3,314
回編集
細 (→呼称) |
編集の要約なし |
||
29行目: | 29行目: | ||
その頃、天と地はほとんどくっついていた。あらゆる生物は背丈が非常に低いか、さもなくば寝転がるかして、天と地のわずかな隙間を利用して生きていた。ところが、二零零が36歳のときに盤古が生まれた。盤古の背丈は日に日に伸びていき、伴って徐々に天が押し上げられていったので、天地が乖離した。 | その頃、天と地はほとんどくっついていた。あらゆる生物は背丈が非常に低いか、さもなくば寝転がるかして、天と地のわずかな隙間を利用して生きていた。ところが、二零零が36歳のときに盤古が生まれた。盤古の背丈は日に日に伸びていき、伴って徐々に天が押し上げられていったので、天地が乖離した。 | ||
人々は半日ほど騒いだだけですぐにこの出来事を気に留めなくなったが、零零はそうではなかった。この出来事にひどく引き付けられたのだった。その後彼は詩学を捨てて天地の研究に没頭した。天へと続く階段を必死で登り、太陽が非常に熱いということを誰よりも早く確認した。さらに、地面を夢中で掘り、その一番深いところが平地の何百倍も高温で、何百万倍も高圧の状態になっているということを誰よりも早く突き止めた。 | |||
このように懸命な研究生活の中、友人はすべて失ったが、齢47歳にして天地が無限に広がることを突き止め、神々に褒められた<ref>単に「大地はとってもおっきくて、そして空はもっとひろいの」の意味。物理学のいう「宇宙は膨張している」という話とは異なる。また、太陽のもとに近づいたり、地面を核まで掘ったりしたことの方がよほど目覚ましいはずであり、それらの成果を差し置いてこれが評価されたのは甚だ不思議である。</ref>。この頃までに神となっていた盤古も、この成果を褒め称えた。 | このように懸命な研究生活の中、友人はすべて失ったが、齢47歳にして天地が無限に広がることを突き止め、神々に褒められた<ref>単に「大地はとってもおっきくて、そして空はもっとひろいの」の意味。物理学のいう「宇宙は膨張している」という話とは異なる。また、太陽のもとに近づいたり、地面を核まで掘ったりしたことの方がよほど目覚ましいはずであり、それらの成果を差し置いてこれが評価されたのは甚だ不思議である。</ref>。この頃までに神となっていた盤古も、この成果を褒め称えた。 | ||
研究が神々に認められた零零は、満足して研究をやめるか、さらに追究するかの判断を迫られていた。今まで研究のみをしてきた貧しい零零は、余儀なく前者を選んだ。 | |||
===天地の獲得=== | ===天地の獲得=== | ||
研究することには満足した零零であるが、天地への思いを失ったわけではなかった。小作人として田に水を引き、畑に種を蒔きながら、常に天地のことを考えていた。あるとき、「天地を研究する」のではなく「天地を手に入れる」という発想に至り、すべてが腑に落ちた。 | |||
そこからは早かった。自分の本当に望んでいることが見つかった零零は、天地研究の功績を利用して神々に天地の持ち主を問い、盤古の名を知る。その三日後には「あの研究の者です」と盤古のもとへ訪ねて行ってお茶菓子を手渡した。それは毒入りの餅であった。厳かなる神代、その太平の時代、謀略など一つもなかったというのに、警戒の念を抱かせるすべがあるものか。受け取ったその場で毒餅を食した盤古は倒れ込み、勢い余って天地を手放した。天地は零零の手元にまんまと収まった。 | そこからは早かった。自分の本当に望んでいることが見つかった零零は、天地研究の功績を利用して神々に天地の持ち主を問い、盤古の名を知る。その三日後には「あの研究の者です」と盤古のもとへ訪ねて行ってお茶菓子を手渡した。それは毒入りの餅であった。厳かなる神代、その太平の時代、謀略など一つもなかったというのに、警戒の念を抱かせるすべがあるものか。受け取ったその場で毒餅を食した盤古は倒れ込み、勢い余って天地を手放した。天地は零零の手元にまんまと収まった。 |
回編集