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「実は私ね、燿が通り魔なんじゃないかと疑ってたの」 | 「実は私ね、燿が通り魔なんじゃないかと疑ってたの」 | ||
<br> 燿を部屋に上げ、冷蔵庫から缶ビールを2つ取り出しながら、麗は言った。燿は枝豆を口に運びかけた姿勢のまま、固まった。同じ内容を繰り返すテレビ番組が、タイミングよく通り魔の写真を映した。 | <br> 燿を部屋に上げ、冷蔵庫から缶ビールを2つ取り出しながら、麗は言った。燿は枝豆を口に運びかけた姿勢のまま、固まった。同じ内容を繰り返すテレビ番組が、タイミングよく通り魔の写真を映した。 | ||
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<br>「ん〜、俺に見えなくもないけど……こんな男なら大量にいるだろ」 | <br>「ん〜、俺に見えなくもないけど……こんな男なら大量にいるだろ」 | ||
<br> それから、麗は燿を通り魔か否か見極めようとしたことを話した。燿は笑ったり感心したりしながら話を一通り聞くと、麗にこう尋ねた。 | <br> それから、麗は燿を通り魔か否か見極めようとしたことを話した。燿は笑ったり感心したりしながら話を一通り聞くと、麗にこう尋ねた。 | ||
<br>「だから入れるのを渋ってたのか……でも、どうやって俺が連続通り魔じゃないと判断したんだ?」 | |||
<br>「{{傍点|文章=ギャルの証言よ}}」 | |||
<br> 麗をテレビを指した。丁度写真を撮ったギャルのインタビューシーンが流れている。 | |||
<br>「彼女は、{{傍点|文章=自撮り中に画面の中で通り魔が右手で}}女性を刺したのを見た、と証言しているわ。最初はスルーしてたけど、よく考えたら解釈を間違えているのに気づいたわ。{{傍点|文章=スマホの内カメの画面だと}}、{{傍点|文章=左右は反転する}}」 | |||
<br> 麗はプルタブを引き起こし、ビールを呷った。 | |||
<br>「テレビで『犯人は右利き』なんて吹聴されていたから、テレビクルーと同じ勘違いをしてしまったわ。本当は、{{傍点|文章=通り魔は左利き}}なのよ」 | |||
<br> 燿もビールに口をつけた。 | |||
<br>「だから、{{傍点|文章=右利きの俺は連続通り魔じゃない}}って訳か」 | |||
<br>「そういうこと」 | |||
<br> しかし、意地悪な笑みを浮かべて、燿は問うてきた。 | |||
<br>「でも、ギャルの覚え違いだったり、捜査を攪乱するために通り魔がわざと利き手じゃない手を使ったりしていたかもよ?」 | |||
<br>「それらの可能性は薄いと判断したわ。それに……」 | |||
<br>「それに?」 | |||
<br> 麗は頬杖をつき、弟に笑いかけた。 | |||
<br>「私の可愛い弟が、通り魔なんてする訳ないじゃない」 | |||
<br> 燿は驚いたような顔をしたが、すぐにニヤリと笑うと、ビールの缶を持ち上げた。 | |||
<br>「姉弟の絆に」 | |||
<br> 麗も缶を持ち上げる。 | |||
<br>「乾杯」 | |||
<br> 澄んだ音が部屋に響いた。 | |||
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