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2066年12月3日午前9時25分00秒、歴史に名を残す大事件が起こった。後世に「アイリス事件」と呼ばれる大惨禍である。
2066年12月3日午前9時25分00秒、歴史に名を残す大事件が起こった。後世に「アイリスの英雄」と語り継がれるこの出来事の全貌を書き記した文書は、これが最後になるだろう。


==                        アイリス核実験 ==
==                      ///アイリス核実験///                           ==
     '''''通知:この文書MnP-13485は、アメリカ合衆国憲法第163条にのっとり2099年にアメリカ国民限定として公開されました。 2199.3.1アメリカ合衆国情報局'''''


アメリカ南西部のカリフォルニア州、ユタ州、ネバダ州、アリゾナ州にまたがる砂漠、モハベ砂漠。2066年12月3日午前8時50分。モハベ空港から実験機X34-1番機「アイリス」が飛び立った。


現場は快晴、風向きは西向き3ノットで微弱、異常はなし。全て順調だった。X34は完全無人の航空機で、プログラムと緊急用の無線操縦で機能する。アイリスのペイロードにはプルトニウム原爆「スパロー」が収まっている。状態は安定。無線による起爆信号で作動する。燃料はできるだけ少なく積んでいる。多く積む必要がないからだ。アイリスは、上空6000mでスパローを起爆し、消滅する。スパローの原子雲は、下にどのような形を形成するのかを観察する。これが今回の実験の概要だ。そして35分が経ち、予定時刻になる。全システム異常なし。アイリスが所定の位置につく。
カリフォルニア、ユタ、ネバダ、アリゾナ州内モハベ砂漠。2066年12月3日午前8時50分、モハベ空港から実験機X34-1番機「アイリス」が飛び立つ。


・ここからは、スパロー起爆士ノイ・フォーマンと観測者エドウィン・ローバードの通信を記す。
=== 現場での調査記録 ===
現場の天候:快晴(雲面積⅒)


2066.12.3 am.9.25.00 ノイ・フォーマン
風向き:東向き4ノットで微弱
 
am.9.15.00時点での状態:全て順調
 
=== 実験機X34-1 ===
無人特殊核実験機X34-1
 
愛称:アイリス
 
操縦方法:プログラム、緊急用の無線操縦
 
ペイロード内容物:起爆信号作動型プルトニウム原爆「スパロー」
 
備考:燃料少   
 
   9時25分00秒にスパロー起動、並びに自爆予定
 
=== 実験の概要 ===
上空6000mでスパロー起爆、アイリス消滅。原子雲が下にどのような形を形成するのかを観察
 
=== 無線通信記録 ===
    <<スパロー起爆士ノイ・フォーマンと観測者エドウィン・ローバードによる無線通信記録>>
 
2066.12.3 am.9.25.15 ノイ・フォーマン


       <スパローの起爆スイッチを押した。観測次第、応答してくれ。>
       <スパローの起爆スイッチを押した。観測次第、応答してくれ。>
            
            
      am.9.25.32 エドウィン・ローバード
      am.9.25.32 エドウィン・ローバード
       <こちら観測者エドウィン・ローバード。スパローの爆発は観測されていない。もう一度起爆スイッチを押してくれ。>
      am.9.25.39 ノイ・フォーマン
       <爆発が観測されていないなんて言うのはあり得ない。俺はさっき押した。今ももう一回押してる。起爆スイッチを押したままで話してるんだぞ。>
      am.9.25.55 エドウィン・ローバード
       <スパローは爆発していない。実験は失敗だ。だが、、、もしあれがずっと起爆せずに落ちていったら、どこに落ちる?>
      am.9.26.33 ノイ・フォーマン
       <遅くなってすまない。だが、そんなこと話してる場合じゃない。今アイリスは北の方角に向かってる。アイリスの残り燃料と航続距離、それに風から算出すると、アイリスは 、、、あ
        あ、これは震え上がるほど恐ろしい真実なんだが、そう、多分、ラスベガスに落ちるだろう。>
      am.9.26.50 エドウィン・ローバード
       <ラスベガスだと!?じゃあ、ラスベガスの64万人は、消え去るってことか?どうするんだ!アイリスをどうにかしろってか。ハハ、冗談にも程がある。相手は高度6000mに居て、
        ロールスロイスのジェットを積んでる。どうやって止めろって言うんだ?ああ?>
      am.9.27.29 ノイ・フォーマン
       <まぁまぁ、一旦落ち着け。こんな状況だが、今はあれを止める事を考えるんだ。そうだな。例えば、、、あ、あれとかはどうだ?アイリスの2番機だ。確か名前は、何だったかな。そう!
       ポラリス!ポラリス。あれを飛ばして、アイリスに追いつく。それでアイリスを落とすんだ。幸い、ポラリスを操縦するための遠隔操縦席はシミュレーターセンターに残ってある。
       あそこから遠隔操縦できるハズだろう。ポラリスも役目御免になって可哀想だ。一仕事させてあげよう。
      am.9.28.15 エドウィン・ローバード
       <この期に及んで未だ冗談を言ってるあんたの度胸には感心するが、それで本当に落とせるのか?武装も積んでないんだし、スパローに引火させでもしたらただじゃ済まないんだぞ。>
      am.9.28.30 ノイ・フォーマン
       <エド、君は本当に頭が固い。落とすと言っても、まさか武装で落とすわけがないだろう。アイリスの翼の下にポラリスの翼を入れて揚力を無くすんだ。だが、問題はある。
        今、丁度シミュレーターセンターに着いたんだが、僕はシミュレーターがとんでもなく苦手なんだ。誰か変わってもらえる人もいない。まあ、砂漠だから当然か。
        インターネットで回線をつないでシミュレーターをやってもらおうと思ってるんだが、無理だろうな。結局、俺がやるしかないってことか。こんなのに命を任されたラスベガスは
        可哀想だな。よし。準備が終わった。万事OKだ。君も、できる限りの支援を頼む。>
      am.9.30.01 エドウィン・ローバード
       <なあ、お前の長話を聞いている間にこっちもやっていたんだが、実は俺は結構な有名人なんだ。まあ、知ってるだろうけど。ほら、YOUTUBEじゃ引っ張りだこさ。
        だから今、ライブ配信を開始した。もう200人は居る。これで助言を聞くことは出来ないか。君の画面を即座に伝えてくれ。僕たちが指示を出す。>
      am.
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