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推敲
(下書き)
(推敲)
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<br> そう言って小島さんは話し始めた。
<br> そう言って小島さんは話し始めた。


==序==
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==序==
「ねえ亮二兄さん、叙述トリックって知ってる?」
「ねえ亮二兄さん、叙述トリックって知ってる?」
<br>「急になんだよケン。まあ知ってるけどさ」
<br>「急になんだよケン。まあ知ってるけどさ」
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<br> 小島さんは「しゃあねえなあ」と言いつつも、どこか楽しげに続きを話し始めた。
<br> 小島さんは「しゃあねえなあ」と言いつつも、どこか楽しげに続きを話し始めた。


==破==
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==破==
 その次の日の晩、夕飯の時間になって、母親に言われて俺は2階にいる兄貴を呼びに行った。兄貴の部屋をノックしようとしたところで、急にドアが開き、俺は鼻をしたたかにぶつけた。兄貴は笑いながら「すまんすまん」と謝ったが、こっちは痛いのなんの。不貞腐れたよ。鼻の頭に絆創膏を貼らないといけなかった。
 その次の日の晩、夕飯の時間になって、母親に言われて俺は2階にいる兄貴を呼びに行った。兄貴の部屋をノックしようとしたところで、急にドアが開き、俺は鼻をしたたかにぶつけた。兄貴は笑いながら「すまんすまん」と謝ったが、こっちは痛いのなんの。不貞腐れたよ。鼻の頭に絆創膏を貼らないといけなかった。
<br>  ともかく夕飯になった。そのときは俺と兄貴、親父とお袋の4人暮らしだった。はは、今と同じだな。お袋は専業主婦、親父は市議会議員だった。何かと心労の絶えない時期を通り抜けた親父は、陽気に「政治は~、政治を~」と理想を語っていた。だから母親が、
<br>  ともかく夕飯になった。そのときは俺と兄貴、親父とお袋の4人暮らしだった。はは、今と同じだな。お袋は専業主婦、親父は市議会議員だった。何かと心労の絶えない時期を通り抜けた親父は、陽気に「政治は~、政治を~」と理想を語っていた。だから母親が、
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<br> そう言うと小島さんはニヤニヤしながら話の最終章へ入った。
<br> そう言うと小島さんはニヤニヤしながら話の最終章へ入った。


==急==
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==急==
 俺がプリンを諦めて、ダイニングのお誕生席で源氏パイを食っていると、兄貴が2階の自室から降りてきた。そして兄貴は俺の顔を見るなり、笑い出したのさ。俺は少々ムッとして、
 俺がプリンを諦めて、ダイニングのお誕生席で源氏パイを食っていると、兄貴が2階の自室から降りてきた。そして兄貴は俺の顔を見るなり、笑い出したのさ。俺は少々ムッとして、
<br>「何が可笑しいのさ」
<br>「何が可笑しいのさ」
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==結==
==結==
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「ちょっ、終わり?」
「ちょっ、終わり?」
<br> 思わず大きな声が出てしまった。
<br> 思わず大きな声が出てしまった。
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<br>「でも小島さんは亮二お兄さんと話してたじゃないですか」
<br>「でも小島さんは亮二お兄さんと話してたじゃないですか」
<br>「ありゃ電話じゃろ」
<br>「ありゃ電話じゃろ」
<br> 京極さんはこともなげに言う。確かにその時代には携帯電話は既に普及し始めていただろうけれども。
<br> 京極さんはこともなげに言う。
<br>「電話って…ええ? 言われてみればあり得なくもないのか…?」
<br> 確かにその時代には携帯電話は普及し始めていただろうけれども。
<br>「それにしても2人とも、どうして気づいたんですか? 兄が2人いるって」
<br>「それにしても2人とも、どうして気づいたんですか? 兄が2人いるって」
<br> 得意気に口を開こうとした京極さんを制し、三津田さんが説明し始めた。
<br> 得意気に口を開こうとした京極さんを制し、三津田さんが説明し始めた。
<br>「ギターのトリックを思い出すんだ。あれは扉が内開きでないと成立しない。だが幼きケンくんが鼻に傷を負ったとき…」
<br>「ギターの密室トリックを思い出すんだ。あれは扉が内開きでないと成立しない。だが幼きケンくんが鼻に傷を負ったとき…」
<br>「ドアが外開きだった!」
<br>「ドアが外開きだった!」
<br> 僕は思わず叫んでしまった。小島さんは相変わらずニコニコしている。三津田さんは解説を続けた。
<br> 僕は思わず叫んでしまった。小島さんは相変わらずニコニコしている。三津田さんは解説を続けた。
<br>「どちらも兄の『自室』と言っている。同じ部屋に2つ扉があるというのも考えにくい。だからそれぞれの部屋の主は違うのではないかと思ったわけだ」
<br>「どちらも兄の『自室』と言っている。同じ部屋に2つ扉があるというのも考えにくい。だからそれぞれの部屋の主は違うのではないかと思ったわけだ。そうなれば必然的に上の兄は巣立った後だと分かる」
<br>「そして『無駄な思考』ちゅうのは、もうこの家にいない上の兄を考えの範疇に入れていたこと。そうすれば答えは歴然、消去法で犯人が解るっちゅう塩梅じゃ」
<br>「そして『無駄な思考』ちゅうのは、もうこの家にいない上の兄を考えの範疇に入れていたこと。そうすれば答えは歴然、消去法でプリンを食べた犯人が解るっちゅう塩梅じゃ」
<br>「さすがだな、みっちゃん、ゴクさん。まあタケ、叙述トリックってのはこんな風に、気をつければ見抜けるようになってるものなんだ」
<br> 僕は2人の注意深さと推理力に感嘆した。もちろん話を組み立て、叙述トリックをこれ以上ないくらい分かりやすく説明してくれた小島さんにも。どうやら僕はこの人たちを見くびっていたらしい。
<br> 僕は2人の注意深さと推理力に感嘆した。もちろん話を組み立て、叙述トリックをこれ以上ないくらい分かりやすく説明してくれた小島さんにも。どうやら僕はこの人たちを見くびっていたらしい。
<br>「皆さんすごいです! 感動しました!」
<br>「皆さんすごいです! 感動しました!」
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<br> いつの間にか時計の針は9時を指していた。電灯が消え、僕らは慌てて布団に潜り込んだ。足音が遠ざかってから、僕は
<br> いつの間にか時計の針は9時を指していた。電灯が消え、僕らは慌てて布団に潜り込んだ。足音が遠ざかってから、僕は
<br>「まったく、[[Sisters:WikiWikiオンラインニュース#法学部生、詐欺罪で逮捕|山田たけし]]って名前で呼んでほしいものだよ」
<br>「まったく、[[Sisters:WikiWikiオンラインニュース#法学部生、詐欺罪で逮捕|山田たけし]]って名前で呼んでほしいものだよ」
<br>と呟いた。
<br>と呟き、溜め息を吐いた。
<br> 府中刑務所の夜が更けていく。
<br> 府中刑務所の夜が更けていく。
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[[カテゴリ:文学]][[カテゴリ:自己言及]]{{DEFAULTSORT:じょじゅつとりっく}}
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