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<br>「ミスター・言伝とは、昨日仲良くなったから、気になっていたんダ。しかし、朝はおろか昼になっても、客室から出てこなイ。どこか別の部屋にいるのかと探していたんだが、結局は彼の客室にいるだろうと思って、さっきみんなと入ってみたというわけサ。」
<br>「ミスター・言伝とは、昨日仲良くなったから、気になっていたんダ。しかし、朝はおろか昼になっても、客室から出てこなイ。どこか別の部屋にいるのかと探していたんだが、結局は彼の客室にいるだろうと思って、さっきみんなと入ってみたというわけサ。」
<br>「ところで、ウェアーさんは、どちらの方なんです?」
<br>「ところで、ウェアーさんは、どちらの方なんです?」
<br>「タイ系アメリカ人だヨ。この飛行機で日本からアメリカに戻って、会社の経営に戻るんだ。」
<br>「タイ系アメリカ人だヨ。この飛行機で日本からアメリカに戻って、会社の経営に戻るんダ。」
<br>その会社とは、とある悪名高いマフィア組織である。ウェアーがその首領であることは、皆知っている。冷酷非情な凶悪犯として、繰り返し報道されているからだ。ただ、怖いので言い出せない。
<br>その会社とは、とある悪名高いマフィア組織である。ウェアーがその首領であることは、皆知っている。冷酷非情な凶悪犯として、繰り返し報道されているからだ。ただ、怖いので皆しらんぷりをしている。


「ウェアーさんから事情を聞いて、僕と鳥尾さんが手伝ったんだ。」
「ウェアーさんから事情を聞いて、僕と鳥尾さんが手伝ったんだ。」
<br>大流が沈痛な面持ちで語り始めた。
<br>大流が沈痛な面持ちで語り始めた。
<br>「三人で言伝さんの客室に入ったんだ。鍵は掛かっていなかった。ドアを開けてすぐに、背中を刺された彼が倒れているのを見つけたよ。そのときすでに、大丈夫じゃなかったね……。」
<br>「三人で言伝さんの客室に入ったんだ。鍵は掛かっていなかった。ドアを開けてすぐに、胸を刺された彼が倒れているのを見つけたよ。そのときすでに、大丈夫じゃなかったね……。」
<br>楽観主義者は、悲しげに俯いた。さすがの彼も、乗客が殺されたという事実に対して「大丈夫さ!」と言い放つことはできないようだ。一応デリカシーはあるようで、梅丹は少し安堵した。
<br>楽観主義者は、悲しげに俯いた。さすがの彼も、乗客が殺されたという事実に対して「大丈夫さ!」と言い放つことはできないようだ。一応デリカシーはあるようで、梅丹は少し安堵した。


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<br>「古文の教科書です。お貸しします。明日には返してくださいね」
<br>「古文の教科書です。お貸しします。明日には返してくださいね」
<br>「ああ、ありがとう」
<br>「ああ、ありがとう」
礼を言って受け取ると、彼女は踵を返して客室に戻っていった。
<br>礼を言って受け取ると、彼女は踵を返して廊下の向こうへと去っていった。


梅丹も自分の客室に戻った。窓の外はもうすっかり暗く、自分の顔が鏡のように映っているだけだった。目を逸らしてベッドに飛び込むと、手の中にある本を開いた。これでコゴとやらを学べるらしい。梅丹は、読書灯をつけ、教科書の斜め読みを始めた。
梅丹も自分の客室に戻った。窓の外はもうすっかり暗く、自分の顔が鏡のように映っているだけだった。目を逸らしてベッドに飛び込むと、手の中にある本を開いた。これでコゴとやらを学べるらしい。梅丹は、読書灯をつけ、教科書の斜め読みを始めた。
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