「利用者:Notorious/サンドボックス/コンテスト」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
56行目: 56行目:
大正元年、発明家の師田俊勝は、舌助の逸話を聞いて興味を持ち、いまさらを自作して食べてみた。その結果、猛烈な腹痛に苦しみ、四日後に死亡した。遺体を解剖してみると、腸に謎の大量の顆粒が詰まり、腸閉塞を起こしていた。<ref>なお、「普通にサンドバッグが入ってたからじゃね?」とか言ってる阿呆もいる。</ref>
大正元年、発明家の師田俊勝は、舌助の逸話を聞いて興味を持ち、いまさらを自作して食べてみた。その結果、猛烈な腹痛に苦しみ、四日後に死亡した。遺体を解剖してみると、腸に謎の大量の顆粒が詰まり、腸閉塞を起こしていた。<ref>なお、「普通にサンドバッグが入ってたからじゃね?」とか言ってる阿呆もいる。</ref>


昭和2年、料理研究家の佐藤一郎は、いまさらのレシピを再現して門弟に振る舞った。その結果、部屋が突如として謎の大爆発を起こし、佐藤を含む全員が死亡した。<ref>なお、「普通に50mm擲弾筒が入ってたからじゃね?」とか言ってる頓珍漢もいる。</ref>
昭和2年、料理研究家の佐藤一郎は、いまさらのレシピを再現して門弟に振る舞った。その結果、部屋が突如としてなぜか蜂の巣となり、佐藤を含む全員が死亡した。<ref>なお、「普通に機関銃が入ってたからじゃね?」とか言ってる頓珍漢もいる。</ref>


昭和22年、東京の基地に駐屯していた米兵のジョージ・カーターは、仲間との賭けビリヤードに負け、いまさらを食べさせられた。その結果、ジョージは謎の内臓破裂を起こして死亡した。<ref>なお、「普通に三階フロアが入ってたからじゃね?」とか言ってる唐変木もいる。</ref>
昭和22年、東京の基地に駐屯していた米兵のジョージ・カーターは、仲間との賭けビリヤードに負け、いまさらを食べさせられた。その結果、ジョージは謎の内臓破裂を起こして死亡した。<ref>なお、「普通に三階フロアが入ってたからじゃね?」とか言ってる唐変木もいる。</ref>
200行目: 200行目:


===調達===
===調達===
3月2日当日、服毒自殺最大の障害・品瀬琢内を遠ざけるため、志仁田は一計を案じた。早朝、志仁田は品瀬に一通のメールを送った。そのメールには一枚の写真が添付されており、それはコルコバードの丘をバックに、丸々と肥えたフグを両手で掲げ持ち笑う、セーター姿の志仁田の写真であった。それを見た品瀬は15秒後にはタクシーを捕まえて空港へと急がせていた。しかし、その写真は、この前その辺のスタジオで撮った志仁田の写真にネットで拾ってきたリオの画像を合成したものだった。隕石騒動のとき品瀬を騙した経験から、志仁田は品瀬を遠ざける完璧な方法を思いついていたのだ。経由地のダラスからとんぼ返りしても、日本に帰ってくるまで二日近くかかる。今日の自殺は、品瀬のいないところで邪魔されることなく果たせるのだ。品瀬の乗った飛行機が羽田を発ったのを確認してから、志仁田はいまさらの制作に取り掛かった。志仁田は最大の障壁をさっさと除くことに成功したのである。
3月2日当日、服毒自殺最大の障害・品瀬琢内を遠ざけるため、志仁田は一計を案じた。早朝、志仁田は品瀬に一通のメールを送った。そのメールには一枚の写真が添付されており、それはコルコバードの丘をバックに、丸々と肥えたフグを両手で掲げ持ち笑う、セーター姿の志仁田の写真であった。それを見た品瀬は15秒後にはタクシーを捕まえて空港へと急がせていた。しかし、その写真は、今さっきタイマー機能で撮影した志仁田の自撮りにネットで拾ってきたリオの画像を合成したものだった。隕石騒動のとき品瀬を騙した経験から、志仁田は品瀬を遠ざける完璧な方法を思いついていたのだ。経由地のダラスからとんぼ返りしても、日本に帰ってくるまで二日近くかかる。今日の自殺は、品瀬のいないところで邪魔されることなく果たせるのだ。品瀬の乗った飛行機が羽田を発ったのを確認してから、志仁田はいまさらの制作に取り掛かった。志仁田は最大の障壁をさっさと除くことに成功したのである。


実は、志仁田はこの日、あまり調子が良くなかった。遍く外力を弾き飛ばす無敵コンディションみたいな今までの体調ではなく、なぜか自分が急に脆弱になったような心地を覚えていた。その理由はわからなかったが、なんにせよ好機であった。今日なら、いまさらの力を借りて、死ねる気がする。志仁田は全身全霊をもっていまさらを作り、最後の、きっと最期の、自殺を成し遂げようと決意した。
実は、志仁田はこの日、あまり調子が良くなかった。遍く外力を弾き飛ばす無敵コンディションみたいな今までの体調ではなく、なぜか自分が急に脆弱になったような心地を覚えていた。その理由はわからなかったが、なんにせよ好機であった。今日なら、いまさらの力を借りて、死ねる気がする。志仁田は全身全霊をもっていまさらを作り、最後の、きっと最期の、自殺を成し遂げようと決意した。
222行目: 222行目:
毒殺魔はミミイカとあん肝を買いに、鮮魚店へと向かっていた。どうせなら常備している毒物ストックからトリカブトをすぐに渡してあげたかったが、あの子がそこに集まった人々に適当に買うものを割り振ったので、仕方がない。毒殺魔は豊洲の方へ出張っていき、やがて青臭さに満ちた魚屋にたどり着いた。そこのおっちゃんに聞くと、ミミイカはないがアオリイカならあると熱弁され、結局押し切られて活きのいいアオリイカを買わされてしまった。それとアンコウも購入し、毒殺魔の習性でついついアカエイとかを探してしまったが、鮮度のいいうちに帰らねばと我に返って駅へと向かった。しかし、その背後を足音もなくついてくる影に、毒殺魔はまだ気づいていない。
毒殺魔はミミイカとあん肝を買いに、鮮魚店へと向かっていた。どうせなら常備している毒物ストックからトリカブトをすぐに渡してあげたかったが、あの子がそこに集まった人々に適当に買うものを割り振ったので、仕方がない。毒殺魔は豊洲の方へ出張っていき、やがて青臭さに満ちた魚屋にたどり着いた。そこのおっちゃんに聞くと、ミミイカはないがアオリイカならあると熱弁され、結局押し切られて活きのいいアオリイカを買わされてしまった。それとアンコウも購入し、毒殺魔の習性でついついアカエイとかを探してしまったが、鮮度のいいうちに帰らねばと我に返って駅へと向かった。しかし、その背後を足音もなくついてくる影に、毒殺魔はまだ気づいていない。


漁師の息子はサンドバッグを入手するために、ジムへと向かっていた。どうせならお父さんの獲ってくるイカやアンコウをあのお姉さんに食べさせてあげたかったが、お姉さんがそこに集まった人々に適当に買うものを割り振ったので、仕方がない。彼は、近くのスポーツジム跡へと足を向けた。そこにはかつては使われていたトレーニング器具が放置されており、たまに友達と遊んだりしていた。そこに黒くて彼くらいの大きさがあるサンドバッグが落ちていた。彼はそれを持っていこうとしたが、存外にそれは重くてなかなか運べない。彼は気合いを入れてサンドバッグの端を持ち上げ、引きずり始めた。筋力が鍛えられているのか、だんだん運ぶのが楽になっていくのに手応えを感じながら、彼は河川敷へと少しずつ少しずつ戻っていった。
漁師の息子はサンドバッグを入手するために、ジムへと向かっていた。どうせならお父さんの獲ってくるイカやアンコウをあのお姉さんに食べさせてあげたかったが、お姉さんがそこに集まった人々に適当に買うものを割り振ったので、仕方がない。彼は、近くのスポーツジム跡へと足を向けた。そこにはかつては使われていたトレーニング器具が放置されており、たまに友達と遊んだりしていた。そこに黒くて彼くらいの大きさがあるサンドバッグが落ちていた。彼はそれを持っていこうとしたが、存外にそれは重くてなかなか運べない。彼は気合いを入れてサンドバッグの端を持ち上げ、引きずり始めた。筋力が鍛えられているのか、だんだん運ぶのが楽になっていくのに嬉しさを感じながら、彼は河川敷へと少しずつ少しずつ戻っていった。


サンドバッグマイスターは和傘を買いに、海外客向けの雑貨店へと向かっていた。どうせなら利きサンドバッグの技倆を存分に生かし最上級のサンドバッグをあのヒーローにあげたかったが、彼女がそこに集まった人々に適当に買うものを割り振ったので、仕方がない。和傘なんて使っている日本人は舞妓さんくらいしかいないが、外国人には人気の土産になっているとサンドバッグマイスターは知っていた。果たせるかな、当たりをつけた雑貨店には鞠を回せそうな和傘が売っていた。サンドバッグマイスターは自らの慧眼に惚れ惚れとしながら、「雨に唄えば」みたいに軽く踊りつつ復路についた。
サンドバッグマイスターは和傘を買いに、海外客向けの雑貨店へと向かっていた。どうせなら利きサンドバッグの技倆を存分に生かし最上級のサンドバッグをあのヒーローにあげたかったが、彼女がそこに集まった人々に適当に買うものを割り振ったので、仕方がない。和傘なんて使っている日本人は舞妓さんくらいしかいないが、外国人には人気の土産になっているとサンドバッグマイスターは知っていた。果たせるかな、当たりをつけた雑貨店には鞠を回せそうな和傘が売っていた。サンドバッグマイスターは自らの慧眼に惚れ惚れとしながら、「雨に唄えば」みたいに軽く踊りつつ復路についた。
232行目: 232行目:
ミリオタの男はゴールボールを買いに、スポーツ用品店へと向かっていた。どうせなら界隈民御用達のミリタリー関係のセカンドショップをあの女子に紹介したかったが、あの女子がそこに集まった人々に適当に買うものを割り振ったので、仕方がない。ゴールボールを買ってこいと言われたときは「スポーツを⁈」と驚いたが、買えるからには使われるボールのことだろう。慣れない歩行で滝のように流れる汗を拭い拭い、到着した店ではしかし、ゴールボールは売っていなかった。まあそこまで一般人に膾炙した競技じゃないしなあと思いつつ、落胆を隠せなかった男に、店主は声をかけてきた。事情を知った老齢の店主は、男に孫の話をし始めた。
ミリオタの男はゴールボールを買いに、スポーツ用品店へと向かっていた。どうせなら界隈民御用達のミリタリー関係のセカンドショップをあの女子に紹介したかったが、あの女子がそこに集まった人々に適当に買うものを割り振ったので、仕方がない。ゴールボールを買ってこいと言われたときは「スポーツを⁈」と驚いたが、買えるからには使われるボールのことだろう。慣れない歩行で滝のように流れる汗を拭い拭い、到着した店ではしかし、ゴールボールは売っていなかった。まあそこまで一般人に膾炙した競技じゃないしなあと思いつつ、落胆を隠せなかった男に、店主は声をかけてきた。事情を知った老齢の店主は、男に孫の話をし始めた。


ゴールボール好きの女性は自学帳を買いに、文房具店へと向かっていた。どうせなら視覚障害者の仲間とやっているゴールボール同好会の備品を貸してあげたかったが、志仁田さんがそこに集まった人々に適当に買うものを割り振ったので、仕方がない。白杖をつきながら、歩き慣れた歩道をゆっくりと進む。しかし近頃周りの景色がめっきり変わってしまったので、油断はできない。だがどうやら目当ての文房具店にたどり着いたようで、彼女は初めて店内に足を踏み入れた。すると店員らしき若い男性の声がし、ノートが一冊欲しいと話すと、一瞬奥に引っ込むとすぐに持ってきてくれた。女性は代金を払い丁重に礼を言うと、店を辞した。そして、来た道を往路と同様、慎重に戻っていった。その後、若い男性がどうも嫌な感じの笑い声を上げたが、彼女の耳には届いていない。
ゴールボール好きの女性は自学帳を買いに、文房具店へと向かっていた。どうせなら視覚障害者の仲間とやっているゴールボール同好会の備品を貸してあげたかったが、志仁田さんがそこに集まった人々に適当に買うものを割り振ったので、仕方がない。白杖をつきながら、歩き慣れた歩道をゆっくりと進む。しかし近頃周りの景色がめっきり変わってしまったので、油断はできない。だがどうやら目当ての文房具店にたどり着いたようで、彼女は初めて店内に足を踏み入れた。すると店員らしき若い男性の声がし、ノートが一冊欲しいと話すと、一瞬奥に引っ込むとすぐに持ってきてくれた。女性は代金を払い丁重に礼を言うと、店を辞した。そして、来た道を往路と同様、慎重に戻っていった。その後、若い男性がどうも嫌な感じの高笑いを上げたが、彼女の耳には届いていない。


公立中学校に通う男子は、そこらへんを足速に歩き回っていた。どうせなら今も持っている自学帳をあのお姉さんにあげたかったが、お姉さんがそこに集まった人々に適当に買うものを割り振ったので、仕方がない。その日は休日だったが、口うるさい親にせっつかれ、図書館へと勉強しに出かけたのだ。スマホは親に預けさせられ、勉強用具と最低限の貴重品だけを入れた肩掛けバッグを持ち、しかしなんとも気が向かないので川辺をぶらぶらしていたところで、世界を救った有名人に会ったのだ。だが、買い物もせずせかせかと歩いては人と肩をぶつけてしまい小声で謝ることを繰り返しているのには、わけがあった。三階フロアは手に入らないが、でも仕方ない。時間を適当に潰して戻ろう。このカードさえ返せば大丈夫だよな。だって……
公立中学校に通う男子は、そこらへんを足速に歩き回っていた。どうせなら今も持っている自学帳をあのお姉さんにあげたかったが、お姉さんがそこに集まった人々に適当に買うものを割り振ったので、仕方がない。その日は休日だったが、口うるさい親にせっつかれ、図書館へと勉強しに出かけたのだ。スマホは親に預けさせられ、勉強用具と最低限の貴重品だけを入れた肩掛けバッグを持ち、しかしなんとも気が向かないので川辺をぶらぶらしていたところで、世界を救った有名人に会ったのだ。だが、買い物もせず俯いてせかせかと歩いては人と肩をぶつけてしまい小声で謝ることを繰り返しているのには、わけがあった。三階フロアは手に入らないが、でも仕方ない。時間を適当に潰して戻ろう。このカードさえ返せば大丈夫だよな。だって……


マンション王はYSー11を買いに、コンビニへと向かっていた。どうせなら自分が所有するマンションの三階フロアを少女風ちゃんに提供したかったが、そうはいかなかったので仕方がない。それにしてもYSなんとかってなんなんだろう。知らないがとりあえずコンビニに来たんだからどうにかなるだろう。自覚はないが、マンション王は不動産収入だけで生きてきたため、市井のことに疎かった。ともかく、早速レジの爺さんに聞いてみると「それはとっくのとうに生産終了しとるよ」と言われてしまった。生産終了しているならどうしようもない。中古品を手に入れられるだろうか、いや限られた時間では厳しいか、などと考えるマンション王の前に、一つの値札があるのに気づいた。それを見た瞬間、マンション王は確信した。なんとかかんとかは生産終了したが、後継商品が発売されていたのだ! これを買っていこう! 
マンション王はYSー11を買いに、コンビニへと向かっていた。どうせなら自分が所有するマンションの三階フロアを少女風ちゃんに提供したかったが、そうはいかなかったので仕方がない。それにしてもYSなんとかってなんなんだろう。知らないがとりあえずコンビニに来たんだからどうにかなるだろう。自覚はないが、マンション王は不動産収入だけで生きてきたため、市井のことに疎かった。ともかく、早速レジの爺さんに聞いてみると「それはとっくのとうに生産終了しとるよ」と言われてしまった。生産終了しているならどうしようもない。中古品を手に入れられるだろうか、いや限られた時間では厳しいか、などと考えるマンション王の前に、一つの値札があるのに気づいた。それを見た瞬間、マンション王は確信した。YSなんとかは生産終了したが、後継商品が発売されていたのだ! これを買っていこう! 


飛行機大好き少女はゴマドレッシングを買いに、スーパーへと向かっていた。どうせならパパにねだって買ってもらった[https://ja.wikipedia.org/wiki/YS-11 YS-11]の模型をあのお姉ちゃんに貸してあげたかったが、お姉ちゃんがそこに集まった人々に適当に買うものを割り振ったので、仕方がない。だいぶ綺麗になった道を自転車で走り、駐輪場で愛車を停める。足元に気をつけながら入店すると、慣れた足取りでゴマドレをゲットした。少女はおつかいを何度も経験している手練れであるゆえ、なんとセルフレジで会計を済ませ、自転車の籠にゴマドレを入れて河川敷へと戻っていった。おつかいを済ませたら、ママとパパにあのお姉ちゃんが川辺で何かしているよって教えてあげようと思いながら。
飛行機大好き少女はゴマドレッシングを買いに、スーパーへと向かっていた。どうせならパパにねだって買ってもらった[https://ja.wikipedia.org/wiki/YS-11 YS-11]の模型をあのお姉ちゃんに貸してあげたかったが、お姉ちゃんがそこに集まった人々に適当に買うものを割り振ったので、仕方がない。だいぶ綺麗になった道を自転車で走り、駐輪場で愛車を停める。足元に気をつけながら入店すると、慣れた足取りでゴマドレをゲットした。少女はおつかいを何度も経験している手練れであるゆえ、なんとセルフレジで会計を済ませ、自転車の籠にゴマドレを入れて河川敷へと戻っていった。おつかいを済ませたら、ママとパパにあのお姉ちゃんが川辺で何かしているよって教えてあげようと思いながら。
244行目: 244行目:
河川敷には多くの人が見物に来ていた。中にはカメラを構えて何事か話している者もいる。しかし、志仁田は意に介することなく、堤防を下りていった。そこには大きな机と調理用具一式、小型発電機に繋がれた冷蔵庫までもが用意されていた。手伝いを頼んだ人々が事前に準備を進めてくれていたのだ。
河川敷には多くの人が見物に来ていた。中にはカメラを構えて何事か話している者もいる。しかし、志仁田は意に介することなく、堤防を下りていった。そこには大きな机と調理用具一式、小型発電機に繋がれた冷蔵庫までもが用意されていた。手伝いを頼んだ人々が事前に準備を進めてくれていたのだ。


各人が入手した具材は、冷蔵保存が必要なら冷蔵庫の中に、そうでなければ机に置かれるシステムになっていた。志仁田はそれを確認すると、自らの戦利品を机の上に置いた。そして、家庭科の授業で作ったエプロンを着けると、いまさらの制作に取り掛かった。
各人が入手した具材は、冷蔵保存が必要なら冷蔵庫の中に、そうでなければ机に置かれるシステムになっていた。いくつかの具材に必要な事前の調理も、親切な人々が済ませてくれていた。志仁田はそれを確認すると、自らの戦利品を机の上に置いた。そして、家庭科の授業で作ったエプロンを着けると、セーターの袖をまくり、いまさらの制作に取り掛かった。


===調理===
===調理===
<big>①材料を全部皿にぶち込む ②完成!!!</big>
<big>①材料を全部皿にぶち込む ②なんか物足りないからついでに持ってきたフグも一匹追加しちゃおう! ③完成!!!</big>


===実食===
===実食===
わずか10分足らずで、忌まわしきサラダは完成した。周りに集まっていた人々からは、歓声ともどよめきともつかぬ声が上がった。
フグの処理も含めて、わずか10分足らずで忌まわしきサラダは完成した。周りに集まっていた人々からは、歓声ともどよめきともつかぬ声が上がった。もちろん志仁田はフグ調理の初心者であるが、命を顧みぬ自信満々の包丁捌きがあまりに堂々としていたため、民衆が志仁田の技巧を疑うことはなかった。
 
買い物を手伝っていた人々でさえ、その当初は志仁田が何を作ろうとしているのかわかっていなかった。しかし、一部の観衆がいまさらを知っていて、志仁田の作るこの料理が何であるかを、もはやその場の皆が知っていた。人々は得体の知れない緊張に襲われたが、当の志仁田は意に介していない。
 
出来上がったいまさらは大皿に盛られていた。志仁田は徐にエプロンを外すと、着席した。箸を取り、手を合わせる。そして志仁田はいまさらを食べ始めた。観衆は静まり返り、ただ志仁田がいまさらを咀嚼する音だけが響いた。誕生して一世紀余、無数の命を奪ってきた呪いの料理。それに、地球を救った英雄が挑んでいる。ここにきて、人々は志仁田の意図を悟った。彼女は、自らを以て、この忌まわしき死の連鎖を止めようとしているのだ。最強の人間の矜持を懸けて、凶悪な陋習を打ち破り、皆に希望を与えようとしているのだ! 人々は息を呑みながらも、ある者は両手を合わせ、ある者は口の中で呟き、それぞれの形で志仁田の勝利を心から祈った。


==脚注==
==脚注==
<references/>
<references/>
2,077

回編集

案内メニュー