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<br>「そう――そしてその図書館はメタファーなんだ。誰にとってもね。実は本の中の図書館は、僕と大島さんにとっても、佐伯さんにとってもメタファーではないんだ。その世界は全て他の意味、意味上の概念に取って代わることができるから、図書館は彼らの中で実態を持って互いを繋ぐ、パイプのような物になっているんだ。それは心臓と脳を繋ぐ血管のように無くてはならないものだ。でも――」 | <br>「そう――そしてその図書館はメタファーなんだ。誰にとってもね。実は本の中の図書館は、僕と大島さんにとっても、佐伯さんにとってもメタファーではないんだ。その世界は全て他の意味、意味上の概念に取って代わることができるから、図書館は彼らの中で実態を持って互いを繋ぐ、パイプのような物になっているんだ。それは心臓と脳を繋ぐ血管のように無くてはならないものだ。でも――」 | ||
<br> 僕は言葉をきった。ここまで喋るのに息を忘れていた。相変わらず背後の彼と思わしきものは動かない。彼の気配は全くと言って良いほど感じられない。そこには、僕だけがいる。息を整えて僕は続ける。 | <br> 僕は言葉をきった。ここまで喋るのに息を忘れていた。相変わらず背後の彼と思わしきものは動かない。彼の気配は全くと言って良いほど感じられない。そこには、僕だけがいる。息を整えて僕は続ける。 | ||
<br> | <br>「僕らの生きる世界は良くも悪くもメタフォリカルではないもので溢れている。そう。僕らの世界には無くてはならないパイプが多すぎるんだ。だから僕はそこに僕だけのメタファーを創りたい。誰にとってもメタフォリカルな僕だけの図書館だ。」 | ||
<br> 僕はだんだんと振り向くのが恐ろしくなっていた。その恐怖と彼は殆ど関係がない。僕は話を終えるのを恐怖していたのだ。できることならこのままずっと話を続けていたかった。僕は、話すたびに僕自身が出来上がっていく感覚にすっかり陶酔していた。もといた世界に戻りたくなかった。 | <br> 僕はだんだんと振り向くのが恐ろしくなっていた。その恐怖と彼は殆ど関係がない。僕は話を終えるのを恐怖していたのだ。できることならこのままずっと話を続けていたかった。僕は、話すたびに僕自身が出来上がっていく感覚にすっかり陶酔していた。もといた世界に戻りたくなかった。 | ||
<br>「ふたつめ、これはもっとシンプルだ。“愛する人が欲しい”。僕は本気で愛せる人が欲しい。これに関して僕はこれといった注文はない。ただ本気で愛したいと思える、そんな人が欲しくなったよ。」 | <br>「ふたつめ、これはもっとシンプルだ。“愛する人が欲しい”。僕は本気で愛せる人が欲しい。これに関して僕はこれといった注文はない。ただ本気で愛したいと思える、そんな人が欲しくなったよ。」 |
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