「Sisters:WikiWikiオンラインノベル/ドア越しの夫婦」の版間の差分

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(今玄関)
 
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<br> 勇子はわざと大きな足音を立てて玄関に向かった。少し前の夫の言動を振り返る。
<br> 勇子はわざと大きな足音を立てて玄関に向かった。少し前の夫の言動を振り返る。
<br> 『ドアに鍵が掛かってる! 今玄関にいるよ! 虎太郎も帰ってる?』
<br> 『ドアに鍵が掛かってる! 今玄関にいるよ! 虎太郎も帰ってる?』
<br> その前に、3度のノック。これを『{{傍点|文章=3文字目に注目しろ}}』という意味に捉えれば。
<br> その前に、3度のノック。これを『{{傍点|文章=3文字目に注目しろ}}』という意味に捉えれば。
<br> どあにかぎがかかってる
<br> どあにかぎがかかってる
<br> いまげんかんにいるよ
<br> いまげんかんにいるよ
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<br> に・げ・ろ
<br> に・げ・ろ
<br> 夫も相当の覚悟をもってこのメッセージを送ったのだろう。伝わったから、虎太郎はわたしが守るから、安心して。
<br> 夫も相当の覚悟をもってこのメッセージを送ったのだろう。伝わったから、虎太郎はわたしが守るから、安心して。
<br> そんな思いを込めて、わざとらしく3度くしゃみをした。そして、夫婦を隔てる扉の鍵を掛ける。スマホをそっと靴箱の上に置き、ループ再生ボタンをタップする。
<br> そんな思いを込めて、わざとらしく3度くしゃみをした。そして、夫婦を隔てる扉の鍵を掛ける。スマホをそっと靴箱の上に置き、ループ再生ボタンをタップする。
<br> どうか無事でいて、稔さん。
<br> どうか無事でいて、稔さん。
<br> 心の中で言いながら、勇子は玄関に背を向けた。夫を危地において逃げることに、心が咎める。しかしそのとき、後ろから夫の言葉が聞こえてきた。それに背中を押され、勇子は虎太郎のもとへと向かう。
<br> 心の中で言いながら、勇子は玄関に背を向けた。夫を危地において逃げることに、心が咎める。しかしそのとき、後ろから夫の言葉が聞こえてきた。それに背中を押され、勇子は虎太郎のもとへと向かう。
<br> 夫はこう言ったのだ。
<br> 夫はこう言ったのだ。
<br>「気にせず行ってくれ」
<br>「気にせず行ってくれ」
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