2,085
回編集
(4) |
(4) |
||
112行目: | 112行目: | ||
巨人は雅登に覆いかぶさるように、倒れてくる。雅登は飛び起き、逃げ出した。ここで、死んでたまるか。雅登は全力で走り、横に伸びている路地に飛び込んだ瞬間、巨人が地面に激突する大音響が響き渡った。 | 巨人は雅登に覆いかぶさるように、倒れてくる。雅登は飛び起き、逃げ出した。ここで、死んでたまるか。雅登は全力で走り、横に伸びている路地に飛び込んだ瞬間、巨人が地面に激突する大音響が響き渡った。 | ||
地面が激しく揺れ、土煙がもうもうと舞い上がり、雅登を包み込んだ。雅登は頭を抱えて地面に伏せ、じっとしていた。たっぷり5分は経っただろうか。土煙が晴れ、呼吸もしやすくなってから、雅登はおそるおそる身を起こした。体に積もった粉塵を払い、振り返った。巨人が倒れた道には、うずたかく瓦礫が堆積していた。とりあえず、急に動き出したりする気配はない。 | |||
すると、道の方から、若い女の声が聞こえた。それに続いて、男の声、それから赤ちゃんのぐずる声も。雅登は道の瓦礫の上に登り、周りを見回した。左、堆積した瓦礫の突端。その上で、一組の家族が固く抱き合っていた。泣きじゃくる赤ん坊を、母親と父親が両側から固く抱き締めている。巨人の崩落に巻き込まれるのを、辛くも免れたのだろうか。雅登は心が温まるのを感じ、そっと背を向けた。後ろでその母親が、「よかった、帰ってきてくれて」と涙まじりに言うのが聞こえた、ような。 | すると、道の方から、若い女の声が聞こえた。それに続いて、男の声、それから赤ちゃんのぐずる声も。雅登は道の瓦礫の上に登り、周りを見回した。左、堆積した瓦礫の突端。その上で、一組の家族が固く抱き合っていた。泣きじゃくる赤ん坊を、母親と父親が両側から固く抱き締めている。巨人の崩落に巻き込まれるのを、辛くも免れたのだろうか。雅登は心が温まるのを感じ、そっと背を向けた。後ろでその母親が、「よかった、帰ってきてくれて」と涙まじりに言うのが聞こえた、ような。 | ||
俺は助かったのだろうか? 路地を歩きながら、ぼんやりと雅登は考えた。虎口を脱したのだという実感が湧かない。今になって、体の各所が痛み始めた。ずっと逃げ続けたから、体も心もふらふらだ。路地を歩きながら、雅登は公衆電話を探そうと決意した。携帯は失くしてしまった。まずは、家族に無事を伝えよう。雅登は、瓦礫の少ない方へ、ゆっくりと歩いていった。 | |||
雅登が、あの家族が瓦礫の{{傍点|文章=上}}にいたことに疑問を持つのは、まだ先のことである。 | 雅登が、あの家族が瓦礫の{{傍点|文章=上}}にいたことに疑問を持つのは、まだ先のことである。 |
回編集