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ゴト、コトト。高校2年生の雅登を乗せたモノレールが、軌道を走っていく。雅登は、吊り革を掴んで単語帳を見ていた。学校から塾に行った帰り、そろそろ降りるべき安里駅に着く。到着メロディーが流れ初め、雅登は単語帳をリュックにしまった。
ゴト、コトト。高校2年生の雅登を乗せたモノレールが、軌道を走っていく。雅登は、吊り革を掴んで単語帳を見ていた。学校から塾に行った帰り、そろそろ降りるべき安里駅に着く。到着メロディーが流れ初め、雅登は単語帳をリュックにしまった。


車両が減速していく。雅登は扉の前に移動した。時間が遅いこともあって、乗客は多くはない。
車両が減速していく。雅登は扉の前に移動した。時間が遅いこともあって、乗客は多くはない。モノレールは、キィッと音を立てて安里駅に停車した。軽快な電子音とともに、ドアがプシューと開く。雅登は右足をホームに下ろした──その時だった。
 
左足が、床ごとズルッと横に動いた。<br>「うおっ」<br>小さく叫んで、慌ててホームに飛び出た。ちょっとふらついてたたらを踏む。見ると、モノレールがずるずると動き出していた。扉を開けたまま出発するとは何事だ、危ないじゃないか。──と、体がバランスを失い、雅登は左にバタリと倒れた。
 
え? 何があった? 引き倒されたのか? いや、引っ張られた?
 
その時、ようやく遠くから聞こえてくる異音に気がついた。メキメキ、ギギギ。乗ってきたモノレールは、速度を上げつつあった。そして、雅登の体も、ズルズルと引きずられていく。何にも、触れられていないのに。
 
何だ? 何が起こっている?
 
謎の引力は、ますます強くなっていく。雅登は勢いよくホームの床を滑り、端のガラス壁にぶつかった。下の通りでは、どちらの車線の車も、一方向に走っていく。激しく横転しながら転がっていくものもある。その先を見ようとした時、悲鳴が聞こえた。モノレールが、ここから100mほど先のカーブで止まっていた。そして、カーブの外側に向かって大きく傾いている。
 
直後、遂に車両が限界を迎えた。黒い破片が散り、2両編成のモノレールが、線路の外へと転げ落ちた。──いや、{{傍点|文章=落ちていない}}。車両は破片もろとも、真横の{{傍点|文章=何か}}に猛スピードで衝突した。破片が、散ることなく{{傍点|文章=何か}}の表面にへばりつく。まるで、そこが地面であるかのように。地球の引力など存在していないように。
 
雅登は、やっと引力の中心である{{傍点|文章=何か}}に目を向けた。巨人、だった。夜闇をバックに、黒々と聳え立つ巨人。
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