「利用者:キュアラプラプ/サンドボックス/丙」の版間の差分

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 思想者が持っている手札は、先程と変わらない七枚のカードに、拾ったJKを加えた計八枚で、黒の4が二枚、赤のJが二枚、赤の10が二枚、赤の9が一枚とJKが一枚である。彼は8段目まで階段を下りた後、エスカレーターによって1段上昇させられたから、今は7段目にいることになる。さて、この状況で、彼はどの「数字カード」を使うべきだろうか? 不幸にも、赤のカードの数字はすべて7より大きいから、階段を上りきってしまう。赤のカードは使えない。なら、黒の4か? 否。黒の4はもう二枚とも使ってしまっているし、三枚目があると嘘をつくにしても、JKで手札を見たクリームパンダには通用しない。ここで「駄段々」を行われたが最後、思想者はクリームパンダと階段上の位置を入れ替えられ、エスカレーターの崖際に立たされるだろう。そこからは、先述したのと全く同じ展開になるだろう。この状況を動かす手段は、事実、存在していなかった。思想者はここで嘘の宣言をするしかなく、しかし嘘の宣言をすることは敗北を意味している。このジレンマは、エスカレーターが動かなかった場合に想定された「膠着状態」におけるそれと確かに似ていたが、しかし思想者のジレンマはもっとあくどかった――ゴールをしたら敗北してしまうのではなく、何をしても敗北してしまうのだ。
 思想者が持っている手札は、先程と変わらない七枚のカードに、拾ったJKを加えた計八枚で、黒の4が二枚、赤のJが二枚、赤の10が二枚、赤の9が一枚とJKが一枚である。彼は8段目まで階段を下りた後、エスカレーターによって1段上昇させられたから、今は7段目にいることになる。さて、この状況で、彼はどの「数字カード」を使うべきだろうか? 不幸にも、赤のカードの数字はすべて7より大きいから、階段を上りきってしまう。赤のカードは使えない。なら、黒の4か? 否。黒の4はもう二枚とも使ってしまっているし、三枚目があると嘘をつくにしても、JKで手札を見たクリームパンダには通用しない。ここで「駄段々」を行われたが最後、思想者はクリームパンダと階段上の位置を入れ替えられ、エスカレーターの崖際に立たされるだろう。そこからは、先述したのと全く同じ展開になるだろう。この状況を動かす手段は、事実、存在していなかった。思想者はここで嘘の宣言をするしかなく、しかし嘘の宣言をすることは敗北を意味している。このジレンマは、エスカレーターが動かなかった場合に想定された「膠着状態」におけるそれと確かに似ていたが、しかし思想者のジレンマはもっとあくどかった――ゴールをしたら敗北してしまうのではなく、何をしても敗北してしまうのだ。


 「膠着状態」ならば、前後に小さな数字を宣言し続けることで、ゴールはできずともターンを回すことはできた。しかし思想者は、何もできない。ターンを回すことすらできないのだ。――そして、それが実際のところ「ターンを渡さないための度を越した遅延行為」などではないとどれだけ主張しようとも、敗北を避けるためにターンを回さないことは、結果として、明確にルールによって禁止されているその行為と見た目上全く変わらなかった。これが、クリームパンダの「打開策」だった。{{傍点|文章=何をしても敗北するし、何もしなくても敗北する}}。この思想者は、取りうる行動のすべてが敗北に直結する袋小路に陥れられてしまったのだ。
 「膠着状態」ならば、前後に小さな数字を宣言し続けることで、ゴールはできずともターンを回すことはできた。しかし思想者は、何もできない。ターンを回すことすらできないのだ。――そして、それが実際のところ「ターンを渡さないための度を越した遅延行為」などではないとどれだけ主張しようとも、敗北を避けるためにターンを回さないことは、結果として、明確にルールによって禁止されているその行為と見た目上全く変わらなかった。これこそが、クリームパンダの「打開策」だった。{{傍点|文章=何をしても敗北するし、何もしなくても敗北する}}。この思想者は、取りうる行動のすべてが敗北に直結する袋小路に陥れられてしまったのだ。
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