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(せうゆノベル兼ダブル) |
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<br> 言葉とは裏腹にあまりショックを受けているように見えないのは、大きな体と高い泳力、そして肉食動物という地位からうまれる余裕ゆえだろうか。 | <br> 言葉とは裏腹にあまりショックを受けているように見えないのは、大きな体と高い泳力、そして肉食動物という地位からうまれる余裕ゆえだろうか。 | ||
<br> 顔見知りだというカメ老に伝えてくると言って、アシ香さんは去っていった。その間際、アシ香さんはぼくらにこう言った。 | <br> 顔見知りだというカメ老に伝えてくると言って、アシ香さんは去っていった。その間際、アシ香さんはぼくらにこう言った。 | ||
<br> | <br>「こいつは死んで間もないわね。こいつを食ったやつは、まだ近くにいるかもしれないわ。気をつけなよ」 | ||
<br> ぼくらはあわてて辺りを見まわし、次に顔を見合わせ、そしておうちへと全速力で泳いでいった。入れ代わりに、カメ老たちがこっちに泳いでくるところだった。 | <br> ぼくらはあわてて辺りを見まわし、次に顔を見合わせ、そしておうちへと全速力で泳いでいった。入れ代わりに、カメ老たちがこっちに泳いでくるところだった。 | ||
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<br> それからぼくは、見たことを素直に話した。周りに誰もいなかったこと、スズメダイっちに呼ばれて少しだけ振り返ったこと、それなのにマンボウが殺されたこと……。周りのみんながぼくの話に耳を傾けていた。 | <br> それからぼくは、見たことを素直に話した。周りに誰もいなかったこと、スズメダイっちに呼ばれて少しだけ振り返ったこと、それなのにマンボウが殺されたこと……。周りのみんながぼくの話に耳を傾けていた。 | ||
<br> ぼくが全てを話し終えると、カメ老はうなった。 | <br> ぼくが全てを話し終えると、カメ老はうなった。 | ||
<br> | <br>「たった五秒であの距離を往復するのは難しい。サンゴ礁から現場に行ってまた帰ってくるまで、バショウカジキでも五秒では厳しいだろうな。砂に潜るというのも、砂の中に住むような薄っぺらい魚には、あれだけの傷を負わせることはできない。それなのになぜ……」 | ||
<br> これでは、マンボウを殺せた魚が誰もいないということになってしまう。みんなもそう考えたようで、口ぐちに問いただしてくる。 | <br> これでは、マンボウを殺せた魚が誰もいないということになってしまう。みんなもそう考えたようで、口ぐちに問いただしてくる。 | ||
<br>「おいベラ助、今の話は噓じゃねえんだな?」 | <br>「おいベラ助、今の話は噓じゃねえんだな?」 | ||
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<br>「噓だ……水の中で息ができないなんて、そんなわけない! ならどうやって生きてるんだよ!」 | <br>「噓だ……水の中で息ができないなんて、そんなわけない! ならどうやって生きてるんだよ!」 | ||
<br>「海面の上で息を吸うのさ。それまでずっと息を止めてるのさ。俺たち{{傍点|文章=シャチは十五分くらいしか潜れない}}から、犯行は不可能なんだよ。ちなみに、お前がくる直前に息継ぎしてきたから、今はもうしばらく大丈夫だぜ」 | <br>「海面の上で息を吸うのさ。それまでずっと息を止めてるのさ。俺たち{{傍点|文章=シャチは十五分くらいしか潜れない}}から、犯行は不可能なんだよ。ちなみに、お前がくる直前に息継ぎしてきたから、今はもうしばらく大丈夫だぜ」 | ||
<br> | <br> 確かにカメ老やアシ香さんが海の外で息をしているのを見たことはある。しかし、魚にしか見えないシャーくんも同じだなんて、そんなことがあるのか? だが、シャーくんは噓をついているようには見えなかった。知らないのはぼくくらいだったのか? 大海を知らないぼくだけが。ぼくの心を見透かしたようにシャーくんは嘲る。 | ||
<br>「お前の推理なんて、大海を知らない雑魚のたわごとに過ぎないんだよ」 | <br>「お前の推理なんて、大海を知らない雑魚のたわごとに過ぎないんだよ」 | ||
<br> ありえない。マンボウを殺せたのは、あんな殺し方ができるのは、シャーくんだけだ。 | <br> ありえない。マンボウを殺せたのは、あんな殺し方ができるのは、シャーくんだけだ。 |
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