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 海面を走る波を抜けて、宇宙飛行士は海の中へと潜っていった。宇宙服が水の圧力を検知し、自動で内部の気圧を調整する。惑星に来てから毎日、宇宙飛行士はこうやって海底を探索していたが、ついに宇宙船は生命維持の最終日に至るまで見つからなかった。死への焦りと、浮島への忌避とで、宇宙飛行士はこの日海中を捜し続けるつもりだった。「太陽」の光が、
 海面を走る波を抜けて、宇宙飛行士は海の中へと潜っていった。宇宙服が水の圧力を検知し、自動で内部の気圧を調整する。惑星に来てから毎日、宇宙飛行士はこうやって海底を探索していたが、ついに宇宙船は生命維持の最終日に至るまで見つからなかった。死への焦りと、浮島への忌避とで、宇宙飛行士はこの日海中をどこまでも捜し続けるつもりだった。海を垂直に突き刺す「太陽」の光の帯が、深く水をかき分けるにつれ淀み、剥がれていく。磨りガラスを何枚も重ねたようにして、海中の黒い水が光を溶かす。ペンのインクの一滴も、恒星の分身の遥かな旅路も、海の内には平等に希釈され、深海の闇に塗りつぶされた。
 
 深く、深く。それは公園の砂場からコンクリートの底を暴き出すのに等しい、あるいは空気を掴んで空をよじ登ろうとするのにも似た、途方もない道のりだった。重い水の層を剥がし、その間に体を潜り込ませる。もはや宇宙飛行士には何も見えていない。深海を満たす虚空は、宇宙飛行士に恐怖を与えた。それは、何か未知の怪物が出てくるかもしれないというありきたりな恐怖ではなく、ただ純粋に、何も出てくることができない闇への本質的な恐怖だった。
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