纏足ババアゲームと結びつき、一同に「◯◯ババア」という名称とその特性を考えさせた。その過程で「スプリンクラーババア、小便を撒き散らす」とかいう化け物が誕生したりもした<ref>キュアラプラプ以外の人物の名誉のために付言すると、生んだのはキュアラプラプである。</ref>。
 
この例にも顕著だが、このとき、纏足ババアゲームからの変質が起こっていた。前者では
#(基本的には)「纏足」に似た音韻がババアの頭につく
#そのババアの特徴を言った後、そのババアの名前を言う
というルールがあったが、変質したババアは
#ババアの頭につくものは問わない
#そのババアの名前を言ってから、そのババアの特徴を言う
という特性を備えていた。
 
この変容が起こったこと以上に重要なのは、その場にいたMapilaplapは纏足ババアゲームを知らなかったという点だ。彼は長距離ウォーキングの往路はせうゆと一緒に歩いており、纏足ババアゲームに参加していなかった。それゆえに彼は、{{傍点|文章=変質したババアの営みをババアゲームの本流と勘違いしてしまった}}。これを正統だと誤解した彼は、そうとも知らずに魅せられ、次のような素晴らしいババアを生み出すに至る。
 
<blockquote>「若ババア、39歳<br>アメフトババア、山で人を殺す<br>I am not ババア、認めない」
~ 令和5年12月7日、'''Mapilaplap'''
</blockquote>
 
ここに至って、ババアは息を吹き返したのだ。
 
 しかし、顔を出した芽がすべて花を咲かせるわけではない。展望に満ちて書き始められたはずの記事は[[カテゴリ:裏切られたスタブ|数年放置され]]、[[テンプレート:姉妹2]]にはすっかり息を潜めたプロジェクトが並ぶ。ビブラスラップ、名探偵コナンゲーム、コドンゲームなど、生まれては泡沫のように消えたゲームも枚挙にいとまがない。そんな有象無象から脱して皆の記憶に残るものになるには、革命が必要だ。凡庸な存在から価値ある存在へと自らを押し上げる、根本的な変容。思えば、人は皆これを求めて生きてきた。成長するにつれて、自分がなんら特別な存在ではないと知り、世界がどれだけ優れた人間に溢れているか知る。歩けただけで手放しで賞賛された時代は過ぎ、周りからの要求は釣り上がっていき、できるだけ少ない報酬でできるだけ高いパフォーマンスをする優れた歯車となることを求められる。自分を偽り、自分を痛めつけ、それでも価値ある人間になろうともがく。ある者は他の人間に愛を求め、ある者は金を稼いで他者から認められようとし、ある者は作品を通して後世に残ろうとする。いつの日か革命が起こり、自分の望む自分になれることを夢想し、人々は目を閉じる。
 
 きっかけは、その日の放課後、ローソンでMapilaplapが変容したババアのありさまを芯やせうゆに伝えたことだった。
 
<blockquote>利用者:芯「'''お月様ババア、どこまでもついてくる'''」</blockquote>
 
 革命であった。
 
===第七回全九州高等学校総合文化祭大分大会――ババアゲーム===
お月様ババアや、せうゆの「空ババア、次の音はシ」によって、ババアは老婆を脱した。それまでのババアは年老いた人間の女性であることが[[暗黙の了解]]であった。いや、むしろそれを疑う者はいなかった。そしてその範疇においてゲームは興じられてきた。
 
しかし、お月様ババアの登場で状況は一変した。お月様ババアは、お月様の属性を保持したババアである。だから、およそババアにはできないだろう「どこまでもついてくる」ということが可能になるのである。今やババアは肉体を捨て去った概念に過ぎず、それによってババアにはすべてが可能になり、無限の面白さが生まれた。
 
そして、ババアゲームには全く新しい楽しみ方が生まれた。ババアに任意の事物の特性を付与することにより、面白さを演出することができる。ババアに何を仮託するか、そして仮託したモノのどんな特性を抽出するか。作り手にはそのセンスが問われ、生まれたさまざまな特徴を持つババアは聞く者に笑いを喚起した。
 
翌8日、Mapilaplap、Notorious、[[利用者:いせ|いせ]]の三名は、弊校文芸部の代表の一員として第七回全九州高等学校総合文化祭大分大会に参加した。その出発地である那覇空港から、生まれ変わったババアゲームをMapilaplapが普及を推し進め、主としてそれに魅せられたNotoriousとともにゲームに勤しんだ。空港やバスの中で数多のババアが生まれた。ババアゲームが面白すぎるあまり、この大会中NotoriousがMapilaplapといせ以外の生徒と交流を深めることはなかった。道中、富士山で琵琶湖を埋め立てることが決定されたり、城跡でいせの辞世の句が(Mapilaplapによって)詠まれたりもした。
 
以下は、そのとき為されたババア、および新たに思いついたババアを書く欄である。
 
{{大喜利|場所=この箇所}}
*若ババア、39歳
*アメフトババア、山で人を殺す
*I am not ババア、認めない
*お月様ババア、どこまでもついてくる
*空ババア、次の音はシ
 
 
その大会が終わるとともにババアゲームは急速に下火になり、まもなく終焉した。その数ヶ月後には[[お花摘みゲーム]]が一世を風靡し、幾度かの発展を伴って長く繁栄することになる。しかし、長らく常習者の文化の中心であった「ある言葉に似た言葉を言い続ける」形式のゲームは、纏足ババアゲーム以降ほとんど生まれず、会話の中から自然発生したゲームもなかなか見られなくなった<ref>これには受験暗黒期の到来が影響しているとする見方もある。</ref>
 
こうして、ババアゲームは一大文化の最後の花火として消え去った。
 
==脚注==
<references/>
{{vh|vh=100}}
――かのように思えた。
{{vh|vh=50}}
<span style="font-size:20px; color:red">――しかし、ババアの魂は'''彼女'''の中で生きていた!</span>
{{vh|vh=50}}
<span style="color:#cccccc;font-size:20px">沖縄でマフラー使わないだろ</span>
{{vh|vh=15}}
<p style="text-align:right ; color:#666666;font-size:30px">雄コキ神谷</p>
{{vh|vh=15}}
<p style="text-align:center ; color:#999999;font-size:20px">春が来て? 夏が来るかと? 思ったら?</p>
{{vh|vh=15}}
<p style="text-align:right ; font-size:30px">タンパク質にタンパク質はちょっと……</p>
{{vh|vh=15}}
<p style="text-align:left ; font-size:20px">沖縄県民は東京に行っちゃいけないって言うのか</p>
{{vh|vh=15}}
<p style="text-align:right ; color:#666666;font-size:30px">君のその頬に触れられないのなら<br>俺が救われる意味なんてあったのかな</p>
{{vh|vh=15}}
<p style="text-align:left ; font-size:40px">ロリの独学古武術道場</p>
{{vh|vh=100}}
<p style="text-align:center">'''「全て理解したわ!!!! 君は存在する!!!」'''</p>
{{vh|vh=50}}
<p style="text-align:center ; font-size:30px">常習者のミューズ / ファム・ファタール</p>
<p style="text-align:center ; font-size:100px">かきこ</p>
<p style="text-align:center ; font-size:30px">近日公開</p>
{{foot|ds=ははあけえむ|cat=ゲーム}}
2,140

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