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 小鳥の中でいやなそうぞうがふくらんでいきます。ちかづいてきたケーキやさんのえんとつからは、もうけむりはのぼっていません。……いちごさん、おねがい、ぶじでいて!
 小鳥の中でいやなそうぞうがふくらんでいきます。ちかづいてきたケーキやさんのえんとつからは、もうけむりはのぼっていません。……いちごさん、おねがい、ぶじでいて!


 小鳥はなりふりかまわず、今さっきみちでひろった小石をまどガラスになげつけました。大きな音を立てて、とうめいなガラスへんがくずれおちます。おみせのだれかのひめいもよそに、小鳥はわれたまどのすきまから中におし入って、目線はたなのはじっこの、ショートケーキのてっぺんの――
 小鳥はなりふりかまわず、今さっきみちでひろった小石をまどガラスになげつけました。大きな音を立てて、とうめいなガラスへんがくずれおちます。
 
 おみせのだれかのひめいもよそに、小鳥はわれたまどのすきまから中におし入って、目線はたなのはじっこの、ショートケーキのてっぺんの――


「いちごさん!」
「いちごさん!」
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「さあ、つかまって!」
「さあ、つかまって!」


 小鳥はつめのあいだに大切にいちごをかかえて、ケーキやさんをあとにしました。空はすっかりほのぐらくなっていて、お月さまとお星さまが白くかがやいています。つめたくふく風が小鳥といちごをくすぐって、ひゅうひゅうと音を立てました。
 小鳥はつめのあいだに大切にいちごをかかえて、ケーキやさんをあとにしました。
 
 空はすっかりほのぐらくなっていて、お月さまとお星さまが白くかがやいています。つめたくふく風が小鳥といちごをくすぐって、ひゅうひゅうと音を立てました。


「あの、小鳥さん……ありがとう!」
「あの、小鳥さん……ありがとう!」
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「えへへ、どういたしまして!」
「えへへ、どういたしまして!」


 かわいた空気のなか、小鳥はふかく、やわらかく息をはきます。だれかのためにこんなにがんばるだなんて、小鳥には生まれてはじめてのことでした。肩の荷がおりるのとどうじに、カラスとのおいかけっこのつかれがどっと押しよせてきました。
 かわいた空気のなか、小鳥はふかく、やわらかく息をはきます。
 
 だれかのためにこんなにがんばるだなんて、小鳥には生まれてはじめてのことでした。肩の荷がおりるのとどうじに、カラスとのおいかけっこのつかれがどっと押しよせてきました。


「すごいなあ……空ってこんなにひろかったんだね。雲もあんなにとおくにある。」
「すごいなあ……空ってこんなにひろかったんだね。雲もあんなにとおくにある。」
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「……そうだね。」
「……そうだね。」
   
   
 ほほえましい気もちもひるがえって、雲の上へいちごをつれていくというやくそくをおもいだした小鳥は、じぶんのなさけなさが憎らしくなりました。あのときうそをついてしまったことが、いちごとのあいだの全てをだいなしにしているようにおもえました。
 ほほえましい気もちもひるがえって、雲の上へいちごをつれていくというやくそくをおもいだした小鳥は、じぶんのなさけなさがいやになりました。
 
 あのときうそをついてしまったことが、いちごとのあいだの全てをだいなしにしているようにおもえました。


 だから小鳥は、いちごにほんとうのことをはなすことにきめました。
 だから小鳥は、いちごにほんとうのことをはなすことにきめました。
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「やったあ! 小鳥さん、ほんとうにありがとう!」
「やったあ! 小鳥さん、ほんとうにありがとう!」


 小鳥は、じぶんのことがきらいになりました。
 小鳥は、じぶんのことがきらいになりました。
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