「Sisters:WikiWikiオンラインノベル/顔面蒼白」の版間の差分

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<br> だから、計画を立てた。俺の計画はシンプル、“居直り強盗の仕業に見せかける”というものだ。森が寝ている時、居間の窓を割って泥棒が侵入してくる。しかし目を覚ました森と鉢合わせ。慌てて刺してしまい、怖くなって何も盗まず逃走、というシナリオだ。
<br> だから、計画を立てた。俺の計画はシンプル、“居直り強盗の仕業に見せかける”というものだ。森が寝ている時、居間の窓を割って泥棒が侵入してくる。しかし目を覚ました森と鉢合わせ。慌てて刺してしまい、怖くなって何も盗まず逃走、というシナリオだ。
<br> 警察も忙しい。一度強盗の仕業に見えれば、そう結論づけてくれるだろう。
<br> 警察も忙しい。一度強盗の仕業に見えれば、そう結論づけてくれるだろう。
<br> 俺はまず、返り血を浴びていないか確認した。全身を軽く見ていく。どうやら、右の手袋以外は無事のようだ。左手で紙袋からビニール袋を取り出し、両手袋を脱いでそれに入れる。口をきつく閉じ、ビニール袋をまた紙袋に戻した。入れ替わりに軍手を出し、それを両手にはめる。
<br> 俺はまず、返り血を浴びていないか確認した。全身を軽く見ていく。どうやら、右の手袋以外は無事のようだ。左手で紙袋からビニール袋を取り出し、両手袋を外してそれに入れる。口をきつく閉じ、ビニール袋をまた紙袋に戻した。入れ替わりに軍手を出し、それを両手にはめる。
<br> 次は玄関だ。紙袋を持って廊下に出る。勿論、血溜まりを踏むようなヘマはしない。そのまま玄関まで行き、サムターンを捻って施錠した。そしてスリッパを脱ぎ、靴箱に戻しておく。最後に、土間の自分の靴を紙袋に入れた。靴下の足跡は残りにくいから、多少歩き回っても問題ない。
<br> 次は玄関だ。紙袋を持って廊下に出る。勿論、血溜まりを踏むようなヘマはしない。そのまま玄関まで行き、サムターンを捻ってドアを施錠した。そしてスリッパを脱ぎ、靴箱に戻しておく。最後に、土間の自分の靴を紙袋に入れた。靴下の足跡は残りにくいから、多少歩き回っても問題ない。
<br> 俺はまた居間へと引き返した。途中、廊下の照明を消しておくのも忘れない。居間に入ると、血痕を避けて、壁のインターホンをチェックした。どうやら、履歴は端から残らない機種のようだ。幸運。監視カメラの類もない事はリサーチ済み。どうやら天は俺に味方しているようだ。
<br> 俺はまた居間へと引き返した。途中、廊下の照明を消しておくのも忘れない。居間に入ると、血痕を避けて、壁のインターホンをチェックした。どうやら、履歴は端から残らない機種のようだ。幸運。監視カメラの類もない事はリサーチ済み。どうやら天は俺に味方しているようだ。


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<br> ──{{傍点|文章=寝室に続くドア}}!
<br> ──{{傍点|文章=寝室に続くドア}}!
<br> 今、それは{{傍点|文章=閉まっている}}。しかし、侵入者と鉢合わせした状況で、{{傍点|文章=森が丁寧にドアを閉めるわけがない}}。森が寝室に蜻蛉返りせずに玄関を目指すのには、2つの理由がある。1つは寝室のドアに鍵がないこと、もう1つは寝室の窓に格子が嵌まっていることだ。要するに、寝室に戻っても、立て籠ることも逃げることもできないのだ。
<br> 今、それは{{傍点|文章=閉まっている}}。しかし、侵入者と鉢合わせした状況で、{{傍点|文章=森が丁寧にドアを閉めるわけがない}}。森が寝室に蜻蛉返りせずに玄関を目指すのには、2つの理由がある。1つは寝室のドアに鍵がないこと、もう1つは寝室の窓に格子が嵌まっていることだ。要するに、寝室に戻っても、立て籠ることも逃げることもできないのだ。
<br> 俺は机を左から回り、寝室へのドアを慎重に開けた。ついでに中も覗いてみる。恐らく点けっ放しの常夜灯、整えられたシングルベッド、本が1冊乗ったサイドボード。不都合なものは無さそうだ。
<br> 俺は机を左から回り、寝室へのドアを慎重に開けた。ついでに中も覗いてみる。恐らく点けっ放しの常夜灯、整えられたシングルベッド、本が1冊乗ったサイドボード。不都合なものは無さそうだ。
<br> 血痕を踏まないよう注意しながら、また窓際へと戻った。今更ながら、背中を冷や汗がつたった。危なかった。もし気づかなかったら、どうなっていただろう。
<br> 血痕を踏まないよう注意しながら、また窓際へと戻った。今更ながら、背中を冷や汗がつたった。危なかった。もし気づかなかったら、どうなっていただろう。


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<br> 俺の、勝ちだ。
<br> 俺の、勝ちだ。
<br> カーテンを押しよけ、開けっ放しの窓から外に出た。泥棒改め強盗はひどく動揺している。窓は閉めなくていいだろう。夜の冷気が心地よい。
<br> カーテンを押しよけ、開けっ放しの窓から外に出た。泥棒改め強盗はひどく動揺している。窓は閉めなくていいだろう。夜の冷気が心地よい。
<br> 紙袋を拾い上げると、俺は柵をまた乗り越えた。毛髪なんかは残っているだろうが、俺は昨日この家を訪れたのだ。何の問題もない。
<br> 紙袋を拾い上げると、俺は柵をまた乗り越えた。毛髪なんかは残っているだろうが、俺は一昨日この家を訪れたのだ。何の問題もない。
<br> 電気は点いたままで窓は全開、さらに窓は割られてもいるのだ。事件の発覚は早いだろう。だが、俺に辿り着かれさえしなければ、一向に構わない。
<br> 電気は点いたままで窓は全開、さらに窓は割られてもいるのだ。事件の発覚は早いだろう。だが、俺に辿り着かれさえしなければ、一向に構わない。
<br> 靴を履き替え、隣の自宅に戻った。鍵を開けて中に入る。微細な血液が付いているかもしれないから、着ている物を纏めて紙袋に突っ込んだ。そして、紙袋ごと埃だらけの屋根裏に放り込む。これで、家宅捜索でもされない限り、大丈夫だ。これらはほとぼりが冷めた数年後に、少しずつ捨てよう。
<br> 靴を履き替え、隣の自宅に戻った。鍵を開けて中に入る。微細な血液が付いているかもしれないから、着ている物を纏めて紙袋に突っ込んだ。そして、紙袋ごと埃だらけの屋根裏に放り込む。これで、家宅捜索でもされない限り、大丈夫だ。これらはほとぼりが冷めた数年後に、少しずつ捨てよう。
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 俺が目を覚ますと、もう昼の11時だった。カーテンの隙間から隣家を見ると、玄関先にパトカーが停まり、何人もの警官が蠢いているのが見えた。想定内。自分でも驚くほど落ち着いている。
 俺が目を覚ますと、もう昼の11時だった。カーテンの隙間から隣家を見ると、玄関先にパトカーが停まり、何人もの警官が蠢いているのが見えた。想定内。自分でも驚くほど落ち着いている。
<br> ブランチを手早く済ませ、身支度をした時、呼び鈴が鳴った。人が殺されたのだ。周辺に聞き込みに来るのは当たり前。ボロさえ出さなきゃいい。
<br> ブランチを手早く済ませ、身支度をした時、呼び鈴が鳴った。人が殺されたのだ。周辺に聞き込みに来るのは当たり前。ボロさえ出さなきゃいい。
<br> 玄関を開けると、やはり警官が立っていた。小太りの初老の男と、ひょろりと細長い若い男。どちらも警察手帳を見せて名乗った。小太りな方が警部補、細長い方が巡査らしい。
<br> 玄関を開けると、やはり警官が立っていた。小太りの初老の男と、ひょろりと細長い若い男。どちらも警察手帳を見せて名乗った。階級は、小太りな方が警部補、細長い方が巡査らしい。
<br>「いやー、突然すみません。川上功大さんで間違いないですか?」
<br>「いやー、突然すみません。川上功大さんで間違いないですか?」
<br>「はい。あの、警察の方がどういった御用で?」
<br>「はい。あの、警察の方がどういった御用で?」
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