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クリームパンダの獣のような大声が響くが、しかしそれにも負けない歓声がモールを埋め尽くした。彼は満足そうに目を細め、マイクを持ち、醜悪なウインクをさらした。 | クリームパンダの獣のような大声が響くが、しかしそれにも負けない歓声がモールを埋め尽くした。彼は満足そうに目を細め、マイクを持ち、醜悪なウインクをさらした。 | ||
「さあて、今日のサーカスの演目は先週告知した通り……久々の『賭け駄段々』だ! 舞台はもちろん、このでくのぼうのエスカレーター!」 | |||
万雷の拍手で彼の言葉のいちいちを迎える観客席は、しかしどうやらまだそわそわした様子で、期待に満ちた目をしてクリームパンダを見ている。彼らが待っているのはもちろん、今日の獲物――治安警察から引き渡されてくる思想者だ。クリームパンダはもろ手を挙げて続ける。 | 万雷の拍手で彼の言葉のいちいちを迎える観客席は、しかしどうやらまだそわそわした様子で、期待に満ちた目をしてクリームパンダを見ている。彼らが待っているのはもちろん、今日の獲物――治安警察から引き渡されてくる思想者だ。クリームパンダはもろ手を挙げて続ける。 | ||
「まあ待ってくれ、凶暴な市民たち。まずは『駄段々』の説明だ。ここでは前にも何回かやっているから、知っている人も多いと思うが、一応説明させてくれ。このゲームは地下賭博場で作られ、大流行したゲームのひとつだ。ギャンブルで脳みその報酬系が腐ったごろつきどもは、刺激を求めて何度も地下賭博場に出向くだろう? それである時、奴らはついに地上の入口から地下賭博場へと続く長い階段を歩いて降りる時間すら退屈に思うようになっちまったらしい。こうして考え出されたのが、階段とトランプだけを使って遊べるこのゲーム、『駄段々』ってわけだ。 | |||
ルールを説明しよう。このゲームの勝利条件は、『階段を下りきること』! 簡単だろう? ただし、逆に階段を上りきってしまうと敗北になる。そして段の移動は、もちろん勝手にやっていいわけじゃない。ただの階段駆け下り競争になっちまうからな。ここでトランプを使うんだ。プレイヤーは、七枚のランダムなカードで構成された手札をゲーム開始時に受け取る。そして、各ターンにそれぞれ一回ずつ『数字カード』を使うことで階段を上り下りするんだ。『数字カード』は<ruby>A<rt>エース</rt></ruby>から10の数札に<ruby>J<rt>ジャック</rt></ruby>を加えたもので、プレイヤーは宣言した『数字カード』にある数字の分だけ移動でき、同じカードは何度でも使うことができる。ああ、もちろんJは11に相当する。ここで気をつけるのは、それが黒のカード、つまりスペードかクラブのカードなら階段を下る方向に移動し、逆に赤のカード、つまりハートかダイヤのカードなら階段を上る方向に移動するってところだ。ややこしいだろう?」 | ルールを説明しよう。このゲームの勝利条件は、『階段を下りきること』! 簡単だろう? ただし、逆に階段を上りきってしまうと敗北になる。そして段の移動は、もちろん勝手にやっていいわけじゃない。ただの階段駆け下り競争になっちまうからな。ここでトランプを使うんだ。プレイヤーは、七枚のランダムなカードで構成された手札をゲーム開始時に受け取る。そして、各ターンにそれぞれ一回ずつ『数字カード』を使うことで階段を上り下りするんだ。『数字カード』は<ruby>A<rt>エース</rt></ruby>から10の数札に<ruby>J<rt>ジャック</rt></ruby>を加えたもので、プレイヤーは宣言した『数字カード』にある数字の分だけ移動でき、同じカードは何度でも使うことができる。ああ、もちろんJは11に相当する。ここで気をつけるのは、それが黒のカード、つまりスペードかクラブのカードなら階段を下る方向に移動し、逆に赤のカード、つまりハートかダイヤのカードなら階段を上る方向に移動するってところだ。ややこしいだろう?」 | ||
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……ふう、退屈なルールの説明は、これでおしまいだ。狂暴な市民たちよ、よく耐えてくれたな。ここからは、お前たちの見たいものを思う存分見せてやる!」 | ……ふう、退屈なルールの説明は、これでおしまいだ。狂暴な市民たちよ、よく耐えてくれたな。ここからは、お前たちの見たいものを思う存分見せてやる!」 | ||
クリームパンダはそう言って、はげた頭の横で拍手を二回響かせた。観客が総立ちで拳を突き上げる中、一階のステージに現れた思想者の男、あるいは{{傍点|文章=今日の獲物}}と呼ぶべきか、彼は二人の軍人に前後を囲まれ、麻の縄で胴と腕を後ろ手に縛られていた。 | |||
===3 ショーの幕開け=== | ===3 ショーの幕開け=== | ||
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「ビャハハハハ、まったく面白いやつだな。そんなお前の気概に免じて、ハンデをやろう。お前が先攻で良いぜ」 | 「ビャハハハハ、まったく面白いやつだな。そんなお前の気概に免じて、ハンデをやろう。お前が先攻で良いぜ」 | ||
「よし、じゃあ俺は『数字カード』の黒の5を使おう」 | |||
男はそのまま5段下降した。この停止したエスカレーターのステップは全部で50段で、よほどの強運で手札に大きい数字のカードが上から順に集まっているでもない限り、必ずどこかで嘘をつく必要がある。ゲームを盛り上げるには、うってつけの階段だった。ただし、場の浮かれた空気とは裏腹に、あるいはその陽気さが異常なものであることを示すだけかもしれないが、エスカレーターにはところどころにべったりと血がついていた。以前の『賭け駄段々』で殺された思想者のものだ。クリームパンダがおどけた表情で観客席を笑わせている間に、男はターンエンドを宣言した。 | |||
「俺様は黒の4だ。おっと、お前の真上だな。これはラッキーだ」 | |||
スキップしながら階段を4段下った後、男は突然ズボンのポケットから二丁の銃を取り出し、こう言った。 | |||
「なあ、思想者よ、取引をしないか? 俺は銃を二丁持っているから、『駄段々』のルールのせいで階段を自由に動けないにもかかわらず、遠距離からお前を殺すことができる。だがお前は手ぶらだ。これじゃあ不公平だよな? 不公平なのは良くない。だから取引をしよう。」 |
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