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{{お知らせ|内容= | {{お知らせ|内容='''この記事のタイトルは、最後に明かされます。'''}} | ||
頬に、固く冷たい感触。四肢にも、冷たさを感じる。胸に体重がかかっており、呼吸が少し苦しい。そう思うと、みるみるうちに息のしづらさが強く感じられるようになって、意識が覚醒した。 | 頬に、固く冷たい感触。四肢にも、冷たさを感じる。胸に体重がかかっており、呼吸が少し苦しい。そう思うと、みるみるうちに息のしづらさが強く感じられるようになって、意識が覚醒した。 | ||
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<br>「ははっ、そうだったな」 | <br>「ははっ、そうだったな」 | ||
<br> 僕は権田と入れ替わるようにして風呂に向かった。脱衣所で服を脱ぐと、権田の脱いだ服が棚にまとめて置かれていたから、その横に離して自分の服を置く。スライドドアを開いて風呂に入った。シャワーをひねると、さっきまで権田が使っていたからか、いきなり温水が出た。もう少し湯を熱くしようと、レバーをひねる。湯気の中で目を凝らすと、その目盛りはなんと70℃まであった。これじゃあ給湯器というより、ちょっとした湯沸かし器である。適温の湯を全身に浴びると、強ばった筋肉がほぐれていく。監禁されているというのに、こうして温かいシャワーを浴びていると、リラックスして安心すら覚えてくるのだから、豪胆というか能天気というか。 | <br> 僕は権田と入れ替わるようにして風呂に向かった。脱衣所で服を脱ぐと、権田の脱いだ服が棚にまとめて置かれていたから、その横に離して自分の服を置く。スライドドアを開いて風呂に入った。シャワーをひねると、さっきまで権田が使っていたからか、いきなり温水が出た。もう少し湯を熱くしようと、レバーをひねる。湯気の中で目を凝らすと、その目盛りはなんと70℃まであった。これじゃあ給湯器というより、ちょっとした湯沸かし器である。適温の湯を全身に浴びると、強ばった筋肉がほぐれていく。監禁されているというのに、こうして温かいシャワーを浴びていると、リラックスして安心すら覚えてくるのだから、豪胆というか能天気というか。 | ||
<br> | <br> 職務中の警官が消えたのである。今頃、巡査部長が異変に気づいて、外は大騒ぎになっているだろう。しかし、こうしていると、監禁されているという実感はどうしても希薄で、そんな自分が逆に不安になってくる。冷静沈着な権田が共にいるというのも大きいのだろう。もし一人きりで閉じ込められていたら、恐怖に襲われて圧し潰されていたかもしれない。 | ||
<br> 風呂の中に、椅子や風呂桶は無かった。ボディソープやシャンプーを使おうとして気づいたが、ボトルが重い。これも鉄製だろうか。おそらく倉庫にあったものも同じなのだろう。中身は至って普通のようだ。小さな剃刀もあったので、それで髭を剃る。この剃刀も鉄製なのか、大きさの割に重量がある。髭の伸び方からして、地下のパブで攫われてから一日は経っていないようだ。僕たちは、攫われたその日のうちにここへ運ばれたということか。襲撃を受けてから、案外数時間しか経っていないかもしれない。 | <br> 風呂の中に、椅子や風呂桶は無かった。ボディソープやシャンプーを使おうとして気づいたが、ボトルが重い。これも鉄製だろうか。おそらく倉庫にあったものも同じなのだろう。中身は至って普通のようだ。小さな剃刀もあったので、それで髭を剃る。この剃刀も鉄製なのか、大きさの割に重量がある。髭の伸び方からして、地下のパブで攫われてから一日は経っていないようだ。僕たちは、攫われたその日のうちにここへ運ばれたということか。襲撃を受けてから、案外数時間しか経っていないかもしれない。 | ||
<br> 欲を言えば湯舟につかりたかったが、今日はやめておこう。そう考えてから、ここに明日以降もいることを想定している自分に気づき、驚いた。ここが安全な場所とはまだ限らないのだ。気分を変えるために顔に湯をかけ、僕は風呂から出た。棚の隅のタオルを取って、体を拭く。倉庫から持ってきた着替えは、誰も袖を通していない新品らしく、心地良い肌触りだった。薄いTシャツとトレーニングパンツ。何となく外部から助けがくることはないと思い込んでいたが、もし今助けが来たら、くつろいでいるようにしか見えないだろうな、と一人苦笑する。 | <br> 欲を言えば湯舟につかりたかったが、今日はやめておこう。そう考えてから、ここに明日以降もいることを想定している自分に気づき、驚いた。ここが安全な場所とはまだ限らないのだ。気分を変えるために顔に湯をかけ、僕は風呂から出た。棚の隅のタオルを取って、体を拭く。倉庫から持ってきた着替えは、誰も袖を通していない新品らしく、心地良い肌触りだった。薄いTシャツとトレーニングパンツ。何となく外部から助けがくることはないと思い込んでいたが、もし今助けが来たら、くつろいでいるようにしか見えないだろうな、と一人苦笑する。 | ||
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<br>「だから言ったでしょう。とてもやろうとは思えない方法だと」 | <br>「だから言ったでしょう。とてもやろうとは思えない方法だと」 | ||
<br> 権田は絶句していた。僕は開き直ったように、極力あっけらかんと言った。 | <br> 権田は絶句していた。僕は開き直ったように、極力あっけらかんと言った。 | ||
<br> | <br>「けど、脱出に必要かなんて関係なく、僕が我慢できた気はしませんね。何せ、こんなに可愛い人と二人っきりなんですから」 | ||
<br> | <br>「かわっ……そんな……」 | ||
<br> 権田の整った顔が赤く染まったのが、闇の中でも見えた。思わず僕は権田の両肩を掴んで、マットレスに押し倒す。ボブカットの黒髪がふわりとシーツに広がり、ぱっちりした両眼が驚きに揺れる。いくら鍛え上げているとはいえ女の細腕では、同じく警察官の僕を押し退けることはできない。僕は、権田の腰にまたがった。権田が小さく声を洩らす。マットレスが軋み、薄着の下の乳房が魅力的に揺れる。 | <br> 権田の整った顔が赤く染まったのが、闇の中でも見えた。思わず僕は権田の両肩を掴んで、マットレスに押し倒す。ボブカットの黒髪がふわりとシーツに広がり、ぱっちりした両眼が驚きに揺れる。いくら鍛え上げているとはいえ女の細腕では、同じく警察官の僕を押し退けることはできない。僕は、権田の腰にまたがった。権田が小さく声を洩らす。マットレスが軋み、薄着の下の乳房が魅力的に揺れる。 | ||
<br>「これが、脱出する唯一の方法なんです。……先輩、いいですか?」 | <br>「これが、脱出する唯一の方法なんです。……先輩、いいですか?」 | ||
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|style="text-align:right | |style="text-align:right"|『セックスしないと出られない部屋』了 | ||
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