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 そう言うと、クリームパンダは懐からカードをいくつか取り出し、動きを実演してみせた。ハートの3なら3段上昇、クラブのAなら1段下降。次に彼が観客に見せびらかしたのは――
 そう言うと、クリームパンダは懐からカードをいくつか取り出し、動きを実演してみせた。ハートの3なら3段上昇、クラブのAなら1段下降。次に彼が観客に見せびらかしたのは――


「よおし、見ろ、これぞキングだ! 『数字カード』以外のカード、つまり<ruby>Q<rt>クイーン</rt></ruby>、<ruby>K<rt>キング</rt></ruby>、そして<ruby>JK<rt>ジョーカー</rt></ruby>は、駄段々では『特殊カード』と呼ばれる。こいつらの特徴の一つは、『数字カード』とは違って、自分のターンじゃなくてもお構いなしに発動できることだ。ただし、使うときにはカードの絵を明確に相手に見せた上で、階段の遠くにぶん投げないといけない。面白いだろ? ずいぶん妙だが、大事なルールだ。覚えておいてくれ。ちなみに、何らかの理由でぶん投げられたカードは、その次のターンからはプレイヤーの誰でも勝手に拾っていい。だから、『数字カード』と違って、『特殊カード』の効果はある意味再利用することができるんだ。で、こっからが本題だ。『特殊カード』は色が黒とか赤とかに関係なく、その名の通り強力な特殊効果を持つ。まずは……QとK。女王と王だ。こいつをぶん投げるってのが何を意味してるか、頭脳明晰な市民諸君にはもうお分かりだろう――{{傍点|文章=革命だ}}!」
「よおし、見ろ、これぞキングだ! 『数字カード』以外のカード、つまり<ruby>Q<rt>クイーン</rt></ruby>、<ruby>K<rt>キング</rt></ruby>、そして<ruby>JK<rt>ジョーカー</rt></ruby>は、駄段々では『特殊カード』と呼ばれる。こいつらの特徴の一つは、『数字カード』とは違って、使うときにはカードの絵を明確に相手に見せた上で、それを階段のどこかに投げ捨てないといけないことだ。面白いだろ? ずいぶん妙だが、大事なルールだ。覚えておいてくれ。ちなみに、何らかの理由で捨てられたカードは、その次のターンからはプレイヤーの誰でも勝手に拾っていい。だから、『数字カード』と違って、『特殊カード』の効果はある意味再利用することができるんだ。で、こっからが本題だ。『特殊カード』は色が黒とか赤とかに関係なく、その名の通り強力な特殊効果を持つ。まずは……QとK。女王と王だ。こいつをぶん投げるってのが何を意味してるか、頭脳明晰な市民諸君にはもうお分かりだろう――{{傍点|文章=革命だ}}!」


 瞬間、まるで火がついたように、観客席からブーイングの大合唱が飛ぶ。もちろんクリームパンダはこんな{{傍点|文章=不適切}}なことを賛美しているわけではないし、観客も彼のことを本心から批判しているわけではない。これはクリームパンダお馴染みのブラックジョークであり、いわばお約束なのだ。彼は何かカードゲームを持ってくるとき、いつも「革命」の要素が入ったものを選んできては、露悪的にそれを見せつける。――これが暗に「思想監督」の一端を担っているのは、言うまでもないことだ。
 瞬間、まるで火がついたように、観客席からブーイングの大合唱が飛ぶ。もちろんクリームパンダはこんな{{傍点|文章=不適切}}なことを賛美しているわけではないし、観客も彼のことを本心から批判しているわけではない。これはクリームパンダお馴染みのブラックジョークであり、いわばお約束なのだ。彼は何かカードゲームを持ってくるとき、いつも「革命」の要素が入ったものを選んできては、露悪的にそれを見せつける。――これが暗に「思想監督」の一端を担っているのは、言うまでもないことだ。


「ビャッハッハ、すまんすまん、でもルールブックに書いてあるんだから仕方ない。さて、『革命』が発生したとき、起こることはシンプルだが、とても厄介だ。{{傍点|文章=勝利条件と敗北条件が入れ替わる}}のさ! 一度『革命』が起きた後は、今まで通り下に進んでいくことはできない。もし階段を下りきってしまったら、それは勝利じゃなく、敗北になってしまうからな。勝利するためには、今度は上を目指さないといけないんだ。もちろん、『革命』は何度でも起こせるから、さらに『革命』をし返すことで条件を元に戻すこともできる。いよいよ本格的にややこしくなってきたかな。
「ビャッハッハ、すまんすまん、でもルールブックに書いてあるんだから仕方ない。さて、『革命』が発生したとき、起こることはシンプルだが、とても厄介だ。{{傍点|文章=勝利条件と敗北条件が入れ替わる}}のさ! 一度『革命』が起きた後は、今まで通り下に進んでいくことはできない。もし階段を下りきってしまったら、それは勝利じゃなく、敗北になってしまうからな。勝利するためには、今度は上を目指さないといけないんだ。もちろん、『革命』は何度でも起こせるから、さらに『革命』をし返すことで条件を元に戻すこともできる。いよいよ本格的にややこしくなってきたかな。ただし、『革命』を発生させたとき、強制的にターンは終了する。だから、『数字カード』による移動と『革命』は、一ターンの間に両方行うことができないんだ。これは、例えば最初の一ターン目でちょっと階段を下りた後、二ターン目に『革命』を使ったうえで赤のカードで上昇してゲーム終了、というような面白くないゲームを禁止するために定められている。


 で、今度はJKの説明だ。まあ、さすがは道化と言ったところか、こいつの効果は奇妙でな。このカードを使うと、{{傍点|文章=自分の手札を相手に公開しなければならない}}んだ。これを代償に相手にデカい損害を与えられるとかでもなく、ただただ自分の手札を相手に見せるというだけのカード。意味が分からないだろう? まったくだ。だが、『駄段々』にはこいつを活かすルールが一つある。それは、『相手のプレイヤーが自分がいる段の真下の段にいるとき、相手に自分のカードの効果を押し付けることができる』というルールだ。ここでいう『効果』には『数字カード』による階段の移動も含まれるから、このルールは、基本的には自分のターンに、自分が移動する代わりに相手を不利な方向に強制的に移動させるというやり方で使われる。そして、これはもちろんJKの効果にも適用されるから、もし相手の一段上の場所を取ることができたら、今度は逆にJKを相手に使うことで『相手の手札を強制的に自分に公開させる』ことができるようになるんだ。JKはこうやって使うのさ。素晴らしいだろう? なお、QとKの効果は、常にプレイヤーに対してではなく勝利・敗北条件に発動するから、一段上うんぬんはこいつらには関係ないぜ」
 で、今度はJKの説明だ。まあ、さすがは道化と言ったところか、こいつの効果は奇妙でな。このカードはまず、自分のターンじゃなくてもお構いなしに発動できる。さらに、こいつを使うと、{{傍点|文章=自分の手札を相手に公開しなければならない}}んだ。これを代償に相手にデカい損害を与えられるとかでもなく、ただただ自分の手札を相手に見せるというだけのカード。意味が分からないだろう? まったくだ。だが、『駄段々』にはこいつを活かすルールが一つある。それは、『相手のプレイヤーが自分がいる段の真下の段にいるとき、相手に自分のカードの効果を押し付けることができる』というルールだ。ここでいう『効果』には『数字カード』による階段の移動も含まれるから、このルールは、基本的には自分のターンに、自分が移動する代わりに相手を不利な方向に強制的に移動させるというやり方で使われる。そして、これはもちろんJKの効果にも適用されるから、もし相手の一段上の場所を取ることができたら、今度は逆にJKを相手に使うことで『相手の手札を強制的に自分に公開させる』ことができるようになるんだ。JKはこうやって使うのさ。素晴らしいだろう? なお、QとKの効果は、常にプレイヤーに対してではなく勝利・敗北条件に発動するから、一段上うんぬんはこいつらには関係ないぜ」


 ここでクリームパンダは、懐に入っていたカードをすべて引っ張り出した。先ほどの三枚のカードを含む七枚のカードを舐め回すように見た後、あからさまな演技の困り顔をして、出しぬけにこう言った。
 ここでクリームパンダは、懐に入っていたカードをすべて引っ張り出した。先ほどの三枚のカードを含む七枚のカードを舐め回すように見た後、あからさまな演技の困り顔をして、出しぬけにこう言った。
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 ……こういう疑問はもっともだ。しかし、『駄段々』の本性はここからなんだ。覚えてるか? 『特殊カードを使用するとき、そのカードの絵を明確に相手に見せた上で、階段の遠くにぶん投げないといけない』というルールがある。なのに、『数字カード』を使用するときには、別にそんなことをする必要はないよな。実は、これにはちゃんと理由があるんだよ。{{傍点|文章=『数字カード』を使うとき、ちゃんと嘘をつけるようにするため}}さ! そう、『数字カード』を使うときには、嘘をついてもいいんだ。このゲームの基本は、ゴールにたどり着くまでに嘘の数字を張りまくるというところにある。
 ……こういう疑問はもっともだ。しかし、『駄段々』の本性はここからなんだ。覚えてるか? 『特殊カードを使用するとき、そのカードの絵を明確に相手に見せた上で、階段の遠くにぶん投げないといけない』というルールがある。なのに、『数字カード』を使用するときには、別にそんなことをする必要はないよな。実は、これにはちゃんと理由があるんだよ。{{傍点|文章=『数字カード』を使うとき、ちゃんと嘘をつけるようにするため}}さ! そう、『数字カード』を使うときには、嘘をついてもいいんだ。このゲームの基本は、ゴールにたどり着くまでに嘘の数字を張りまくるというところにある。


 もちろん、嘘が出てくるからには、いわゆる『ダウト要素』が存在する。相手が宣言した『数字カード』が嘘だと思ったとき、プレイヤーはこう叫ぶ――『駄段々』! そう、これこそが、このゲームの名前にもなっている一番の目玉要素なんだ。『駄段々』は一回のゲームにつきプレイヤー別に三回まで行うことができる。そして、これを受けたプレイヤーは、必ず宣言した『数字カード』を実際に相手に見せないといけない。それができない場合――つまり宣言したものが嘘だった場合、そいつは手札の中で最も数が大きい『数字カード』を階段の遠くにぶん投げ、なおかつ『駄段々』を行ったプレイヤーと階段上の位置を交換しなければならない。かなり重いペナルティだ。嘘を指摘したプレイヤーの位置によっては、振り出しに戻ってしまうことだってありえる。
 もちろん、嘘が出てくるからには、いわゆる『ダウト要素』が存在する。相手が宣言した『数字カード』が嘘だと思ったとき、プレイヤーはこう叫ぶ――『駄段々』! そう、これこそが、このゲームの名前にもなっている一番の目玉要素なんだ。『駄段々』は一回のゲームにつきプレイヤー別に三回まで行うことができる。そして、これを受けたプレイヤーは、必ず宣言した『数字カード』を実際に相手に見せないといけない。それができない場合――つまり宣言したものが嘘だった場合、そいつは手札の中で最も数が大きい『数字カード』を階段のどこかに投げ捨て、なおかつ『駄段々』を行ったプレイヤーと階段上の位置を交換しなければならない。かなり重いペナルティだ。嘘を指摘したプレイヤーの位置によっては、振り出しに戻ってしまうことだってありえる。


 だが、『駄段々』を行う方にももちろんリスクはある。もしも『駄段々』を受けたプレイヤーが、宣言した『数字カード』を実際に持っていた場合――つまり嘘なんてついていなかった場合、今度は『駄段々』を行ったやつの方が、手札の中で最も数が大きい『数字カード』を階段の遠くにぶん投げないといけないんだ。こんな風に、ハイリスク・ハイリターンだからこそ、『駄段々』に駆け引きが生まれてくるってわけだな。……ああ、それと、もう一つ大事なことがあった。あるプレイヤーが『数字カード』を宣言し、それによる移動で勝利条件が満たされる――つまりゴールが成立するようなときに、そいつが『駄段々』を受け、それが成功したならば――つまり、そのプレイヤーが嘘をついていたことが明らかになったならば――そいつは即座に敗北のペナルティを負わされてしまうんだ。簡単に言うと、嘘でゴールしようとしたのがバレたら即敗北ってことだ。気をつけないといけないな。
 だが、『駄段々』を行う方にももちろんリスクはある。もしも『駄段々』を受けたプレイヤーが、宣言した『数字カード』を実際に持っていた場合――つまり嘘なんてついていなかった場合、今度は『駄段々』を行ったやつの方が、手札の中で最も数が大きい『数字カード』を階段のどこかに投げ捨てないといけないんだ。こんな風に、ハイリスク・ハイリターンだからこそ、『駄段々』に駆け引きが生まれてくるってわけだな。……ああ、それと、もう一つ大事なことがあった。あるプレイヤーが『数字カード』を宣言し、それによる移動で勝利条件が満たされる――つまりゴールが成立するようなときに、そいつが『駄段々』を受け、それが成功したならば――つまり、そのプレイヤーが嘘をついていたことが明らかになったならば――そいつは即座に敗北のペナルティを負わされてしまうんだ。簡単に言うと、嘘でゴールしようとしたのがバレたら即敗北ってことだ。気をつけないといけないな。


 ……ふう、退屈なルールの説明は、これでおしまいだ。狂暴な市民たちよ、よく耐えてくれたな。ここからは、お前たちの見たいものを思う存分見せてやる!」
 ……ふう、退屈なルールの説明は、これでおしまいだ。狂暴な市民たちよ、よく耐えてくれたな。ここからは、お前たちの見たいものを思う存分見せてやる!」
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 そう言うと、クリームパンダはマイクを男に突き出す。男は半笑いでこう返した。
 そう言うと、クリームパンダはマイクを男に突き出す。男は半笑いでこう返した。


「おいお前、迷彩ズボンに上は裸って、どういうファッションセンスなんだ? 追い剥ぎに遭った敗残兵のコスプレでもしてるのか?」
「おいお前、迷彩ズボンに上は裸って、どういうファッションセンスなんだ? クソダサいな! 追い剥ぎに遭った敗残兵のコスプレでもしてるのか?」


 この瞬間、会場の誰もが、今回のサーカスは『0ターン』に賭けた者の勝利に終わると思ったが、当のクリームパンダは腹を叩いて大笑いしていた。どうやら今日の支配人は機嫌がいいらしい。
 この瞬間、会場の誰もが、今回のサーカスは『0ターン』に賭けた者の勝利に終わると思ったが、当のクリームパンダは腹を叩いて大笑いしていた。どうやら今日の支配人は機嫌がいいらしい。


「ワーオ! なるほど、さすがは生き残り。なかなか図太いやつだ。ただし、そのへらへらした態度もいつまで{{傍点|文章=もつ}}かなあ?」
「ワーオ! なるほど、さすがは生き残り。なかなか図太いやつだ。しかし、そのへらへらした態度もいつまで{{傍点|文章=もつ}}かなあ?」


 クリームパンダは観客席の方に振り返って、にやりと笑う。
 クリームパンダは観客席の方に振り返って、にやりと笑う。
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「さあ始めよう! 本日のサーカス、『賭け駄段々』を!」
「さあ始めよう! 本日のサーカス、『賭け駄段々』を!」


 観客席のボルテージは最高潮だ。各フロアに設置されたフロントには、今日のオッズが張り出されている。最も人気なのは『三ターン』、最も不人気なのは『殺されない』という賭けらしく、『殺されない』場合の払戻金は一万倍と表記されていた。もっとも、それはただのいたずら書きだったが。二人の警官は、男をエスカレーターの上まで連れてきて、縄をほどいた後、自らも観客席に移動した。どこからか現れた支配人の助手らしいスーツ姿の男が、クリームパンダと思想者にそれぞれ七枚のトランプカード――いたって普通のもので、裏には真っ赤な細密画が描かれている――を渡し、『駄段々』の準備は整った。
 観客席のボルテージは最高潮だ。各フロアに設置されたフロントには、今日のオッズが張り出されている。最も人気なのは『三ターン』、最も不人気なのは『殺されない』という賭けらしく、『殺されない』場合の払戻金は一万倍と表記されていた。もっとも、それはただのいたずら書きだったが。二人の警官は、男をエスカレーターの上まで連れてきて、縄をほどいた後、自らも観客席に移動した。どこからか現れた支配人の助手らしいスーツ姿の男が、クリームパンダと思想者にそれぞれ七枚のトランプカード――時代遅れの黄ばんだ紙製のカードで、裏には真っ赤な細密画が描かれている――を渡し、『駄段々』の準備は整った。


「ああ、そうだ、観客の市民諸君は当然ご存じだろうが、一応説明しておこう。今、このサーカスに存在するルールは、『駄段々』のルールだけだ。こいつは死んでも守らないといけない。こいつを破れば、そこにいる警官に射殺されちまうからな。あの{{傍点|文章=女帝}}にそう命じられているらしい。……しかし、裏を返せば、それ以外に守らないといけないルールなんて一つもないんだ。どういう意味か分かるか? つまり、エスカレーターの上の演者たちの間に、{{傍点|文章=法は存在しない}}んだ! 勝手に言ってるわけじゃないぜ。これも{{傍点|文章=女帝}}が定めたことだ。だからもし俺様がゲーム中にこいつを殺しちまっても、何も問題はない。『駄段々』のルールには、『対戦相手を殺してはならない』なんて一言も書かれてないからなあ! 分かったか、危険思想者の生き残り!」
「ああ、そうだ、観客の市民諸君は当然ご存じだろうが、一応説明しておこう。今、このサーカスに存在するルールは、『駄段々』のルールだけだ。こいつは死んでも守らないといけない。こいつを破れば、そこにいる警官に射殺されちまうからな。あの{{傍点|文章=女帝}}にそう命じられているらしい。……しかし、裏を返せば、それ以外に守らないといけないルールなんて一つもないんだ。どういう意味か分かるか? つまり、エスカレーターの上の演者たちの間に、{{傍点|文章=法は存在しない}}んだ! 勝手に言ってるわけじゃないぜ。これも{{傍点|文章=女帝}}が定めたことだ。だからもし俺様がゲーム中にこいつを殺しちまっても、何も問題はない。『駄段々』のルールには、『対戦相手を殺してはならない』なんて一言も書かれてないからなあ! 分かったか、危険思想者の生き残り!」
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「……よし、じゃあ俺は『数字カード』の黒の4を使おう」
「……よし、じゃあ俺は『数字カード』の黒の4を使おう」


 この停止したエスカレーターのステップは全部で50段で、よほどの強運で手札に大きい数字のカードが上から順に集まっているでもない限り、必ずどこかで嘘をつく必要がある。ゲームを盛り上げるには、うってつけの階段だった。ただし、場の浮かれた空気とは裏腹に、あるいはその陽気さが異常なものであることを示すだけかもしれないが、エスカレーターにはところどころにべったりと血がついていた。以前の『賭け駄段々』で殺された思想者のものだ。クリームパンダがおどけた表情で観客席を笑わせている間に、男はそのまま4段を下り終え、ターンはクリームパンダに移った。
 この停止したエスカレーターのステップは全部で50段で、よほどの強運で手札に大きい数字のカードが上から順に集まっているでもない限り、必ずどこかで嘘をつく必要がある。ゲームを盛り上げるには、うってつけの階段だった。ただし、場の浮かれた空気とは裏腹に、あるいはその陽気さが異常なものであることを示すだけなのかもしれないが、エスカレーターにはところどころにべったりと血がついていた。以前の『賭け駄段々』で殺された思想者のものだ。クリームパンダがおどけた表情で観客席を笑わせている間に、男はそのまま4段を下り終え、ターンはクリームパンダに移った。


「俺様は黒の3だ。おっと、お前の真上だな。これはラッキーだ」
「俺様は黒の3だ。おっと、お前の真上だな。これはラッキーだ」
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 ――なぜこの「賭け駄段々」が、勝者がどちらかについての賭けをしないのか。その答えは単純で、{{傍点|文章=これは出来レースだから}}だ。この「駄段々」のゲームの展開は、すべてクリームパンダに仕組まれている。そもそも、「指や歯を手札にしたばば抜き」だとか、そういうほとんど残虐な刑に違わないようなサーカスが各地で行われている中で、このクリームパンダの「賭け駄段々」だけがただの「殺されるかもしれないゲーム」だなんていう{{傍点|文章=うまい話}}はないに決まっている。これはゲームの形を借りた単なる殺人ショーなのだ。これを可能にするのが、{{傍点|文章=手札の操作}}であった。クリームパンダに配られる手札、そして思想者に配られるカードは、事前に決められたものだった。クリームパンダの手札は「Qが三枚、JK、黒の3、赤の10、赤の9」、そして思想者の手札は「Kが二枚、黒の4が二枚、赤のJが二枚、赤の10が一枚」だ。これによって作られる最初の見せ場が、この「取引」だった。
 ――なぜこの「賭け駄段々」が、勝者がどちらかについての賭けをしないのか。その答えは単純で、{{傍点|文章=これは出来レースだから}}だ。この「駄段々」のゲームの展開は、すべてクリームパンダに仕組まれている。そもそも、「指や歯を手札にしたばば抜き」だとか、そういうほとんど残虐な刑に違わないようなサーカスが各地で行われている中で、このクリームパンダの「賭け駄段々」だけがただの「殺されるかもしれないゲーム」だなんていう{{傍点|文章=うまい話}}はないに決まっている。これはゲームの形を借りた単なる殺人ショーなのだ。これを可能にするのが、{{傍点|文章=手札の操作}}であった。クリームパンダに配られる手札、そして思想者に配られるカードは、事前に決められたものだった。クリームパンダの手札は「Qが三枚、JK、黒の3、赤の10、赤の9」、そして思想者の手札は「Kが二枚、黒の4が二枚、赤のJが二枚、赤の10が一枚」だ。これによって作られる最初の見せ場が、この「取引」だった。


 一ターン目から二ターン目までの間、思想者の手札の中の{{傍点|文章=使える}}「数字カード」は、実質的に二枚の黒の4だけだ。赤のJや10は、思想者がどの段にいようとも――ゲーム開始時はもとより、黒の4を使ったときの4段目、二枚目の黒の4を使ったときの8段目では、階段を上りきるという敗北条件を満たしてしまうから――使えない。だから、思想者は最初は必ず黒の4を使う。そこに、黒の3を使ったクリームパンダがやって来て、「取引」を持ちかけるのだ。ちなみに、クリームパンダの手札の赤の10と9は、この取引でKと交換するカードとして用意されている。なぜこの組み合わせなのかといえば、先程の赤のJや10と同様、「使えないから」だ。さて、パンダの実銃にも怖気づかず、このゲームにひょっとすると勝てるかもしれないと思っている傲慢な思想者は、この取引を持ち掛けられたとき、それを断るか、あるいは二枚のKのうち一枚だけを渡す。もし残ったKで「革命」を起こせたら、例の赤のJや10を使って、ひといきにこのゲームに勝利できるかもしれないからだ。無論、クリームパンダは思想者の「革命」すべてを打ち消せる分のQを持っているからそんなことは起こりえないし、そもそもこういう無礼を働いた時点で、思想者はJKによってその{{傍点|文章=分かりきった手札}}を公開され、殺される。……今起ころうとしていることは、まさにそのパターンだった。
 思想者の手札の中の{{傍点|文章=使える}}「数字カード」は、実質的に二枚の黒の4だけだ。赤のJや10は、思想者がどの段にいようとも――ゲーム開始時はもとより、黒の4を使ったときの4段目、二枚目の黒の4を使ったときの8段目では、階段を上りきるという敗北条件を満たしてしまうから――使えない。だから、思想者は一ターン目も、必ず黒の4を使う。そこに、黒の3を使ったクリームパンダがやって来て、「取引」を持ちかけるのだ。ちなみに、クリームパンダの手札の赤の10と9は、この取引でKと交換するカードとして用意されている。なぜこの組み合わせなのかといえば、先程の赤のJや10と同様、「使えないから」に決まっている。さて、パンダの実銃にも怖気づかず、このゲームにひょっとすると勝てるかもしれないと思っている傲慢な思想者は、この取引を持ち掛けられたとき、それを断るか、あるいは二枚のKのうち一枚だけを渡す。もし残ったKで「革命」を起こせたら、例の赤のJや10を使って、ひといきにこのゲームに勝利できるかもしれないからだ。無論、クリームパンダは思想者の「革命」すべてを打ち消せる分のQを持っているからそんなことは起こりえないし、そもそもこういう無礼を働いた時点で、思想者はJKによってその{{傍点|文章=分かりきった手札}}を公開され、殺される。……今起ころうとしていることは、まさにそのパターンだった。


 しかし驚くべきことに、男がにやけ面で公開した七枚の手札は――黒の4が二枚、赤のJが二枚、赤の10が二枚、そして{{傍点|文章=赤の9が一枚}}だった。
 しかし驚くべきことに、男がにやけ面で公開した七枚の手札は――黒の4が二枚、赤のJが二枚、赤の10が二枚、そして{{傍点|文章=赤の9が一枚}}だった。
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「よし、俺のターン。もちろん黒の4だ」
「よし、俺のターン。もちろん黒の4だ」


 そう言って、男はさらに4段を下る。
 そう言って、男はさらに4段を下り、傍の赤い手すりにもたれかかった。


「言っとくが、俺はルール違反なんて一切してないぜ? 『相手の手札をどっかにぶちまけてはならない』なんて言ってなかったよな? さて、これでお前は俺を殺せない。さっき見せたばかりの二枚目の黒の4を疑って、無駄な『駄段々』でもしてみるか? 俺がお前の5段下にいる以上、銃を失ったお前の攻撃は、ひとつも俺には届かない。まあ、ゲームのルールを無視して突っ込んできたって、別に俺は構わないぞ。愚かな思想者に出し抜かれた、最も愚かなサーカス執行人として、お前があそこの警官に射殺されるだけだからな。悔し紛れに俺にしょんべんでもひっかけてみるか? 5段下まで届くお前唯一の攻撃手段だ!」
「言っとくが、俺はルール違反なんて一切してないぜ? 『相手の手札をどっかにぶちまけてはならない』なんて言ってなかったよな? さて、これでお前は俺を殺せない。さっき見せたばかりの二枚目の黒の4を疑って、無駄な『駄段々』でもしてみるか? 俺がお前の5段下にいる以上、銃を失ったお前の攻撃は、ひとつも俺には届かない。まあ、ゲームのルールを無視して突っ込んできたって、別に俺は構わないぞ。愚かな思想者に出し抜かれた、最も愚かなサーカス執行人として、お前があそこの警官に射殺されるだけだからな。悔し紛れに俺にしょんべんでもひっかけてみるか? 5段下まで届くお前唯一の攻撃手段だ!」
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「さて、思想者、お前のターンだ。ビッヒッヒ、じっくり考えるがいい」
「さて、思想者、お前のターンだ。ビッヒッヒ、じっくり考えるがいい」


 思想者が持っている手札は、先程と変わらず、黒の4が二枚、赤のJが二枚、赤の10が二枚、そして赤の9が一枚だ。彼は8段目まで階段を下りた後、エスカレーターによって1段上昇させられたから、今は7段目にいることになる。さて、この状況で、彼はどの「数字カード」を使うべきだろうか? 不幸にも、赤のカードの数字はすべて7より大きいから、階段を上りきってしまう。赤のカードは使えない。なら、黒の4か? 否。黒の4はもう二枚とも使ってしまっているし、三枚目があると嘘をつくにしても、JKで手札を見たクリームパンダには通用しない。ここで「駄段々」を行われたが最後、思想者はクリームパンダと階段上の位置を入れ替えられ、エスカレーターの崖際に立たされるだろう。そこからは、全く同じ展開だ。エスカレーターが起動され、思想者は敗北を強いられる。この状況を動かす手段は、事実、存在していなかった。思想者はここで嘘の宣言をするしかなく、しかし嘘の宣言をすることは敗北を意味している。このジレンマは、エスカレーターが動かなかった場合に想定された「膠着状態」におけるそれと確かに似ていたが、しかし思想者のジレンマはもっとあくどかった――ゴールをしたら敗北してしまうのではなく、何をしても敗北してしまうのだ。
 思想者が持っている手札は、先程と変わらず、黒の4が二枚、赤のJが二枚、赤の10が二枚、そして赤の9が一枚だ。彼は8段目まで階段を下りた後、エスカレーターによって1段上昇させられたから、今は7段目にいることになる。さて、この状況で、彼はどの「数字カード」を使うべきだろうか? 不幸にも、赤のカードの数字はすべて7より大きいから、階段を上りきってしまう。赤のカードは使えない。なら、黒の4か? 否。黒の4はもう二枚とも使ってしまっているし、三枚目があると嘘をつくにしても、JKで手札を見たクリームパンダには通用しない。ここで「駄段々」を行われたが最後、思想者はクリームパンダと階段上の位置を入れ替えられ、エスカレーターの崖際に立たされるだろう。そこからは、全く同じ展開だ。エスカレーターが起動され、思想者は敗北を強いられる。この状況を動かす手段は、事実、存在していなかった。思想者はここで嘘の宣言をするしかなく、しかし嘘の宣言をすることは敗北を意味している。このジレンマは、エスカレーターが動かなかった場合に想定された「膠着状態」におけるそれと確かに似ていたが、しかし思想者のためだけに用意されたこのジレンマはもっとあくどかった――ゴールをしたら敗北してしまうのではなく、何をしても敗北してしまうのだ。


 「膠着状態」ならば、前後に小さな数字を宣言し続けることで、ゴールはできずともターンを回すことはできた。しかし思想者は、何もできない。ターンを回すことすらできないのだ。――そして、それが実際のところ「ターンを渡さないための度を越した遅延行為」などではないとどれだけ主張しようとも、敗北を避けるためにターンを回さないことは、結果として、明確にルールで禁止されているその行為と見た目上全く変わらなかった。これこそが、クリームパンダの「打開策」だった。{{傍点|文章=何をしても敗北するし、何もしなくても敗北する}}。この思想者は、取りうる行動のすべてが敗北に直結する袋小路に陥れられてしまったのだ。
 「膠着状態」ならば、前後に小さな数字を宣言し続けることで、ゴールはできずともターンを回すことはできた。しかし思想者は今、何もできない。ターンを回すことすらできないのだ。――そして、それが実際のところ「ターンを渡さないための度を越した遅延行為」などではないとどれだけ主張しようとも、敗北を避けるためにターンを回さないことは、結果として、明確にルールで禁止されているその行為と見た目上全く変わらなかった。これこそが、クリームパンダの「打開策」だった。{{傍点|文章=何をしても敗北するし、何もしなくても敗北する}}。この思想者は、取りうる行動のすべてが敗北に直結する袋小路に陥れられてしまったのだ。
 
 観客席からは拍手が聞こえ始めた。狡猾なクリームパンダは、こういう状況を幾度となく生還してきた。だからこそ、「<ruby>"大勝ち"のパンダ<rt>Panda the "Creamer"</rt></ruby>」なのだ。彼は使えるものすべてを利用して、相手を叩きのめす。数々の違法賭博を実施・運営し、「国民堕落罪」によって極刑を言い渡されながらも、国に刑の執行を猶予され、このサーカスの執行人として生きることを許されたのは、ひとえに彼のそのカリスマ性、エンターテイナーとしての才能――実用的に言えばその{{傍点|文章=集客能力}}のおかげだったのだ。拍手はいつしか手拍子に移行し、思想者の自殺行為を急かすために熱狂した。
 
 ――しかし、この状況でさえ、思想者の顔に張り付いたにやけ顔は一向に曇らない。
 
「なあ、『革命』っていうのは恐ろしいもんだよな。完全に取り除いたと思っていても、気づけば足元に潜伏している。権力者の盲点で、黙々とその時を待っているんだ」
 
「ビャハハハハ、おいおい、遅延行為はルール違反だぞ。誌的な負け惜しみなんてやめて、さっさと『数字カード』を宣言しな」
 
「分かってる。俺の『数字カード』は……うーん、どうしよう。じゃあ、黒の8だ!」
 
 クリームパンダは、満足そうな表情を浮かべ、唇を舐め回した。
 
「さて市民諸君、準備はできたか? いっせーのーで!」
 
 ショッピングモールはあたかもライブ会場のように団結し、{{傍点|文章=あの言葉}}をレスポンスした。
 
「駄段々!」
 
 観客席からは黄色い歓声が上がる。中には、抱き合って涙を流している者もいた。しかし、この国の地方にある娯楽はこれしかないのだから、彼らの貧相な感受性を責めることはできないだろう。
 
「ありがとう、我が市民たち! おい、不届きな思想者、お前が黒の8を持っているというのなら、それを出してみるんだな!」
 
「ははは、持ってないに決まってるだろ。さっき俺の手札を見たじゃないか。健忘症か?」
 
 観客席からの笑い声は、むしろこの状況でも必死にパンダに噛みつこうとする思想者への嘲笑に変化していた。さて、この後クリームパンダはどのように残虐な方法で思想者をなぶり殺しにするのか、観客たちは待ちきれない思いだった。
 
「ビャッハッハ、強がりもその辺にしとけよ。てことで、俺様はお前と階段上の位置を交換できる。なあに、俺様は遅延行為をするつもりはないから、すれ違いざまにお前をぶちのめすなんて心配はしなくていいぞ。思う存分可愛がってやるのは、その後だ!」
 
 鳴りやまない拍手の中、思想者はクリームパンダと位置を交換した。クリームパンダは目を細めて、5段上にいる思想者の男を見上げている。とどめだ。彼は助手に合図を送り、助手は力を籠めてレバーを押し下げ――その瞬間、思想者はしゃがんで、自身が乗っているステップの前面に立てかけられた何かを拾い、真上に掲げた。トランプのカード。それも、Kだ。
 
 摩擦と回転の音がして、エスカレーターが動き始める。思想者が乗っているステップがエスカレーターの終端に飲み込まれるその瞬間、彼は「革命」を宣言し、Kのカードを5段下にいるクリームパンダに投げつけた。{{傍点|文章=勝利条件と敗北条件が入れ替わり}}、思想者は勝利した。
 
 
 
<big>'''6 思想者'''</big>
 
 クリームパンダの最大の失策は、あの「ありえない赤の9」のことをすっかり忘れていたことだった。Kを一枚しか渡してこなかったのにも関わらず、なぜKを二枚持っているはずの思想者の手札には残り一枚のKがなく、代わりに赤の9があったのか。あるいはそういう意味で、クリームパンダの最大の失策というのは、むしろ{{傍点|文章=後片付けを徹底しなかったこと}}なのかもしれない。というのも、思想者が最初に黒の4を使って下降したとき、彼はその4段目のステップから見て、3段目のステップの前面に何かがへばりついているのを発見していた――それは、前の思想者の血液と、その血液に濡れてへばりつくことができた一枚の厚紙だった。そう、赤の9のカードだ。ちょうどカードの背面が赤いのもあり、遠くから見ただけでは分からなかったのかもしれない。
 
 思想者はそもそも、手札が渡された時点で、このゲームが仕組まれていることをほとんど確信していたし、当然ながら、エスカレーターはどこかのタイミングで動くだろうとも思っていた。この自分の動きを操作するようなカードの組み合わせに加え、その後パンダが{{傍点|文章=都合よく}}一段上に来て、{{傍点|文章=都合よく}}二枚もKを持っている自らにあの「取引」を仕掛けてきたことで、彼は「仕組まれたゲーム」の考えが十中八九正しいだろうとして、さらにこう考えた――ここに来た他の思想者も、自分と同じ手札を渡され、自分がこれから辿る展開と同じ展開を辿っただろう。とすると、この血の付いた3・4段目では、何らかの戦闘行為が発生する可能性が高い。だから、その{{傍点|文章=戦闘に乗じてクリームパンダの手札を失わせ}}、さらに{{傍点|文章=Kを赤の9と交換してここに立てかけておく}}のには、絶好の機会だ!
 
 彼は、恣意的なエスカレーターの作動・停止によってあのような状態に追い込まれるゲームのパターン、そしてその解決策である「傍に『革命』のカードを隠しておくこと」を最初から思いついていた。クリームパンダが説明した「駄段々」のルールには、「捨てられたカードは拾ってもいい」とこそあったが、「{{傍点|文章=カードを勝手に捨ててはならない}}」などというものは存在しなかった。だから、こうしてKをステップの隅に捨てておき、その時が来たタイミングで再び取得することは、完全に{{傍点|文章=適法}}の行いだったのだ。
 
 実際、このゲームを仕組んでいたのは、最終的には思想者の方だったと言っていい。彼は、この「解決策」を用いるために、「革命」を隠しておく場所から逆に考えて、クリームパンダをこの3段目のステップに立ち往生させることにした。「革命」のカードは、「駄段々」を成功させて自身と位置を交換してくるプレイヤーが、ステップを移動せずとも手が届く距離になければならなかったからだ。無論、そうでなければ、位置交換後の自身が「革命」を取得できないだろう。――そして、相手を立ち往生させるための最も手っ取り早い方法は、すべての手札を失わせることだった。
 
 ――思想者がこのゲームの流れを{{傍点|文章=採用}}したのは、実際クリームパンダに吠え面をかかせてやろうという気持ちも無くはなかったが、それよりもむしろ{{傍点|文章=より安全な脱出経路}}のためだった。
 
「じゃあ、ゲームは終わりだな」
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