Sisters:WikiWikiオンラインノベル/遊んでいっておくれよ

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ねえ、ちょっと遊んでいっておくれよ。僕は今、誰かと遊びたくって仕方がないんだ。何して遊ぶのかって? それは今から決めるよ。
その前に、あなたはこの文章をスマホで読んでいるかい? もしかしてパソコンかな? ならスマホに変えておくれよ。僕はスマホの方が好きなんだ。あれの方がすごいからね。あの小ささと薄さであの多機能、そしてそこそこの値段で普及している。まさに人類の叡知だよ。お、変えてくれた? うん、ありがとう。
さて、何して遊ぼう? まったく、暇で暇でしょうがないんだ。いい遊びあるかなあ……そうだ、かくれんぼとかどう? うん、難しいよね。しりとりとか? うーん、これもダメか。もういいよ。いっそ振り切って哲学談義でもする?? フフフ、テーマを哲学にしなきゃいいよね。お話でもしようよ。うん、それがいい。うんうん。
さて、何を話そうか? うーん、まあ話しかけた方が話題を考えるのがマナーだよね。じゃあ、好きな映画の話でもしよう。ある? 僕はね、うーん迷うな。ベタなところだと「君の名は。」とかかな。もちろん真知子巻きじゃなくて新海誠の方ね。作画がいいし、ストーリーも他にない……僕が知る範囲では。もちろん専門家じゃないから、あるのかもしれないけど。入れ替わりって長編映画だとあんまり無くない? そうでもないのかな。まあでも「君の名は。」がすごいのはそれに更に一ひねり加えたところだよね。うーん、他にはねえ、ヒッチコックの「鳥」とかかな? 「鳥が人を襲うようになる」っていうごくごく単純なシナリオなのに、あそこまでの恐怖や不気味さを演出できるのはすごいよ。別に派手なアクションシーンがあるわけでもないのにね。さすがヒッチコックってところかな。「裏窓」とかも好きだよ。
うーん実は僕、映画はそんなに詳しくはないんだよね。話題を変えよっと。あ、そうだ! こないだドラマで見たんだけど、「九つの点の問題」って知ってるかい? 3×3の正方形状に並べた九つの点を、3回だけ折れる直線の一筆書きで全て通るにはどうしたらいいか、って問題なんだけどさ。いや〜すごいよねえ。もしあなたが初めて聞いたのなら、考えてみてくれよ。あ、言っておくけど、定義を曲解する系の問題じゃないよ? 九つの点の配置は、ビンゴのシートの穴のそれと一緒さ。純粋に、折れ線の引き方だけで解決できる。もしノーヒントで答えがわかったら、あなたはきっと天才だね。間違いない。まあわからなければ、早々に諦めて答えをググってごらんよ。目から鱗が落ちただろ? 最初に考えた人誰なんだろう? どうしてこんないい問題を思いつけたのかな? きっと、適当にいじってたら面白い経路を発見しちゃって、「おお、これなら折れる回数は3回でいいじゃん! お、他の方法だと4回必要だ! うっひょ問題にしたろ!」と思ったんだろうな。面白いよねえ、人がいかに枠に囚われているかがわかるよ。盲点をつくいい問題だよね。フフフ。
うーん話すことが尽きた。話題転換! 何がいいかなあ、ベタに天気の話とか? フフフ、今はねえ、うん、くもりだね、きっと。そっちはどう? 晴れ? 雨? ファフロツキーズなら最高だね! そうそう、天気と言えば、こんな話を聞いたことがあるよ。ある山村に集落からぽつんと離れた一軒の家があった。住人は気難しいお爺さんで、村人もあまり近寄らなかった。ある晴れた冬の日、遠い親戚がお爺さんの家を久しぶりに訪れたんだ。ところが、なんとお爺さんは軒先で平ぺったくなって死んでたんだ。そう、平ぺったく。まるで、巨人がお爺さんを踏みつけたみたいに、死んでたんだ。骨も内臓も筋肉も、スルメの干物みたいに平たくなってたんだ。一体、誰がこんなことしたんだと思う? フフフ、正解はね、天さ。天がお爺さんを平ぺったくしたんだ。より詳しく言うと、天が降らせた大量の雪が。その村で大雪が降って、その時お爺さんは雪に埋もれて死んでしまった。その後も降り続けた雪が、とんでもない重さとなってお爺さんの死体を押し潰したんだ。その後、雪は解けてなくなり、平ぺったいお爺さんだけが残ったってのが真相さ。自然って凶暴だよね。
いつだって自然災害は凶暴だ。簡単に3、4桁の命を奪っていく。一個人が頑張ったって、殺せる人間はせいぜい50人くらいだろうさ。うーん、でも工夫すればその限りじゃないかもなあ。例えば、放火殺人とか? 近代日本の一個人が為した殺人事件として最も死者が多かったのも、京アニ放火事件だよね。つい最近もどっかのクリニックに火をつけたヤツがいたし。火ってのがどれだけ危険かってのがわかるよ。えーと、そうそう放火なら一個人でもたくさん人を殺せるかもしれない。でも、場所によるよねえ。うまいこと火の回りがよくて逃げ場のないところにしないと。「うまい」なんて言っちゃ不謹慎か。まああくまで思考の範囲内だから、許してよ。一個人で最も効率よく多くの人命を奪える方法ってなんだろうね? やっぱハイジャックしてビルに突っ込むとかなのかなー。世界貿易センターのあれ、もっとビルの低いところに突っ込んどけば、逃げられた人はもっと減ったと思うんだよね。まあ飛んでるから難しいのかなあ。素人が狙ったビルに旅客機を当てられたことだけでもすごいか。現にペンタゴンは外してるし。……まあまあそう怒らないでよ。所詮子供の戯言さ。別に本当にやろうとしてるんじゃないし、仮にやろうと思ってもできないんだろうし。ただの思考実験さ。「一個人」を僕らみたいな平民に限定しなければ、政治家が起こす戦争が一番強いよねえ。核ミサイルのボタンでも押してごらんよ。きっと億単位の人を殺せるだろうね。
戦争と言えば、プーチンがウクライナに攻め込んだねえ。でもそれから数ヶ月経って、もうニュースにゃあ全然あがらない。「今はサワラが旬!」とかばっかりだよ。人間って自分に関係のないことを忘れる才に関しては一流だよねえ。今もウクライナじゃ砲弾が飛んできて市民が死んでるっていうのに、今や日本は「動物園のカワウソも暑さでうだってます、かわいいですね~」だよ。まあこんなこと言ってる僕も、ついさっきまで忘れてたわけだし、あんま大きいこと言えたものじゃないけどね。は~あ、嫌気が差すよ。
なんかコロナ情勢もそんな感じだよね。入ってきた時はあんなに怖がってたくせに、今じゃ「規制を緩和しろ!」の一点張りさ。感染者はものすごく増えてるのにさ。罹っても死なないって知っちゃったからねえ、みんな。もちろん死ぬ人はいるけど、ほんの一握り。そりゃあ遊びたくもなるよねえ。だって自分は死なないもん。そう信じてるもん。もうワクチンとかやめてさあ、一回全国民が罹りゃいいんじゃねえの? そしたら、もう、なんていうか、皆平等だし? やべっ、何言いたいのか忘れちゃったよ。
そうそう、コロナと言えば、デマが流行ったよねえ。笑われるかもしれないけどさ、うん、あの、コロナ禍初期、次亜塩素酸ナトリウムが効果的、っていうデマが流行ったじゃない? 僕、あれがデマとは微塵も思わなかったんだよね。だって、NHKのニュースとかでも次亜塩素酸ナトリウムの使い方について、時間割いて解説してたんだよ? まさかデマとはね……。次亜塩素酸ナトリウムを散布する機械を買いました! っていう学校あったけど、どうしたんだろう? PTA会費とか使われてんのかなあ? もう示しがつかないよねえ……ああ、考えるだけで胃が痛くなってきた。
でもコロナ関連のデマゴギーと言えば、何をおいても反ワクだよね。ジェンナーの時代にも「ワクチンを打ったら牛になる!」なんて叫ぶ人がいたっていうんだから、笑えるよね。む、この逸話がデマだったらどうしよ。反ワクを始めとする陰謀論のタチの悪いところって、否定する方法がないことだよね。科学やら政治やらで入り組んでる分野だから、一般人が手軽に否定することはできない。かといって論文とか示しても、「信憑性がない!」なんてのたまうんだからねえ。論文ほど信憑性を期待できるものはないだろうに。そのくせ、彼らはどっかの診療所の医師とかを担ぎ上げるんだから、もう手のつけようがないよ。だから、最善手は手をつけないこと、これに尽きると思うよ。
うーん、なんか暗い話題が続いちゃってるね。せっかく遊んでくれてるのに、あなたが嫌になっちゃ困るな。ねえ、頼むからもうしばらく付き合ってよ、お願いだからさ。
ありがとう。じゃあ、明るい話題を選ぶかあ。うーん、なかなか思い浮かばないなあ。難しい。笑い話でも話せればいいんだけど、あいにくレパートリーが無くってねえ……。そうだ、好きなギャグ漫画の話でもしようじゃないか! これなら元が面白いから、話し方を面白くするまでもないって寸法さ! 僕の好きなギャグ漫画はね、「斉木楠雄のΨ難」さ! 超能力というなんでもありなデウス・エクス・マキナを使って、個性的な面々や展開を実現し、これでもかとギャグを詰め込んでくる。主人公の台詞が全部テレパシーで、吹き出しを使う台詞がないってのも独特だよね。超能力ゆえ大人びて俯瞰している主人公の造形もいい。なのにコーヒーゼリーを食べるとフワフワになるのもほんと最高だよ。けど、僕が一番好きなキャラクターは、窪谷須かなあ。ヤンキーだけど情に篤くて、相対的には結構常識人なところとか好き。いざと言うときに頼りになるところも。総じて、「斉木楠雄のΨ難」で一番好きな話は、助っ人として野球部の応援に行く回かなあ。なんてったって、野球部主将のピッチングフォームがキモすぎる。あのフォームだけで一生笑ってられるよ。フフフ、本当に思い出し笑いが止まらなくなってきた。
そうそう、漫画ってさ、結構特殊な表現形式だと思わない? 絵と文が組み合わさっているなんて、他にないよ。視覚情報に頼っているけど、文字だけを使う本とかと違って、ほとんどが絵だからすぐに頭に入ってくる。本より漫画の方が子供に受け入れられやすいのは、この辺が影響してるんだと思うよ。独特な表現形式だけあって、独特な表現方法がたくさんできているよね。吹き出しで会話表現であることを明示するのもそうだし、あとは擬音だよね。視覚情報に頼る媒体だから、音は当然無い。それを補うために、擬音を書き込むという前代未聞の方法にうって出た。まごうかたなき大発明だよねこれは。特に、手塚治虫が生み出したっていう沈黙を表す擬音「シーン」。なんだよ沈黙を表す擬音って。音じゃねえじゃん。でもすごいよね。この「シーン」という言葉も、漫画の世界を超えて日本語として定着してるんだから、すごいよ。さすがは手塚治虫だねえ。あれ、本当に手塚治虫の発明だっけ。これもデマだったらどうしよう。
他の言語にあるかな、沈黙を表す擬音って。日本語だけじゃない? そもそも「シーン」が生まれたのって、「音声情報を伝えられない」かつ「音声を文章で表せない」という媒体だからこそだよね。テレビみたいな音声が伝わる媒体なら、音声がある時はあるように聞こえるんだから、沈黙は音声を無くせばいい。本とか文章を使う媒体なら、「沈黙が降りた。」みたいに文章を使って雄弁に沈黙を表現すればいい。でも、漫画では音声情報は伝えられない。代替案として生まれた擬音を、沈黙にすら適用させるという離れ業。いやーすごいねえ。そうは思わない?
フフ、ああ楽しい。ありがとね、僕の遊びに付き合ってくれて。もう少し、遊んでいてくれよ……。ところで、あなたはどうやってこのページに辿り着いたんだろうね。僕には、リンクを出鱈目にうってみるくらいしか思い浮かばないよ。いや、あなたなんて存在しないのかもね。ずっと、この文章は誰にも読まれることなく、インターネットの海を漂流し続けるんだ……。
漂流ってカッコいい。そこはかとない絶望感と孤独感。なんか、そそるね。まあ15才っていう僕の年齢ゆえかもしれないけど。そう言えば、僕はSF作家になりたかった時期があったんだよね。あっためてた構想があって、宇宙船が漂流するんだ。これは光のエネルギーを帆でキャッチする光子ヨットなんだ。で、なんやかんやあってヨットが宇宙空間を漂流するんだけど、その乗員は核爆弾のスイッチを持ってるんだ。押せば、近くの基地かなんかが吹っ飛ぶ。でも、爆発時の光で、ヨットを止めることができるんだ。乗員は押すのか、押さないのか。そんな物語だよ。子供じみた妄想がてら考えたやつだからね、細部は全然決まってない。けど、工夫次第で魅力的にできないかな、なんて思ってるよ。例えば、乗員。一人なのか、複数人なのか。一人なら、男なのか、女なのか。複数人なら、同乗者は誰なのか。どっちも宇宙飛行士でもいいし、あるいはロボットなんかでもいいかもね。核爆弾のスイッチってのも、工夫の余地があるね。無防備なスイッチを持ってるのか、めちゃくちゃ苦心してハッキングしたら起爆できるのか、それによって罪の意識も変わってくる。うん、あなたと遊び終わったら考えてみようかな。
書いてて思い出したけど、トロッコ問題っていうのがあるよね。もしかして、あなたも連想してた? あなたならどうする? 5人を見殺しにするか、1人を殺すか。僕ならね、1人を殺すと思うんだ。僕は量的功利主義者だから。でも、レールの先にいるのが5人の知らない人で、分岐の先にいるのが1人の友人なら、僕はレバーを動かさないと思う。僕はどうやら、自己中心的な量的功利主義者らしい。なら、5人のまあまあ親しい友達と、1人の超生きててほしい親友なら……? これは、迷っちゃうね。トロッコが来るまでに決断できず、結局レールの先の人を見殺しにしてしまいそうだ。あなたはどうかな?
ふと、こんな話を思いついたよ。主人公は暴走する汽車の分岐のレバーの前に立っている。線路の先には5人の友人が、分岐の先には1人の親友がそれぞれ立っている。主人公は迷う。人数的にはレバーを動かすべきだが、親友を殺すことはしたくない。しかし、友人達との思い出が頭をよぎる。だが、レバーを切り替えるということは己の手で親友を殺すということ、だが、友人達は恐怖に引き攣る顔でこちらを見てくる……。どうする? どうする? 主人公は、ギリギリのところで、レバーを動かすことを決断し、力いっぱいレバーを押し込むのさ。しかし、一瞬遅かった。主人公がレバーを動かしたとき、汽車の一両目は既に分岐点を走り抜けていた。汽車は脱線、横に転がりながら坂を勢いよく転がっていき、6人の友人もろとも爆発してしまった……。実はもう少し先があるんだけど、あまり長々と喋るのは良くないからね。このくらいにしておこう。もし万が一機会があれば、書いてみるよ。その時は、そうだね、こんな風にネットのサイトに書くのがいい。でも、こんな辺境じゃないメジャーなサイトに、ね。この辺鄙なページに辿り着いたあなたなら、きっと簡単に見つけられるさ、フフフ。
うん、やっぱり哲学談義は飽きないね。答えのない問いだからこそ、いつまでだって考えていられる。それに、自分と向き合えるからね。でも、そろそろ喉の渇きが無視できなくなってきたよ。残り時間の底が見えてきちゃったみたいだ。何があったのか、さすがに書いておこうかな。
僕は、誘拐されたんだ。車に押し込められて、気づけばこの部屋にいた。開口部は、鍵の掛かった丈夫なドアしかない。壁はコンクリートの打ちっ放し。高い天井には薄い蛍光灯。そして、一台のノートパソコン。ロックは掛かっていなくて、でもアクセスできるのはこのページだけだった。何か、簡単にデザインできるサイト。他には、何もできない。だから、書いてみることにした。水も食料もなく、もう3日は経ったと思う。時計が無いから体感だけどね。一体、これが何なのか、何もわからない。誰か死にゆく僕の様子を見て楽しんでいる人がいるのか。あるいはこれは、極限状況で人がどんな行動をするのかを観測する実験なのかもしれない。ひょっとしたら中の僕なんて見られてもいないのかも。でも、何もわからないまま、何もされないまま3日は経ったと思う。
そして今、とっても遊びたくなったんだよ。子供のさが、かな。ずっと放置されて、暇になったんだ。かと言って、僕を閉じ込めたやつらは僕のコンタクトを感知できているのかすらわからないし、何よりやつらを楽しませるのは腹が立つ。ああもう、「腹」なんて書くからお腹が空いてきたよ、まったく。それで、このサイトをひょっとしたら見てくれているかもしれないあなたと、遊ぼうと思ったんだ。たくさんお話して、楽しんでくれたかな? 僕は楽しかったよ! 本当にありがとう。

でもね、おしゃべりが「遊び」じゃないんだ。言ったろ? いい遊びはないかな、って。で、思いついたんだ。僕の好きな遊び。一番最初にあげたろ? 難しいけど、きっと無理じゃない。そう、かくれんぼさ。おお、斜体なんてできるんだね! フフフ、なんか楽しくなってきたよ。渇きも飢えもピークなのに、頭が全然弱ってくれない。そう、かくれんぼなんだよ! あなたが、鬼。僕が、隠れる人。隠れる人ってなんか名前無いのかな? まあいいや、フフフ。ずっと前、「もういいよ」って言ったろ? 僕はずっと隠れてきたのさ! さあ、見つけておくれよ。ヒントはね、九つの点の問題さ。囚われた枠の外に、僕はいるよ。僕のおそらく最期の遊びに付き合ってくれて、ありがとね!
見つかっちゃった! フフフ