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(ギギイーーッッ)
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「ほうほう、さすがは小鳥くん、くだものをとるのがじょうずだね。」
「ほうほう、さすがは小鳥くん、くだものをとるのがじょうずだね。」


 小鳥には森のともだちがたくさんいます。いつも元気なりすさんに、食いしんぼうなうさぎさん、とっても頼りになるふくろうさん! 小鳥はみんなにとってきたものをすこしずつ分けてあげました。みんながおいしそうにたべているのをみて、小鳥はちょっぴりほこらしくなりました。
 小鳥には森のともだちがたくさんいます。いつも元気なリスさんに、食いしんぼうなウサギさん、とっても頼りになるハトさん! 小鳥はみんなにとってきたものをすこしずつ分けてあげました。みんながおいしそうにたべているのをみて、小鳥はちょっぴりほこらしくなりました。


「えっへん、ぼくがえらんできたくだものはおいしいでしょう?」
「えっへん、ぼくがえらんできたくだものはおいしいでしょう?」
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 小鳥は、すごくしあわせでした。
 小鳥は、すごくしあわせでした。
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 じぶんが食べる分を木のみきのほら穴につめこんだあと、小鳥は日がくれるまであたりをさんぽすることにしました。この森をぬけたすぐそばには、にんげんたちのくらす街があります。そこにはにぎやかな歌やようきな音楽がいつもなりひびいていて、おいしい食べものもそこら中にあふれています。小鳥はこの街を、とーっても気にいっていました。
 じぶんが食べる分を木のみきのほら穴につめこんだあと、小鳥は日がくれるまであたりをさんぽすることにしました。この森をぬけたすぐそばには、人間たちのくらす街があります。そこにはにぎやかな歌やようきな音楽がいつもなりひびいていて、おいしい食べものもそこら中にあふれています。小鳥はこの街を、とーっても気にいっていました。


 はなうたまじりに街に入ろうとした小鳥は、ひんやりとした風といっしょにどこからかながれてきたものに心をうばわれました。甘くてきれいで、しっとりしたいいにおいです! そのおいしそうなかおりにつられ、しばらくそのままさまよって、小鳥はついににおいのもとまでたどりつきました。そこは、街のはずれにあるケーキやさんでした。
 はなうたまじりに街に入ろうとした小鳥は、ひんやりとした風といっしょにどこからかながれてきたものに心をうばわれました。甘くてきれいで、しっとりしたいいにおいです! そのおいしそうなかおりにつられ、しばらくそのままさまよって、小鳥はついににおいのもとまでたどりつきました。そこは、街のはずれにあるケーキやさんでした。
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 いちごがひそひそ声で聞いてきます。
 いちごがひそひそ声で聞いてきます。


「ううん、いまはじめてあったとこ……うわあ!」
「ううん、今はじめてあったとこ……うわあ!」


 気づいたら、いつのまにかカラスは小鳥のすぐとなりにきていて、えがおでこういいました。
 気づいたら、いつのまにかカラスは小鳥のすぐとなりにきていて、えがおでこういいました。
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 すんでのところで小鳥はこれをかわしましたが、カラスはひきさがりません。なにがなんだかわからないまま、とりあえず小鳥はここからにげることにしました。
 すんでのところで小鳥はこれをかわしましたが、カラスはひきさがりません。なにがなんだかわからないまま、とりあえず小鳥はここからにげることにしました。


「いちごさん! いまはあぶないから、明日また会おう!」
「いちごさん! 今はあぶないから、明日また会おう!」


「ま、まって!」
「ま、まって!」
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 ちく、たく、ちく、たく。
 ちく、たく、ちく、たく。


「ぼくはきみのことがすきなんだ。」
「ぼくはきみのことが好きなんだ。」


「あ、え。」
「あ、え。」
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 ちく、たく、ちく、たく。
 ちく、たく、ちく、たく。


「うーん……でもさ、そんなかおしたって、ほんとうに心のそこからわからないなんてことはないだろ?」
「うーん……でもさ、そんな顔したって、ほんとうに心のそこからわからないなんてことはないだろ?」




167行目: 167行目:
 カラスのことばには耳もかさず、小鳥はあのケーキやさんに向かってぜんそくりょくでかけていきます。お日さまはついに、とおくに見える山の向こうにしずんでしまいました。小鳥の中でいやなそうぞうがふくらんでいきます。ちかづいてきたケーキやさんのえんとつからは、もうけむりはのぼっていません。……いちごさん、おねがい、ぶじでいて!
 カラスのことばには耳もかさず、小鳥はあのケーキやさんに向かってぜんそくりょくでかけていきます。お日さまはついに、とおくに見える山の向こうにしずんでしまいました。小鳥の中でいやなそうぞうがふくらんでいきます。ちかづいてきたケーキやさんのえんとつからは、もうけむりはのぼっていません。……いちごさん、おねがい、ぶじでいて!


 小鳥はなりふりかまわず、いまさっきみちでひろった小石をまどガラスになげつけました。おおきな音を立てて、とうめいなガラスへんがくずれおちます。おみせのだれかのひめいもよそに、小鳥はわれたまどのすきまから中におし入って、目線はたなのはじっこの、ショートケーキのてっぺんの――
 小鳥はなりふりかまわず、今さっきみちでひろった小石をまどガラスになげつけました。おおきな音を立てて、とうめいなガラスへんがくずれおちます。おみせのだれかのひめいもよそに、小鳥はわれたまどのすきまから中におし入って、目線はたなのはじっこの、ショートケーキのてっぺんの――


「いちごさん!」
「いちごさん!」
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「ほうほう、けっこう大きいね。これは……イチゴ、とかいったかな?」
「ほうほう、けっこう大きいね。これは……イチゴ、とかいったかな?」


 小鳥は、しばらくしていちごといっしょに森へかえってきました。りすさん、うさぎさん、ふくろうさんの顔をみてすこしだけ元気になれたけれど、明日のことをかんがえると気もちはしずむ一方です。
 小鳥は、しばらくしていちごといっしょに森へかえってきました。リスさん、ウサギさん、ハトさんの顔をみてすこしだけ元気になれたけれど、明日のことをかんがえると気もちはしずむ一方です。


「こ、こら、いちごさんは食べものじゃない! ぼくのともだちだよ!」
「こ、こら、いちごさんは食べものじゃない! ぼくのともだちだよ!」
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「あはは、ごめんごめん!」
「あはは、ごめんごめん!」


 いちごさんと森のみんなは、すっかり打ちとけたみたいです。よかったよかった。
 いちごは森のみんなとすっかり打ちとけたみたいで、自分と小鳥の出会いや、ケーキやさんからつれ出してもらったことを、とってもたのしそうにおしゃべりしています。よかったよかった。


 気づけば空はすっかりまっくらになっていて、小鳥はもうねむることにしました。いちごといっしょに、木のみきのほら穴の中にねころがります。
 ――気づけば空はすっかりまっくらになっていて、ともだちもみんな自分のおうちにかえっていったので、小鳥ももうねむることにしました。いちごといっしょに、木のみきのほら穴の中にねころがります。


「小鳥さんは、もうねむっちゃうの?」
「小鳥さんは、もうねむっちゃうの?」
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 小鳥は、にげるようにしてねむりにおちました。
 小鳥は、にげるようにしてねむりにおちました。
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 お日さまもまだのぼらない朝はやく、ふかいゆめからさめた小鳥は、ひんやりとした風といっしょにどこからかながれてきたものに顔をしかめました。甘くてすっぱくて、鼻をつくひどいにおいです。
 お日さまもまだのぼらない朝はやく、ふかいゆめからさめた小鳥は、ゆううつに息つく間もなく、ひどいにおいに顔をしかめました。ひんやりとした風といっしょにどこからかながれてきた、甘くてすっぱくて、鼻をつくひどいにおいです。あまりのつよいにおいに、小鳥はおもわずせきこんでしまいました。


 ……でも、あたりをさがすまでもなく、小鳥はそのにおいのもとに気づいてしまいました。
 ……でも、あたりをさがすまでもなく、小鳥はそのにおいのもとに気づいてしまいました。
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「あ、あれ?」
「あ、あれ?」


 それは小鳥のすぐとなりにありました。しなびた形がどんよりと黒ずんだ赤にいろどられ、ぽつぽつと粉をふくそれは――
 それは今いる木のみきのほら穴の中に、小鳥のすぐそばにありました。しなびた形がどんよりと黒ずんだ赤にいろどられ、ぽつぽつと気もちわるい粉をふくそれは――


「い、いちご……さん?」
「い、いちご……さん?」
「ねえ、小鳥さん、わ、わたし、いま……どうなってるの……!」
 いちごは、今にも消えいりそうな、しかし荒くつきはなすようなこえで、そうつぶやきました。
「ど、どうして、こんな……。」
「わかんないよ! わたし……ちがう、こんな、こんなの……!」
 吐きそうになるのをこらえながら、小鳥はいちごを大切にかかえて、ハトさんの住んでいる木にとんでいきました。ものしりで頼れるハトさんなら、こんなことになってしまったいちごでも、元どおりにできるかもしれないとおもったからです。いちごをつかむ小鳥の爪は、ぶよぶよとしたいちごの不気味な手ざわりに、すこしふるえてしまっていました。
「小鳥くんか、こんな朝早くにいったい……うっ、ひどいにおいだ!」
 いちごは黙りこんで、かなしそうにうつむきます。しかし小鳥は、なぐさめようにもいちごと目をあわせることができませんでした。今のいちごのすがたをみていると、気もちわるくなってきて、吐きそうになってしまうからです。そして小鳥は、そんな自分にもまた吐き気をもよおしました。
「……ハ、ハトさん! あの、いちごさんが、こんなことになってしまって……な、治してあげられる……かな?」
「いちごさん……!? これは……そうだ、たしかいちごさんはケーキやさんからにげてきたんだよね?」
「うん、あとすこしですてられてしまうところを、ぎりぎりで助けだせたんだ。」
「そうか……じゃあきっと『賞味期限切れ』……いや、生ものだから『消費期限切れ』か。そのせいでこうなっているんだろう。」
「しょーみきげん? しょーひきげん? ど、どういうこと?」
「『賞味期限』は『おいしく食べられる期限』、『消費期限』は『安全に食べられる期限』のことだよ。つまり、はっきり言ってしまえば……いちごさんはもう腐ってしまっているんだ。」
「……! た、食べるとか腐るとか言って、だからいちごさんは食べものじゃなくてぼくのともだちで……!」
「たしかに、小鳥くんにとっては友達かもしれない。けど、ケーキやさんに来る人間にとっては、いちごさんはただのイチゴなんだ。ただの食べものなんだよ。」
「そ、そんな、そんなこと……!」
「ごめんね。ざんねんだけど、いちごさんは治せない。」
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