「利用者:キュアラプラプ/サンドボックス/戊」の版間の差分

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 カラスのことばには耳もかさず、小鳥はあのケーキやさんに向かってぜんそくりょくでかけていきます。お日さまはついに、とおくに見える山の向こうにしずんでしまいました。小鳥の中でいやなそうぞうがふくらんでいきます。ちかづいてきたケーキやさんのえんとつからは、もうけむりはのぼっていません。……いちごさん、おねがい、ぶじでいて!
 カラスのことばには耳もかさず、小鳥はあのケーキやさんに向かってぜんそくりょくでかけていきます。お日さまはついに、とおくに見える山の向こうにしずんでしまいました。小鳥の中でいやなそうぞうがふくらんでいきます。ちかづいてきたケーキやさんのえんとつからは、もうけむりはのぼっていません。……いちごさん、おねがい、ぶじでいて!


 小鳥はなりふりかまわず、今さっきみちでひろった小石をまどガラスになげつけました。おおきな音を立てて、とうめいなガラスへんがくずれおちます。おみせのだれかのひめいもよそに、小鳥はわれたまどのすきまから中におし入って、目線はたなのはじっこの、ショートケーキのてっぺんの――
 小鳥はなりふりかまわず、今さっきみちでひろった小石をまどガラスになげつけました。大きな音を立てて、とうめいなガラスへんがくずれおちます。おみせのだれかのひめいもよそに、小鳥はわれたまどのすきまから中におし入って、目線はたなのはじっこの、ショートケーキのてっぺんの――


「いちごさん!」
「いちごさん!」
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「ごめんね。ざんねんだけど、いちごさんは治らない。……そろそろ全体がカビにやられてしまうだろう。そうしたら、もう……」
「ごめんね。ざんねんだけど、いちごさんは治らない。……そろそろ全体がカビにやられてしまうだろう。そうしたら、もう……」


 小鳥はじぶんのなかでどくどくという音がおおきくなっていくのをかんじました。いちごさんは治らない? じゃあ、あのやくそくは――
 小鳥はじぶんのなかでどくどくという音が大きくなっていくのをかんじました。いちごさんは治らない? じゃあ、あのやくそくは――


「小鳥さん、わたし、もう、いいの。……もう、いいから。」
「小鳥さん、わたし、もう、いいの。……もう、いいから。」
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「小鳥さんになら、いいの。食べられてもいい。だって……わたし、小鳥さんのことが好きだから。」
「小鳥さんになら、いいの。食べられてもいい。だって……わたし、小鳥さんのことが好きだから。」


 さらさらと風がふきました。おきっぱなしになっていたあのお気にいりの甘あい実たちがゆれて、歌をうたっているようにみえました。
 さらさらと風がふきました。おきっぱなしになっていたあのお気にいりの甘あい実たちがゆれて、ごきげんに歌をうたっているようにみえました。大きくひびくどくどくという音に耳をすませば、その歌声はじぶんのなかからもきこえてきました。小鳥は、それが気のせいだとは思いませんでした。


 小鳥は、いちごを食べることにしました。
 小鳥は、いちごを食べることにしました。
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「ぼくも……ぼくもいちごさんのことが、その……好き……、だから。」
「ぼくも……ぼくもいちごさんのことが、その……好き……、だから。」


「そっかあ……ふふ、よかった。うれしい。」
「……そっかあ。……ふふ、よかった。うれしい。」


 あのひどいにおいは、やっぱりどんどんつよくなってきています。だけど小鳥には、ふしぎと気もちわるくはありませんでした。
 あのひどいにおいは、やっぱりどんどんつよくなってきています。だけど小鳥にはもう、ふしぎと気もちわるくはありませんでした。


「……小鳥さん、ごめんね。やくそくをやぶってしまって。」
「……小鳥さん、ごめんね。やくそくをやぶってしまって。」
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「雲の上……つれていく、って言ってくれたのに。わたし、もう……。」
「雲の上……つれていく、って言ってくれたのに。わたし、もう……。」


「あ、あの……ぼくも、ごめんなさい。……あのとき、うそをついた。」
「あ、あの……ぼくも! ……ぼくも、ごめんなさい。……あのとき、うそをついた。」


「うそ……って?」
「うそ……って?」


「ほんとうはね、雲の上にいったことなんてないんだ。……こわいから。」
「ほ、ほんとうはね、……雲の上にいったことなんてないんだ! ……こわいから。」


「……ふふ、こどもみたいなりゆう!」
「……ふふ、こどもみたいなりゆう!」
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「……ゆるしてくれるの?」
「……ゆるしてくれるの?」


「だって、小鳥さんがわたしをたすけてくれたのはほんとうだもの。」
「だって、小鳥さんがわたしをたすけてくれたのはほんとうだもの!」


「……ありがとう。」
「……ありがとう。」
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