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(っしゃゴラ) |
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==音韻== | ==音韻== | ||
===音韻体系=== | ===音韻体系=== | ||
ピロリ語の音韻は、前述した通り日本語のそれと極めて酷似している。個々の音価に関しては細かな違いがあるものの、後述のように体系的な音韻の形式は全くもって同じと言っても[[過言ではない]]。 | |||
このような理由から、少なくとも音韻面に関しては、外語の台頭しはじめた頃にピロリ語が日本語のそれを取り入れたのだと広く考えられている。 | |||
これの示すところ[[はす]]なわち発生当初のピロリ語は音韻を持たなかったということであり、日本語との接触直後、ヒトが口腔と肺臓気流を巧みに組み合わせて為す調音と全く同じ周波数の振動を可能にしたということである。 | |||
その仕組みは完全に不可解なものであり、何者かに"教わった"ものであるという説も存在するものの、現在は一切の手がかりが掴めていない状況にある。 | |||
なお、日本語のそれとの差異としては、<span class="plainlinks">[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%93 撥音]</span>において、「ん」で一括りにされる日本語とは異なり、'''軟口蓋音'''と'''硬口蓋音'''が表記面でも区別される<ref>本項で用いているピロリ=アルファベット表記では、軟口蓋音の方を「'''n'''」、硬口蓋音の方を「'''gn'''」としている。</ref>ことや、<span class="plainlinks">[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8B%97%E9%9F%B3 拗音]</span><ref>ここでの拗音は、二文字で1モーラ(拍)を形成しているものを指す。(例えば、一般に拗音とされる「きゃ」などの他にも、拗音だとは広く認められていない「てゃ」なども拗音として扱う。)</ref>が存在しないことなどが挙げられる。詳細は後述する。 | |||
====モーラ==== | ====モーラ==== | ||
ピロリ語においては、日本語と同様に単音のまとまりの区切りとして音節よりもモーラ即ち拍が支配的である。 | |||
日本語のそれと同じ音素上の概念である'''撥音(ngndo)'''、'''促音(yipa'do)'''、'''長音(yipa^do)'''もそれぞれ独立して1拍に数えられ、さらに子音だけの音さえも、後述の例外を除いて全て1拍として数えられている。 | |||
また、'''清音(kfdo)'''や'''濁音(gvdo)'''、'''半濁音(pdo)'''といった概念も日本語のそれと共有している。しかし、後述のように清濁が独自に定義されたピロリ語特有の音韻も存在する。 | また、'''清音(kfdo)'''や'''濁音(gvdo)'''、'''半濁音(pdo)'''といった概念も日本語のそれと共有している。しかし、後述のように清濁が独自に定義されたピロリ語特有の音韻も存在する。 | ||
ピロリ語における<span class="plainlinks">[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%A9 モーラ]</span>の種類は、以下の表に示すように'''116''' | ピロリ語における<span class="plainlinks">[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%A9 モーラ]</span>の種類は、以下の表に示すように'''116'''ほど存在している。ここでは、ピロリ語の各字母に対応するピロリ=アルファベット表記と、その<span class="plainlinks">[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E9%9F%B3%E5%A3%B0%E8%A8%98%E5%8F%B7 国際音声記号]</span>における主な発音も列挙する。 | ||
なお、括弧内の表記は、普通は使われないものの、一部の単語に稀に使われることがあるものである。<ref>「'''jiyota'''(楽しむ)」の「'''ji」'''など。</ref> | なお、括弧内の表記は、普通は使われないものの、一部の単語に稀に使われることがあるものである。<ref>「'''jiyota'''(楽しむ)」の「'''ji」'''など。</ref> | ||
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====母音体系==== | ====母音体系==== | ||
ピロリ語の母音は、音声学上では | ピロリ語の母音は、音声学上では | ||
*[ä]、[i̠]、[ɯ̹]、[e̞]、[o̞] | */a/([ä]など)、/i/([i̠]など)、/u/([ɯ̹]など)、/e/([e̞]など)、/o/([o̞]など) | ||
の五つが存在する。 | の五つが存在する。 | ||
これらの母音音素は日本語のそれとほとんど同じであり、特に「あ」、「い」、「お」に至っては完全に同じ区切りにある。 | |||
しかし、「う」は日本語のものと少し違っており、口をすぼめて発音するのではなく、「い」の形に口を開けた状態で、「う」と発音するような形となっている。<ref>詳細には、「'''い'''」のような完全な張唇でありながら、「'''う'''」 のように後舌の狭母音であるということ。<span class="plainlinks">[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%9E%E5%86%86%E5%94%87%E5%BE%8C%E8%88%8C%E7%8B%AD%E6%AF%8D%E9%9F%B3 非円唇後舌狭母音]</span>も参照。</ref> | しかし、「う」は日本語のものと少し違っており、口をすぼめて発音するのではなく、「い」の形に口を開けた状態で、「う」と発音するような形となっている。<ref>詳細には、「'''い'''」のような完全な張唇でありながら、「'''う'''」 のように後舌の狭母音であるということ。<span class="plainlinks">[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%9E%E5%86%86%E5%94%87%E5%BE%8C%E8%88%8C%E7%8B%AD%E6%AF%8D%E9%9F%B3 非円唇後舌狭母音]</span>も参照。</ref> | ||
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====子音体系==== | ====子音体系==== | ||
ピロリ語の子音は、音声学上では | ピロリ語の子音は、音声学上では | ||
*[k]、[s]、[t]、[h]、[ʈ]、[f](<span class="plainlinks">[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%85%E9%9F%B3 清音]</span>) | */k/([k]など)、/s/([s]など)、/t/([t]など)、/h/([h]など)、[ʈ]、/f/([f]など)(<span class="plainlinks">[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%85%E9%9F%B3 清音]</span>) | ||
*[g]、[z]、[d]、[b]、[ɖ]、[v](<span class="plainlinks">[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BF%81%E9%9F%B3 濁音]</span>) | */g/([g]など)、/z/([z]など)、/d/([d]など)、/b/([b]など)、[ɖ]、/v/([v]など)(<span class="plainlinks">[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BF%81%E9%9F%B3 濁音]</span>) | ||
*[p](<span class="plainlinks">[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%8A%E6%BF%81%E9%9F%B3 半濁音]</span>) | */p/([p]など)(<span class="plainlinks">[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%8A%E6%BF%81%E9%9F%B3 半濁音]</span>) | ||
*[ŋ]、[ɲ]、[m]、[ɾ]、[ɽ] | */n/([ŋ]など)、/ɲ/([ɲ]など)、/m/([m]など)、[ɾ]、/r/([ɽ]など)(いずれにも該当せず) | ||
*[j]、[β̞](<span class="plainlinks">[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%8A%E6%AF%8D%E9%9F%B3 半子音]<ref name="hanseen" />) | */y/([j]など)、/w/([β̞]など)(<span class="plainlinks">[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%8A%E6%AF%8D%E9%9F%B3 半子音]<ref name="hanseen" />) | ||
の十九が存在する。 | の十九が存在する。 | ||
日本語にはない子音もいくつかあり、清音である ['''ʈ''']、['''f''']、そしてそれらとそれぞれ対応している濁音である ['''ɖ''']、['''v'''] がピロリ語には存在する。 | 日本語にはない子音もいくつかあり、清音である ['''ʈ''']、['''f''']、そしてそれらとそれぞれ対応している濁音である ['''ɖ''']、['''v'''] がピロリ語には存在する。 | ||
なお、['''ʈ, ɖ''']、そして['''ɾ'''] | なお、['''ʈ, ɖ''']、そして['''ɾ''']に関しては、それら自体が単独で音素として存在することはなく、かならず前者のいずれかに後者が接続する形で、それぞれ/ʈ/, /ɖ/となっている。 | ||
また、前述した通り、日本語では「ん」として一括りにまとめている撥音において、['''ŋ'''] と ['''ɲ'''] の二つに分けられている。 | また、前述した通り、日本語では「ん」として一括りにまとめている撥音において、['''ŋ'''] と ['''ɲ'''] の二つに分けられている。 | ||
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両者の違いは、硬口蓋音か軟口蓋音かで定義され、平易に述べるならば舌を上に置いて発音する方が硬口蓋音の ['''ŋ''']、舌を下に置いて発音する方が軟口蓋音の ['''ɲ'''] であるといえる。 | 両者の違いは、硬口蓋音か軟口蓋音かで定義され、平易に述べるならば舌を上に置いて発音する方が硬口蓋音の ['''ŋ''']、舌を下に置いて発音する方が軟口蓋音の ['''ɲ'''] であるといえる。 | ||
また、ピロリ語の子音体系の特徴として、条件異音がまったくもって存在しないことが挙げられる。<ref>無論、音韻を音素として切り分ける作業の中で、話者に弁別されない自由異音は存在している。</ref>例えば、日本語では、さ行の「さ、し、す、せ、そ」の音素は、それぞれ「/sa, si, su, se, so/」 であるのにも関わらず、 | |||
それらの音価としては、「[sä, ɕi̠, sɯ̹, se̞, so̞]」となり、「し」だけは ['''ɕi̠'''] と、「さ行」という一つのグループの中に例外が存在する。<ref>日本語の例では、他にも「'''ち'''([ti̠]でなく['''ʨi̠'''])」や「'''ふ'''([hu̜]でなく['''ɸu̜'''])」など、実に様々なものが挙げられる。</ref>しかし、ピロリ語には、このような例外的な音韻は存在しないのである。<ref name="sound">文字の読み方の詳細は[[ピロリ語#.E9.9F.B3.E9.9F.BB|音韻]]節を参照。</ref><ref> | それらの音価としては、「[sä, ɕi̠, sɯ̹, se̞, so̞]」となり、「し」だけは ['''ɕi̠'''] と、「さ行」という一つのグループの中に例外が存在する。<ref>日本語の例では、他にも「'''ち'''([ti̠]でなく['''ʨi̠'''])」や「'''ふ'''([hu̜]でなく['''ɸu̜'''])」など、実に様々なものが挙げられる。</ref>しかし、ピロリ語には、このような例外的な音韻は存在しないのである。<ref name="sound">文字の読み方の詳細は[[ピロリ語#.E9.9F.B3.E9.9F.BB|音韻]]節を参照。</ref><ref>なお、撥音の「ん」では、軟口蓋鼻音と硬口蓋鼻音が存在するが、それぞれ別の音、別の表記を持ち、話者の意識として音素上においても別のものとなっているただの「カテゴリ」であるため、これは異音とはいえない。</ref> | ||
さらに、先述した通りピロリ語には拗音が存在せず、ゆえにその対をなす直音という概念も存在しない。なお、この理由は現在でも解明されていない。<ref>一説には、ピロリ語においては一文字=1モーラという例外無いきまりが存在するため、そもそもピロリ語話者(ヘリコバクターピロリ)は二文字で1モーラを形成しているものを、二文字であるという理由から2モーラとしてしか認識できず、このため正しい拗音を認識できないともいわれている。これは、もともとは拗音が入っていた日本語の単外語や借用語が、その拗音を二文字(2モーラ)で表現されていることからも見て取れる。(例:'''siya'''rasou'''jhiyu''' / <ruby>沙羅双樹<rt>'''しゃ'''らそう'''じゅ'''</rt></ruby>)</ref><ref>もう一つの説として、ピロリ語には異音が存在せず、日本語のイ段にみられる<span class="plainlinks">[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A3%E8%93%8B%E5%8C%96 口蓋化]</span>した子音も存在しないため、それによってこれらの子音に母音を繋げて1モーラとした形で存在する、拗音の大部分を占める<span class="plainlinks">[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8B%97%E9%9F%B3#%E9%96%8B%E6%8B%97%E9%9F%B3 開拗音]</span>が存在しなくなり、拗音が消失するというものがある。</ref> | さらに、先述した通りピロリ語には拗音が存在せず、ゆえにその対をなす直音という概念も存在しない。なお、この理由は現在でも解明されていない。<ref>一説には、ピロリ語においては一文字=1モーラという例外無いきまりが存在するため、そもそもピロリ語話者(ヘリコバクターピロリ)は二文字で1モーラを形成しているものを、二文字であるという理由から2モーラとしてしか認識できず、このため正しい拗音を認識できないともいわれている。これは、もともとは拗音が入っていた日本語の単外語や借用語が、その拗音を二文字(2モーラ)で表現されていることからも見て取れる。(例:'''siya'''rasou'''jhiyu''' / <ruby>沙羅双樹<rt>'''しゃ'''らそう'''じゅ'''</rt></ruby>)</ref><ref>もう一つの説として、ピロリ語には異音が存在せず、日本語のイ段にみられる<span class="plainlinks">[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A3%E8%93%8B%E5%8C%96 口蓋化]</span>した子音も存在しないため、それによってこれらの子音に母音を繋げて1モーラとした形で存在する、拗音の大部分を占める<span class="plainlinks">[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8B%97%E9%9F%B3#%E9%96%8B%E6%8B%97%E9%9F%B3 開拗音]</span>が存在しなくなり、拗音が消失するというものがある。</ref> |
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