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 森のみんなはびっくりしているようすで、ふだんとかわらず明るくわらっています。……でも小鳥は、なぜだかぞっとしてしまいました。
 森のみんなはびっくりしているようすで、ふだんとかわらず明るくわらっています。……でも小鳥は、なぜだかぞっとしてしまいました。


 いちごさん――「イチゴ」を、……くだものを食べものだとおもうのは、べつにおかしなことではないし、むしろとうぜんのことです。なのに、いちごさんと「食べもの」をむすびつけることばには、なにかとってもいやなかんじがするのです。
 いちごさん――「イチゴ」を、……くだものを食べものだとおもうのは、べつにおかしなことではないし、むしろとうぜんのことです。
 
 なのに、いちごさんと「食べもの」をむすびつけることばには、なにかとってもいやなかんじがするのです。


 ……あのおかしなカラスのことばをおもいだしたせいでしょうか。
 ……あのおかしなカラスのことばをおもいだしたせいでしょうか。
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 小鳥は、にげるようにしてねむりにおちました。
 小鳥は、にげるようにしてねむりにおちました。
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 お日さまもまだのぼらない朝はやく、甘あいゆめからさめた小鳥は、ゆううつに息つく間もなく、ひどいにおいに顔をしかめました。雨上がりのじめっとした風といっしょにどこからかながれてきた、甘くてすっぱくて、鼻をつくひどいにおいです。あまりのつよいにおいに、小鳥はおもわずせきこんでしまいました。
 お日さまもまだのぼらない朝はやく、甘あいゆめからさめた小鳥は、ゆううつに息つく間もなく、ひどいにおいに顔をしかめました。
 
 雨上がりのじめっとした風といっしょにどこからかながれてきた、甘くてすっぱくて、鼻をつくひどいにおいです。あまりのつよいにおいに、小鳥はおもわずせきこんでしまいました。


 ……でも、あたりをさがすまでもなく、小鳥はそのにおいのもとに気づいてしまいました。
 ……でも、あたりをさがすまでもなく、小鳥はそのにおいのもとに気づいてしまいました。
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「わかんないよ! わたし……ちがう、いやだ、こんな、こんなの……!」
「わかんないよ! わたし……ちがう、いやだ、こんな、こんなの……!」


 吐きそうになるのをこらえながら、小鳥はハエをおいはらい、大切にいちごをかかえて、ハトさんの住んでいる木にとんでいきました。ものしりで頼れるハトさんなら、こんなことになってしまったいちごでも、元どおりにできるかもしれないとおもったからです。いちごをつかむ小鳥の爪は、ぶよぶよとしたいちごの不気味な手ざわりに、すこしふるえてしまっていました。
 吐きそうになるのをこらえながら、小鳥はハエをおいはらい、大切にいちごをかかえて、ハトさんの住んでいる木にとんでいきました。ものしりで頼れるハトさんなら、こんなことになってしまったいちごでも、元どおりにできるかもしれないとおもったからです。
 
 いちごをつかむ小鳥の爪は、ぶよぶよとしたいちごの不気味な手ざわりに、すこしふるえてしまっていました。


「小鳥くんか、こんな朝早くにいったい……うっ、ひどいにおいだ!」
「小鳥くんか、こんな朝早くにいったい……うっ、ひどいにおいだ!」


 ――いちごは黙りこんで、かなしそうにうつむきます。しかしどうにかなぐさめようにも、小鳥にはいちごと目をあわせることができませんでした。今のいちごのすがたをみていると、気もちわるくなってきて、吐きそうになってしまうからです。そして小鳥は、そんなじぶんにもまた気持ちわるくなってしまいました。
 ――いちごは黙りこんで、かなしそうにうつむきます。しかしどうにかなぐさめようにも、小鳥にはいちごと目をあわせることができませんでした。今のいちごのすがたをみていると、気もちわるくなってきて、吐きそうになってしまうからです。
 
 そして小鳥は、そんなじぶんにもまた気持ちわるくなってしまいました。


「……ハ、ハトさん! あの、いちごさんが、こんなことになってしまって……な、治してあげられる……かな?」
「……ハ、ハトさん! あの、いちごさんが、こんなことになってしまって……な、治してあげられる……かな?」
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