「利用者:キュアラプラプ/サンドボックス/戊」の版間の差分

　小鳥は、また吐き気をこらえました。

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「ねえ、小鳥さん。」

「小鳥さんになら、いいの。食べられてもいい。だって……わたし、小鳥さんのことが好きだから。」

　小鳥は、いちごを食べることにしました。

　つばさをはためかせ、小鳥は空にとびあがっていきました。きれいな朝やけがかがやいて、ぶあつくうかぶ雲をくっきりとみせてくれます。にぎやかな歌やようきな音楽だって、どこからともなくきこえてきます。すずしい空気が小鳥をやさしくつつんで、とっても気もちよさそうです。

　――しかしそのときとつぜん、ばさばさという大きな音がちかづいてきました。

「なあに、同族のカンってやつだよ。まあそんなことより、はやく食べさせてくれない？」

「ひどいなあ小鳥くん、ぼくの言ったこと、ちゃあんとわかっていたくせに。」

　小鳥にはもう、なにをする気もありませんでした。なにもかんがえずに、このままじめんにおちることにしたのです。

　いちごが腐ってしまうまえの夜、じぶんのおうちのなかで、小鳥は気づきました。あのとき、あの街で、小鳥の心をうばったあのにおいは――甘くてきれいで、しっとりしたあのいいにおいは――いちごのものでした。

「小鳥くん……？」

　だって、あの腐ったいちごの味は、あの甘くてすっぱくて、鼻をつくひどい味は、小鳥にとってまちがいなく――おいしかった、から。

「まさかほんとうになにもせずおちるなんて……。」

「まあいいや。……好きだよ、小鳥くん。」