「利用者:Notorious/サンドボックス/ピカチュウプロジェクト」の版間の差分

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<br>「あのね、コージたちのこと」
<br>「あのね、コージたちのこと」
<br> 浩司は、たしか、栗原くんの下の名前。あのときの笑い声が頭をよぎる。和佳さんは苦々しく顔を歪めた。
<br> 浩司は、たしか、栗原くんの下の名前。あのときの笑い声が頭をよぎる。和佳さんは苦々しく顔を歪めた。
<br>「聞こえてたでしょ? あいつら、こう言っちゃあれだけど、男子の笑いって程度が低いから、あんまり周りのこと考えられてないのよ。ごめんね?」
<br>「聞こえてたでしょ? あいつら、こう言っちゃなんだけど、男子の笑いって程度が低いから、あんまり周りのこと考えられてないのよ。ごめんね?」
<br> まるで自分のせいであるかのように、和佳さんは謝る。
<br> まるで自分のせいであるかのように、和佳さんは謝る。
<br>「ううん、全然……」
<br>「ううん、全然……」
<br>「ごめんね、あいつらには私から言っておくから」
<br>「ごめんね、あいつらには私から言っておくから。それじゃ!」
<br> 和佳さんはひらひらと手を振ると、自分の鞄を掴み、軽やかに教室から去っていった。私はしばらくぼうっとしていた。自分は何もしていないのに、わざわざ謝りにきた彼女の声が耳から離れなかった。
<br> 加奈子ちゃんも和佳さんも十分離れてしまっただろう時間をおいてから、立ち上がって教室を出た。少しだけ、ほんの少しだけ、救われたような気がした。
 
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 けれど、そんな気分も長くは続かなかった。
<br> 制服から着替えて、ベッドに転がる。一日が終わってほっとするから、この時間が一番好きだ。しばらく放心して天井を見つめる。宿題をする気も起きなかったし、ポケットから携帯を取り出す。ロックを解除すると、学校で見ていたページが表示されている。
<br>〈すらすら話せない『吃音』とは〉
<br> 検索履歴は「吃音」「言葉が出てこない どもり」「吃音 中学生」「発表 話せない」とかで埋まっている。小学生の頃から、人前で話すのが苦手だった。人と差し向かいで話すのはそこまで苦ではないのに、聴衆が増えると途端に言葉が出てこなくなる。話そうと思えば思うほど、声の出し方がわからなくなる。
<br> でも、これまでなんとかやってきた。環境が変わったからか、中学生になってからは発表ができないなんてことはなかった。今日までは。
<br> 今日の失敗を思い起こすと、自分の舌を引っこ抜いてしまいたくなる。
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