「利用者:Notorious/サンドボックス/コンテスト」の版間の差分

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<br>「いえ……」
<br>「いえ……」
<br> また黙って頭を絞ったが、知恵は底をついたらしく、ついぞ名案は降りてこなかった。
<br> また黙って頭を絞ったが、知恵は底をついたらしく、ついぞ名案は降りてこなかった。
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 照明は薄明るいという域に達し、脱出方法の検討は行き詰まっていた。半ば自棄になって、僕は言ってみる。
<br>「実は、3841って打ち込むテンキーは、実は他の場所にあるんじゃないですか? そうだ、倉庫はまだ探し切れてない。瓶を全部どかせば、床にドアがついてるかもしれませんよ」
<br>「……探す価値はあるな。明日、やってみよう」
<br> こんなやけっぱちな放言にも権田はちゃんと答えてくれて、申し訳なくなった。いくら脱出の見込みがなくたって、理性的にならねば。幸い、食料はたっぷりある。命の危険が差し迫っているわけではないのだから。
<br> ……なぜだ? ふと疑問が浮かぶ。
<br>「先輩、どうして僕たちを閉じ込めた奴らは、わざわざ大量の食料やら何やらを用意したんですかね?」
<br>「やっぱりそれは疑問だよな。{{傍点|文章=なぜ閉じ込めたのか}}。この答えが得られれば、脱出の条件のヒントになるかもしれない。よし、今度はこれについて考えてみよう」
<br> なぜ奴らは僕らを拐い、閉じ込めたのか。
<br>「普通は、身代金目的とかでしょうけど……」
<br>「もしそうなら、こんな手厚い待遇しなくてもいいよな。椅子とかに縛り付けて、どっかに放り込んでりゃいいんだから」
<br>「人を拐う目的なら色々ありそうですけど、こんな建物に中途半端に閉じ込めておく理由がわかりませんね」
<br>「この建物だけでも、相当な手間と金がかかってる。ここは人を監禁するために建てられたってことでいいんだよな? 何か別の理由で建設されたものを監禁に転用したとは考えづらいよな」
<br>「そうですね。でも、ただ監禁するだけなら、内から開けられる鍵なんてつけなきゃいいんです。何か理由があってこんな構造をしているとは思うんですけど……」
<br> 権田が顔を上げ、小部屋に続くドアの方を見た。正確には、その奥にある倉庫の方を。
<br>「ここには、1年くらいなら生きられる設備がある。つまり、奴らは{{傍点|文章=監禁された人間に生きててほしい}}んだ。そうじゃなきゃ、金かけて食料なんて用意するより、放って飢え死にさせる方を選ぶだろう」
<br>「僕らに生きててほしい……」
<br> 僕の頭にある仮説が浮かんだ。
<br>「これは、何か大掛かりな実験なんじゃないですか? 極限状態で人はどう振る舞うのか観察する、みたいな」
<br>「非合法な実験、か……」
<br>「何か、真っ当に治験者を募れないような実験だから、こうやって無理やり人を拐ってきてるんじゃ?」
<br>「もしそうなら、なかなか明るい想像はできないな……」
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