「利用者:Notorious/サンドボックス/コンテスト」の版間の差分

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<br> 権田はうーんと唸った。
<br> 権田はうーんと唸った。
<br>「しかし布だからなあ。折り畳んでも、大して高さは稼げない。全部の服とタオル、それからシーツも使っても、30センチ稼げるかどうかってところだな」
<br>「しかし布だからなあ。折り畳んでも、大して高さは稼げない。全部の服とタオル、それからシーツも使っても、30センチ稼げるかどうかってところだな」
<br> 他に何か使える物はなかっただろうか。必死に考えて、一つ思いついた。
 
 他に何か使える物はなかっただろうか。必死に考えて、一つ思いついた。
<br>「瓶や缶は鉄でも、{{傍点|文章=中身は違います}}。中身だけ取り出してここに持ってくれば、いくら流動食とは言っても、ある程度の体積は……」
<br>「瓶や缶は鉄でも、{{傍点|文章=中身は違います}}。中身だけ取り出してここに持ってくれば、いくら流動食とは言っても、ある程度の体積は……」
<br> そこまで言って気づいた。
<br> そこまで言って気づいた。
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<br>「まだだ。小部屋のドアは外開き。あれを開けて登れば、鍵穴に届くかも……」
<br>「まだだ。小部屋のドアは外開き。あれを開けて登れば、鍵穴に届くかも……」
<br> ベッドを飛び降りて、権田は小部屋のドアを開け、すぐに閉めてすごすごと戻ってきた。テンキーには、距離も高さも全然足りない。どうやら、このアイデアも不発のようだ。
<br> ベッドを飛び降りて、権田は小部屋のドアを開け、すぐに閉めてすごすごと戻ってきた。テンキーには、距離も高さも全然足りない。どうやら、このアイデアも不発のようだ。
「何か長い棒があれば、ボタンを押せるんですけど……」
<br>「トイレにあったスポンジ……の棒は鉄だったな」
<br>「布をよじって棒にできませんかね……」
<br>「強度が足りないよなあ。待てよ、水を含ませて凍らせるってのはどうだ?」
<br> 僕は首を傾げた。
<br>「冷凍庫は無いし、気温が下がるのを待つというのも、全館空調だから厳しいかもしれませんね」
<br> 棒作戦も、難しい。他の方法を考えてみよう。
<br>「うーん……何かを投げてボタンを押すってのはどうです?」
<br>「うーん……何かを投げてボタンを押すってのはどうです?」
<br>「狙って番号を順に当てるのは難易度が高すぎる。それに、プラスチックカバーがネックだ。あれを上げないとボタンを押せない」
<br>「狙って番号を順に当てるのは難易度が高すぎる。それに、プラスチックカバーがネックだ。あれを上げないとボタンを押せない」
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<br> こんなやけっぱちな放言にも権田はちゃんと答えてくれて、申し訳なくなった。いくら脱出の見込みがなくたって、理性的にならねば。幸い、食料はたっぷりある。命の危険が差し迫っているわけではないのだから。
<br> こんなやけっぱちな放言にも権田はちゃんと答えてくれて、申し訳なくなった。いくら脱出の見込みがなくたって、理性的にならねば。幸い、食料はたっぷりある。命の危険が差し迫っているわけではないのだから。
<br> ……なぜだ? ふと疑問が浮かぶ。
<br> ……なぜだ? ふと疑問が浮かぶ。
<br>「先輩、どうして僕たちを閉じ込めた奴らは、わざわざ大量の食料やら何やらを用意したんですかね?」
 
「先輩、どうして僕たちを閉じ込めた奴らは、わざわざ大量の食料やら何やらを用意したんですかね?」
<br>「やっぱりそれは疑問だよな。{{傍点|文章=なぜ閉じ込めたのか}}。この答えが得られれば、脱出の条件のヒントになるかもしれない。よし、今度はこれについて考えてみよう」
<br>「やっぱりそれは疑問だよな。{{傍点|文章=なぜ閉じ込めたのか}}。この答えが得られれば、脱出の条件のヒントになるかもしれない。よし、今度はこれについて考えてみよう」
<br> なぜ奴らは僕らを拐い、閉じ込めたのか。
<br> なぜ奴らは僕らを拐い、閉じ込めたのか。
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<br>「僕らに生きててほしい……」
<br>「僕らに生きててほしい……」
<br> 僕の頭にある仮説が浮かんだ。
<br> 僕の頭にある仮説が浮かんだ。
<br>「これは、何か大掛かりな実験なんじゃないですか? 極限状態で人はどう振る舞うのか観察する、みたいな」
 
「これは、何か大掛かりな実験なんじゃないですか? 極限状態で人はどう振る舞うのか観察する、みたいな」
<br>「非合法な実験、か……」
<br>「非合法な実験、か……」
<br>「何か、真っ当に治験者を募れないような実験だから、こうやって無理やり人を拐ってきてるんじゃ?」
<br>「何か、真っ当に被験者を募れないような実験だから、こうやって無理やり人を拐ってきてるんじゃ?」
<br>「もしそうなら、なかなか明るい想像はできないな……」
<br>「もしそうなら、なかなか明るい想像はできないな……」
<br> 今からもっと、非人道的な仕打ちが被験者たる僕らに加えられるのかもしれない。
<br>「これが実験なら、この建物もその内容に即した構造をしているってことになるな」
<br>「どんな実験なんでしょうね?」
<br>「さあな。それに、これが実験なら、あってしかるべきものがある」
<br>「何です?」
<br>「カメラだよ。カメラでなくても、何らかの方法でこちらを観察してるはずだ」
<br> そう聞いて、僕は背筋に寒気を覚えた。今も、僕らは誰かに見られているのだろうか。
<br>「……最近のカメラの小型化は凄まじいですからね。どこかに隠しカメラがあっても、おかしくない」
<br>「ああ。朝になったら探してみよう」
 天井のライトは随分暗くなり、権田の顔もよく見えないほどになった。
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