「利用者:キュアラプラプ/サンドボックス/丙」の版間の差分

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「さて、今は俺のターンだよな? じゃあ、赤のAだ」
「さて、今は俺のターンだよな? じゃあ、赤のAだ」


 ここで、観客の中にもちらほらと、クリームパンダの「打開策」を理解したものが現れ始めた。彼はエスカレーターを使うことで、両者に同等に与えられたジレンマによる膠着状態を解消し、代わりに思想者一人にジレンマを押し付けた状況をつくることに成功したのだ。――このクリームパンダの「赤のA」宣言は、言うまでもなく嘘だと分かる。手札を一枚も持っていないのだから、当然だ。しかし、思想者はこれに対して「駄段々」を行うことができない。なぜならば、この状況で「駄段々」を成功させてしまえば、{{傍点|文章=思想者はクリームパンダと階段上の位置を交換しなければならない}}からだ。それはつまり、階段を上りきる一歩手前に移動してしまうことを意味する。もしそうなった場合、何が起こるかは明白だ――クリームパンダは再びエスカレーターを起動させ、強制的に思想者を階段の終端まで運んでしまうだろう。こうして、思想者の敗北によって、クリームパンダは勝利を手にするのだ。
 ここで、観客の中にもちらほらと、クリームパンダの「打開策」を理解したものが現れ始めた。彼はエスカレーターを使うことで、両者に同等に与えられたジレンマによる膠着状態を解消し、代わりに思想者一人にジレンマを押し付ける状況をつくることに成功したのだ。――このクリームパンダの「赤のA」宣言は、いうまでもなく嘘だと分かる。手札を一枚も持っていないのだから、当然だ。しかし、思想者はこれに対して「駄段々」を行うことができない。なぜならば、この状況で「駄段々」を成功させてしまえば、{{傍点|文章=思想者はクリームパンダと階段上の位置を交換しなければならない}}からだ。それはつまり、階段を上りきる一歩手前に移動してしまうことを意味する。そうなった場合、何が起こるかは明白だ――クリームパンダは再びエスカレーターを起動させ、強制的に思想者を階段の終端まで運んでしまうだろう。こうして、思想者の敗北によって、クリームパンダは勝利を手にするのだ。


「『駄段々』はないな? じゃあ、1段上に上がるぞ」
「『駄段々』はないな? じゃあ、1段上に上がるぞ」
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 こう言って、クリームパンダはエスカレーターの最上段に上がった。そのステップは、見えている部分がもう半分もなく、エスカレーターの銀の終端に呑み込まれる寸前で停止していた。
 こう言って、クリームパンダはエスカレーターの最上段に上がった。そのステップは、見えている部分がもう半分もなく、エスカレーターの銀の終端に呑み込まれる寸前で停止していた。


「さて、思想者、お前のターンだ。じっくり考えるがいい」
「さて、思想者、お前のターンだ。ビッヒッヒ、じっくり考えるがいい」


 思想者が持っている手札は、先程と変わらない七枚のカードに、拾ったJKを加えた計八枚で、黒の4が二枚、赤のJが二枚、赤の10が二枚、赤の9が一枚とJKが一枚である。彼は8段目まで階段を下りた後、エスカレーターによって1段上昇させられたから、今は7段目にいることになる。さて、この状況で、彼はどのカードを使うべきだろうか? 不幸にも、赤のカードの数字はすべて7より大きいから、階段を上りきってしまう。赤のカードは使えない。なら、黒の4か? 否。黒の4はもう二枚とも使ってしまっているし、三枚目があると嘘をつくにしても、JKで手札を見たクリームパンダには通用しない。ここで「駄段々」を行われたが最後、思想者はクリームパンダと階段上の位置を入れ替えられ、エスカレーターの崖際に立たされるだろう。この状況を動かす手段は、事実、存在していなかった。思想者はここで嘘の宣言をするしかなく、しかし嘘の宣言をすることは敗北を意味している。このジレンマは、エスカレーターが動かなかった場合に想定された『膠着状態』におけるそれとまったく変わらないものだったが、ただ一つ違うのはやはり、このジレンマを持つものが思想者ただ一人であるということだった。一人で勝手に膠着状態になるのは、膠着ではなくただの遅延行為だ。そして、「ターンを渡さないためだけの度を越した遅延行為」は、明確にルールによって禁止されていた。その遅延行為が実際のところ「ターンを渡さないため」
 思想者が持っている手札は、先程と変わらない七枚のカードに、拾ったJKを加えた計八枚で、黒の4が二枚、赤のJが二枚、赤の10が二枚、赤の9が一枚とJKが一枚である。彼は8段目まで階段を下りた後、エスカレーターによって1段上昇させられたから、今は7段目にいることになる。さて、この状況で、彼はどの「数字カード」を使うべきだろうか? 不幸にも、赤のカードの数字はすべて7より大きいから、階段を上りきってしまう。赤のカードは使えない。なら、黒の4か? 否。黒の4はもう二枚とも使ってしまっているし、三枚目があると嘘をつくにしても、JKで手札を見たクリームパンダには通用しない。ここで「駄段々」を行われたが最後、思想者はクリームパンダと階段上の位置を入れ替えられ、エスカレーターの崖際に立たされるだろう。そこからは、先述したのと全く同じ展開になるだろう。この状況を動かす手段は、事実、存在していなかった。思想者はここで嘘の宣言をするしかなく、しかし嘘の宣言をすることは敗北を意味している。このジレンマは、エスカレーターが動かなかった場合に想定された「膠着状態」におけるそれと確かに似ていたが、しかし思想者のジレンマはもっとあくどかった――ゴールをしたら敗北してしまうのではなく、何をしても敗北してしまうのだ。
 
 「膠着状態」ならば、前後に小さな数字を宣言し続けることで、ゴールはできずともターンを回すことはできた。しかし思想者は、何もできない。ターンを回すことすらできないのだ。――そして、それが実際のところ「ターンを渡さないための度を越した遅延行為」などではないとどれだけ主張しようとも、敗北を避けるためにターンを回さないことは、結果として、明確にルールによって禁止されているその行為と見た目上全く変わらなかった。これが、クリームパンダの「打開策」だった。{{傍点|文章=何をしても敗北するし、何もしなくても敗北する}}。この思想者は、取りうる行動のすべてが敗北に直結する袋小路に陥れられてしまったのだ。
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