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    なんでも
    ==なんでも==
    
    
    
    
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 中途半端に賢い人ほどプライドが高く傲慢になる。僕はまさにそれだ。
 中途半端に賢い人ほどプライドが高く傲慢になる。僕はまさにそれだ。
 
 
 
    ==なんでも5 倦怠と開花==
    
    
 日本人の幼児化
 第一世代→大人
 手塚治虫
 反戦・残酷
 第二世代(団塊世代を含む)→大学生(学生運動)
 白土三平
 梶原一騎
 反差別・反階級主義
 
 第三世代(第一オタク世界)
 Dr.スランプ 鳥山明
 阿久悠(あえての子供化)→純粋無垢最高論
 内面化
 第四世代(バブル崩壊90年代)→中学生
 スラムダンク
 フィクションの中の虚構
 第五世代(00世代)→小学生
 反知性主義(ただのアホ)
 麻酔コンテンツ→現実逃避
 滅んでいく世界
「社会的意識」よりも「わかりやすさ」の時代
 →z世代の諦観
 社会派
 社会派になりたい
 雨は次第に強くなり、生活の音は搔き消され、緑は風にちぎれ飛ぶ。曇り空から部屋に薄く明りがさす。ひとりの四畳半。弁当とペットボトル。床に洗濯物。もうすぐ動かなくなるスマートフォン。――朝川はやとって人
 確証バイアス
 気怠げな 午後の授業も おざなりに
 開襟シャツと 氷菓の木陰
「いい老け方したんだな」
 遺影の君は溢れるくらい朗らかに笑っていた。
「場数も馬力も違うから」
「ははっ、彼も馬力はあった気がしたけれど」
 車内は沈黙した。
 馬力……。彼の馬力……。彼のあの、溢れ出すような馬力はどこに消えてしまったのだろう。再びあの笑顔が脳裏にちらつく。
 愚痴のアウトプットをやめて、他の知識のアウトプットをしようではないか。
 脳まで囚われるな。やめよう。
 自分だけが違うという強烈で無根拠な自信こそ俺の個性では無いか。
 秘歓
 23
 あとがき
 僕らの顔の前には、四角いまたは立体構造になるように作られた布やプラスチックやビニールやらでできたものが張り付いている。これは今の社会には必須の道具で、僕もそれを否定したりはしない。きっと必要な物だ。
 だがしかし、これが僕らから奪っていったものがある。それだけは確かだ。それを必要以上に嘆いて、批判したりはしない。繰り返すが、これは必要なことだったからだ。それに、僕らの青春というのは、「それが奪った物を取り返す」というものに、もう既になってしまっている。
 「奪われた物を奪い返す」青春の本質とは、昔からそう相場が決まっている。よく考えたら、昔も今も変わっていないではないか。新しいテーマをくれたこの布切れにはむしろ賞賛すべきなのではないだろうか。変化なき者に訪れるのはつまらない死だけだ。僕は戦うよ。
 「時代のせいと諦めたらそこまで 踏み出さなくちゃ何も始まらない」これは僕が大好きな歌の一節だ。僕らは生まれた時代を嘆きすぎだ。今の僕らは人類史に見ても最も幸福な世代であるといえる。そしてそれが今までにないほど深い、新たな悲劇を生み出している。しかしそれを嘆くだけじゃ、絶対にだめだ。君も戦うんだ。
 夕立の雨粒は黄金色だ。
 僕はこの文章の中で、幾つも嘘をついてきた。実は、これは本当の話である。僕は友人をあだ名で呼ぶし、童貞は華麗に捨てたし、自分で信じているくらい天才だ。
 現実に起きてることってのは、君の前にも現れることがあるってこと。
 現代に生きる我々は、もうドラマティックに死ぬことができなくない――リルケ
 自分が死ぬと決まっている幸福。
 私の怠惰を、虚勢を、全く中身のない虚な言葉を、見抜いてはくれないか?
 盗まれた自転車が見つかったのは有名な自殺スポットだった。残された手紙から、自転車泥棒の女の子の軌跡を巡る旅が始まる。
 愛してるわ
 もう苦しまなくていいの
 本物の子供達が待ってるわ。
 列車を待ってる
 遠くへ向かう列車を
 望む場所へ行けるけど、
 どこかはわからない
 でも構わない
 2人は一緒だから
『インセプション――モル』
 確実にこいつ、タイムリープしてる?!?!
 若者よ。若くあれ。
 青く燃える炎であれ。
 台風。
 落ちてた彼氏の服を着て、二人でコンビニに行く。午前二時。
 花火の音だけが聞こえる。どこで上がってるのだろう。
 
 
 フェンスの向こう側で、フェリーが幾千の牛群のような声をあげて出港した。それは生物と無生物とが粉々になって、入り混じってしまうくらいの振動を伴っている。海鳥が二羽、筋のような雲に沿って工場地帯に飛んでいく。港に人は居ない。
 そこにはただ日没前の静けさが存在している。
 濃い潮の匂いがする。油ぎった水面に浮かぶペットボトルと、側に繋がれた小船が同じリズムで揺れる。波の音は絶え間なく心のかけらを攫う。死神がどこからともなく現れる。フェリーが熱したガラスのような色をした水平線を跨いで行ってしまうまで、僕はたっぷりと時間をかけてそれを見詰めた。
 生臭く、温い風が吹いてきた。フェンスの間から見える海は豊かな殺気で満ちている。今にも僕を殺そうと必死だ。僕は死神に聞く。
「どうして海はこんなに僕を殺したがるのだろう。僕は海に何か悪いことをした訳ではない」死神は言った。
「お前に苦しんでほしくないからだ。人がゴギブリに毒をかけて殺すみたいにな。それにもうすぐ夕立が来る。酷い夕立だ。夕立に海が殺気立つのは、当たり前のことだろう」
 死神はホルダーに残されたトイレットペーパーの芯のようなからからとした声で笑った。
「ゴギブリなんか殺しはしないよ」
 ゴキブリなんか殺さない。
 フェンスから手を離し、もう見るものなどない海に背を向け、僕は歩き始めた。
 足もとには、海沿いに生える葉に棘のある草が生えている。葉の表面には白い塩が吹いている。港に隣接する海洋公園の広場では若者たちがリズミカルな音楽をかけてスケートボードに乗っている。
 公園から駅までは繁華街になっていた。観光客で賑わう大通りから一つ二つ道を逸れれば、喧騒は殆ど聞こえなくなり、代わりに沢山の人の囁き声でできたような静寂が支配した、入り組んだ細い路地に入る。そこでは皆が遥か遠くに来てしまったように錯覚する。
 歩き出して数分もすれば日は完全に沈み終え、先刻まで真っ赤だった空にも静脈血のように暗い影が落ちた。路地の空気には、安い香水と吐瀉物が入り混じって希釈されたような、艶やかな香りが混ざりだした。
 暫くすると、死神の言う通り夕立が僕らを襲った。
 あっという間に地面は濡れ、マンホールの窪みに溜まった水が、光り出したネオンの赤と緑を反射し始めた。
 向こうから、溢れそうなホットパンツの女が水滴を散らして駆けて行く。羽振の良さそうなスーツ姿の男がドアから出てきて、店のシャッターを押し上げる。少し先では、高校生くらいの女の子が店の軒下で体育座りをしながら、隠れるようにタバコを吸っている。その煙は緩やかな螺旋を描いて燻り、空気に溶けていく。タバコの先はオレンジに光っている。それは、炎天下の運動場で手を太陽に透かした時のオレンジだった。血液が激しく巡る身体を、更に強い光で貫いた時の色だ。
 その情熱的な光に魅せられて、優しく降る雨の中僕は思わず足を止めた。少女は立ち止まって執拗に見詰めてくる少年に向かって怪訝な表情をし、責めるようにタバコを思いっきり深く吸い上げた。そして短くなったそれを濡れた地面へ投げ捨てた。
 光が放物線を描く。刹那、世界の動きが極端に鈍くなり、雨の雫が空間に浮かんで、周りを埋め尽くした。あの煩い静寂が逃げ出すように去り、無音の世界が幕を開ける。煙がくっきりとした形でそこに存在している。少女はスローモーションのように長い時間をかけて瞬きをし、僕を一瞥する。光がゆっくりと地面に近づいていく。
 タバコが水に届いた瞬間、その希望の塊のようなオレンジが音を立てて消えた。同時に世界は閉じ、浮かんでいた雨が瞬く間に落ちていった。あの頭痛のするような静寂も再び戻って来る。
「何?」
 薄い髪色をの臍が見えるほど短いシャツを着た少女は、気怠げに言った。
「ああ、いや。なんでもない」
 足早に立ち去ろうとした僕の手を、立ち上がった少女は握った。すっと顔を近づけて、彼女は僕をじっくりと見つめた。繊細な睫毛に囲われた眼球に緑がかった僕が映る。
「ねえ、待って……。君、結構かっこいいよ。うん。かっこいい。……あのさ、私、今気分がいいんだよね。最近退屈してるし、今日、君ならこれだけでいいよ」
 人差し指と中指をぴんと伸ばした少女は、あのオレンジとは違った輝きを方をする目を細め、看板のネオンに照らされた顔を誘うように傾けた。そして体を寄せると、掴んだ僕の左手を、歳の割に悪くない大きさの胸に押し当てた。手の先から、彼女の温もりが伝わってくる。薬指が突起に当たり、彼女が態《わざ》とらしい声を出して笑う。抵抗せずにいた少年はひとつの事実に気がつく。少女は、紛れもなく生きている。それも少年を飲み込んでしまうくらいに激しく鮮烈に。少年はそれに、狂おしいほどの違和感を覚える。どうして海は僕を殺そうとして、このバカな女を生かしておくんだ? その違和感は源泉から津波のように押し寄せ、少年のダムは瞬く間に決壊する。
 気がつくと僕は左手で彼女を突き飛ばしていた。急に力をかけられた少女は小雨の降る地面に転がる。小ぶりな尻が地面に着地し、短いスカートが濡れ、小さな水飛沫が上がった。
 僕は走り出した。雨が瞼や、頰や、額や、鎖骨に降りかかる。
「待ってよ!」
 振り向くと、雨に濡れた少女が哀れな顔で座り込んでいるのが見えた。それを見て、僕は刹那の間に消えてしまったあの世界のことを思いだし、耐え難い喪失感を覚えた。僕はすぐに前を向いて、彼女から完全に逃れるために路地を駆け続けた。
 
 
 寂れたアーケード街へと入る。
 すっかり濡れてしまった髪と服からできるだけ水を切り、再び僕は歩き出した。随分走った後でも、不思議と疲れは感じなかった。それよりも夏の雨の、水分を含んだ陰湿な空気が体にまとわりつくことの方が、よっぽど不愉快だった。アーケード街は先程の路地ほどではないが、やはり人はまばらにしかいない。建ち並ぶ建物は皆シャッターを下ろしていて、まるで世界が僕らを拒絶されているように見えた。
 黄ばんだプラスチックの屋根を打つ雨の音は激しさを増し、すぐには止みそうになかった。
 死神はふと立ち止まると、右手にある暗い路地を見た。
 倣ってその路地を見ると、そこはどうやら食事屋の裏のようで、油に塗れた室外機の真下で汚い服の男が膝を抱え、顔面を両手で押さえて座っていた。髪の毛も疎で老人のように見えるが、本当の年齢は判別がつかない。そんな見た目をしていた。焦点の合わない充血した目の男は室外機から排出される熱く酷い匂いの空気の中、まるで体だけ雪山に取り残されているように震えていた。暫くしてうめき声を上げ吐瀉物を吐き出すと動かなくなった。
「彼を代わりに連れて行ってあげることはできないの?」足を止めて見ていた僕は聞いた。あの人は死んでる。どう考えても死んでいる。僕はそこに確かで暖かな安心感を覚えた。だから、連れて行けると僕は思う。そんな僕を死神は嘲けるように言う。
「あの男は悪人じゃないからな」
「そんなものかな」答えると、死神はどこかへ消える。
「確かに、本当に酷い夕立だ」
 誰にも聞かれることなく呟いた。
 
 
 アーケード街を抜けると駅はすぐそこだ。
 改札を抜けホームへ降りると、丁度電車が来たところだった。コンプレッサーが収縮する音と共に扉が開き、中から冷たい空気が流れ出す。蒸し暑い夏の空気が体から離れて、気分が少しずつ楽になっていく。しかし、あの奇妙な静寂だけは耳からこびりついて離れなかった。座席に座ってしばらくその静寂と相対するうちに、次第にその響きの奥からあの港の波の音さえ聞こえてくるような錯覚を覚えて、僕は強烈な吐き気を催した。
 いけない。他のことを考えるんだ。
 そう。家に帰る前にコンビニへ行こう。夕飯を買うんだ。家に帰ったらレコードを回そう。聞くなら六十年代のロックだ。この前階下の住人に文句を言われたから大音量では流さない。そうだ、どこかにヘッドフォンが仕舞ってあった。あれでじっくり聞こう。姉は帰ってきているだろうか。帰っていないで欲しい。最近彼女はめっきり帰って来ないからきっと大丈夫。寝る準備をして、歯を磨いて、
 これは自分と世界の健全な関係をしっかりと守るために、大事なことだ。死神はもうしばらく現れない。その間に早く眠ってしまおう。あいつの前では寝られないから。使い古して汚いけれど、寝心地だけは良いベッド。あのベッドで早く眠りたい。
 どれだけこれからのことを考えても、
 
 
 
 
 僕はじっと彼女の顔を見詰めていた。
 秒針が鳴らす規則的な音だけが部屋の中に響いていた。
 寝息は聞こえず呼吸による胸の動きも微かだから、僕は彼女が死んでしまっているように錯覚した。
 暫くして、時計が〇時を告げた。
 ベッドから起き上がると、裸にジーンズと薄いシャツを着る。
 目を覚ますためにカップに残っていたコーヒーを飲み、それをシンクに片付けた。
 ナイトテーブルに置いた財布を取ろうとした僕の腕を、彼女のひんやりとした手が掴んだ。
「私も行く」
 そう言うと彼女はベッドからするりと抜け出した。
 開け放った窓から入った月明かりが彼女の真っ白な身体を照らす。
「これ、履いていい?」
 僕が頷くと、彼女は落ちていた僕のトランクスを履いた。それから上にオーバーサイズのプルオーバーパーカーを着ると、満足げに僕の手を握った。
 コンビニへと向かう途中、僕はどうして彼女の家に居るのかを考えた。街灯が照らす彼女の顔を僕はちらりと盗み見た。
 彼女は確かに僕のガールフレンドで、アパートに泊まっていたのだった。
 彼女は同じ高校の一つ上の先輩で、最初は僕が彼女を好きになった。髪型が好みだったのだ。
 高校に入ってから、誰かを可愛いと思うのは初めてのことで、僕は接点のない彼女と半ば強引に仲を深めた。球技大会を期に頼み込んで連絡先を交換し、あまり恋愛事に興味の無さそうな彼女に幾つもアプローチをした。
 そんな彼女が薄着で僕の手を握り、真夜中、隣で歩いていることに僕は不思議な感覚を覚えた。
 
 
 
 何がすごいんだ? 難しい因数分解が解けたり、夏休みの課題を全て終えたり、そういうことができる方が、はるかに凄いことだと思っていた。
 
 僕は小さな頃から目が悪かった。海と空の区別さえつかないくらいの、ひどい近眼だ。だからちょうど、十年前の三月三十一日から分厚いおはじきのようなメガネを付けていた。そしてそれから、二〇二一年の十一月十一日まで、約八年と半年の間メガネと生きていたことになる。今思えばなかなかの物好きだが、それ以外に術が無かったのだからしょうがない。かくして、僕は今まで、レンズ越しの世界しかみてこなかったのだ。この特徴は良くも悪くも、僕に多大なる影響を与えた。常に僕と世界の入り込んだ羊膜のようなそれは、僕を静かに現実から遠ざけ、ひとつの固定された花園に隔離した。
 
 
 道に家を建てて一人で暮らす男。道を通る様々な旅人と時々交流しながら、ただひたすらに誰かを待っている。
 
 
 野球と言っても五人しかいないから、まともな野球ではない。ピッチャーとバッターとキャッチャーそして外野兼回収班が二人の、どちらかと言えばバッティングセンターのような遊びだった。それでも、ただ家で時間を潰すよりかはいくらかましだった。
 ただでさえ短い夏休みのど真ん中で、俺たちは刺激を求めていた。外で遊ぶには、少々蒸し暑過ぎる日だった。
 俺たちは朝から中学校の運動場へと出向き、野球をしていた。ただ家で時間を潰すよりかはいくらかましだったのだ。
 朝のうちは涼しかったが、太陽が昇ってくるとすぐに、耐え難い暑さが運動場を襲った。
 直射日光はじりじりと皮膚を焼き、温い風が砂埃を散らす。
 一人がマウンドに上がり、俺はバッターボックスについた。視線がちらりと交わる。一球目は外角に大きく外れるボール。二球目はあわやデッドボールの内角高め。野球部ではないから決して上手くない。その次の三球目だった。二球の失敗を気にしたのか、ストライクゾーンに入れることが目的で放られた、緩いボール。俺はそれを待っていた。
 重い感触と共に、小気味のいい音が響く。バットの芯がボールを捉えた音だ。それと同時に、キャッチャーをしていた奴が呟いた。
「あれ、やばくね」
 ボールは高く弧を描いて林の中へと飲み込まれていく。俺たちはすぐさまそれを追いかけたけれど、いくら探してもボールは見つからなかった。
 林の近くでは、蝉が、俺を責めるように鳴いていた。汗がつらりと首筋を流れた。
 その時、唐突に俺の頭に閃いたのが「プールへの侵入」だった。今考えると魔が刺したようにしか思えない。しかし、照りつく太陽、消えたボール、うるさい蝉の声、そして一生懸命にボールを探す四人の友人。その時の俺は、これらを全て解決するこの思いつきを、実践しないほかはなかった。俺たちはすぐにプールへと向かった。
 フェンスを掴み、俺たちは有刺鉄線を越えてプールに侵入した。針に掛かって少し怪我もしたが、目の前に湛えられた水はそんな痛みもすぐに掻き消してくれた。
 後は先生が知っている通りだ。警備員に見つかって逃走し、ばれて、今ここで反省文を読み上げている。
 俺は反省している。二度とこんなことはしないようにする。暑いからといって、ボールを無くしたからといって、ルールを侵し、たくさんの人に迷惑をかけたのはいけないことだ。本当に申し訳ない。
 
 
 
 
 
 僕はじっと彼女の顔を見詰めていた。
 秒針が鳴らす規則的な音だけが部屋の中に響いていた。
 寝息は聞こえず呼吸による胸の動きも微かだから、僕は彼女が死んでしまっているように錯覚した。
 暫くして、時計が〇時を告げた。
 ベッドから起き上がると、裸にジーンズと薄いシャツを着る。
 目を覚ますためにカップに残っていたコーヒーを飲み、それをシンクに片付けた。
 ナイトテーブルに置いた財布を取ろうとした僕の腕を、彼女のひんやりとした手が掴んだ。
「私も行く」
 そう言うと彼女はベッドからするりと抜け出した。
 開け放った窓から入った月明かりが彼女の真っ白な身体を照らす。
「これ、履いていい?」
 僕が頷くと、彼女は落ちていた僕のトランクスを履いた。それから上にオーバーサイズのプルオーバーパーカーを着ると、満足げに僕の手を握った。
 コンビニへと向かう途中、僕はどうして彼女の家に居るのかを考えた。街灯が照らす彼女の顔を僕はちらりと盗み見た。
 彼女は確かに僕のガールフレンドで、アパートに泊まっていたのだった。
 彼女は同じ高校の一つ上の先輩で、最初は僕が彼女を好きになった。髪型が好みだったのだ。
 高校に入ってから、誰かを可愛いと思うのは初めてのことで、僕は接点のない彼女と半ば強引に仲を深めた。行事を期に頼み込んで連絡先を交換し、あまり恋愛事に興味の無さそうな彼女に幾つもアプローチをした。
 そんな彼女が薄着で僕の手を握り、真夜中、隣で歩いていることに僕は不思議な感覚を覚えた。
 自分が自分で無いような、意識と肉体が存在するこの現実の事象が食い違っているような感覚だ。いや、それも違うかもしれない。例えると、胴体に殆どコミカルな風穴が空いていて、欠損しているような感覚に近い。僕は彼女だけを見ているから自分に空いた穴を直接は見ることができない。ただ少し足が軽いような気がするだけだ。
 銭湯を過ぎた角を曲がると、いつものコンビニが現れる。それは闇の中にぼんやりと光っていて、僕はなんだか自分が羽虫になった気がした。
 彼女はコーラと、僕のためのブラックコーヒーを小さなカゴに入れると、グミのコーナーに駆けて行って「どれにしようかな。これ、気になってるんだよね」と一人で盛り上がっている。僕はその間に彼女が持っていたカゴを奪うと、店を回りペヤングとコンドームと新作のハーゲンダッツを放り込んで、まだ可愛い顔をして悩んでいる彼女のもとに戻った。
「私これ気になるな」
 そう言って彼女はグミの袋に手を伸ばした。僕はそんな彼女が着ているプルオーバーパーカーの下からトランクスの隙間に手を潜め、彼女の柔らかな尻に爪を立てた。
 言葉にならない叫びを上げた彼女は驚いて僕を睨んだが、カゴに入ったコンドームを認めると更に赤面して、僕からカゴを奪うと、足早にレジへと歩いて行った。
 僕は彼女のそんな初心なところが好きだった。彼女は真面目で、初心でどこまで行っても清純だった。本当に僕のことを好きなのだろうか。
 
 モチーフ
 
 
 豊饒の海から生まれ変わったと信じる二人
 
 
 修辞を知らない探偵
 
 
 だから、僕は違う、僕という強者のための文学を書く。そう息巻いてペンを手にした十六歳の僕は、まず強くなる事に決めた。僕の理想において、まず初めに僕が強かに生きる圧倒的な強さを持つべきだ、そう考えたのは至極当然の成り行きだ。
 そう気づいた僕はそれから暫くの間、全くと言って良いほど行動を起こさなかった。目の前に横たわる巨大な壁に物怖じしていたからだろう。起こせなかったと言って良い。その時の僕はあまりにも弱く、その壁の前で寝返りを打つことさえ叶わなかったのだ。しかし、そんなふうにつまらない、グランジのような陰鬱な日常を無気力に送る裏側では、ゆっくりと強く早くなっていく鼓動と共に、六十年台ハードロックのイントロが徐々にボリュームを上げ始めていた。
 
 こんな夜は一人でいるより他はない。澪が目の前にいたら気が狂ってしまう。颯はそう思った。
 
 
「彼女には、お産を迎えた母のような優しさが備わってる」
 怜はそう思いつくと、汗ばんだ顔で微笑み、小脇に子供ーー彼の息子乃至娘ーーを抱える幸せの権化のような彼女の姿を想像するのであった。
「僕の子供を孕んで欲しい。産んで欲しい。二人で錯誤しながら家庭を築きたい」
 そんな種類の、至って細部まで純粋な欲求が彼の胸を貫いた。それは彼を再び酷い無力感で悶えさせた。
 怜はそれに対応しての反動形成的心の働きであるだろうが、そんな少年に特有の一種の虚勢として、想像した彼女の顔に文字通り母のようなつまらなさを発見することに成功した。恋愛的な波乱とは無縁のそれを見つけると、彼はこの馬鹿馬鹿しい妄想自体を笑い飛ばすことを試みるように、それを軽蔑するような考えを意識的に自分の中に創造した。
「そんなにつまらないことはない。彼女よりもっと魅力的な人は、それこそ公園の桜の花びらのように踏んでしまうほど居るはず。今の僕に彼女は似合わない。身を固めた後で出逢うべき相手だったのだな……」
 その後暫く怜の身体は射精したあとのような虚脱感に見舞われた。それは実にゆっくりと眠気と混じり合い、軈て彼の意識は海溝の底へと潜っていった。
 彼が自衛の為に創り出した下らない嘘は、長くの間に彼を苦しませる枷となるやも知れぬものであった。しかし、より浅はかな葛藤こそ真実の愛をより強固なものにするものであり、特にそれはこういった年頃において最も顕著に顕れる効果である。
 そういった点で、図らずも彼は恋愛行動の初動に潜む巧妙な罠を一つ飛び越えたのだ。
 彼が意識し得ぬところで彼はそれをやんわりと知覚していた。そういった予感は眠りから覚めた後も、至る所で顔を覗かせた。そしてその予感が確信に変わるのは、再び彼女と顔を合わせた、それから数日後のことである。
 
 
 
 
 丹田の奥に蔓延り、幾度と無く主張を繰り返す情熱を、すっかり火照ってしまった頬を、颯は冷え冷えとしたこの夜に諫めて貰うことを期待して、ベッドに腰掛けながら唯只管に思考を巡らせた。
 幾つもの小宇宙が生まれ消えゆくのを、颯は月下の白い暗闇の中で知覚した。まるで蓮の蕾が開き、真っ白な花が咲き乱れ、そして朽ち果ててゆく様を早送りで見ているかのようだった。
 そして、夜の鱗粉に包まれた静寂が寝台列車の一室に舞い降りる。その静寂は颯に一つの変え難い運命を告げる。
 来ないでくれ! ああ、返事をしてはいけない!
 少年は叫んだ。忌わしい、茉莉花の薫りのする静寂を、淡い紫に染まる静寂を、切り裂き脱出する為に。
 静寂はそれを難なく眠らせることに成功した。それとは別に燻り続けていた、37.5度の熱を帯びた情熱が少年の口を後ろから噤んでしまったからだった。
 ドアを叩く音が颯の部屋に響いた。
 新たなベールが部屋全体を覆い、少年はまた一段と深い覚醒に落ちた。
「颯?」
 心臓が早鐘を打つ。耳の側を通る血管が、汽笛と紛うくらいに音を立てている。
 
 
 
 
 
 颯が澪の腹についた精液を拭いている間、澪は彼のされるがままにぐったりとしていた。しかし彼女の瞳に浮かんだ涙は、恍惚の光を灯し続けていた。二人の身体はパンを焼き上げたばかりのオーブントースターのように火照り、コーヒーに注いだミルクのようにどこまでも混じり合っていた。
 
 
 
 
 
 
 無理数的宇宙観
 思考(創作物)は世界の観測
 我々の世界において存在=知覚である。
 観測(思考・創作・内面への探究)=存在の創造=我々のこの世界においてのその世界の創造
 ・強烈に認識している自我が消滅するとは思えない。
 ・死を境目として自我が何らかの性質変化が訪れるに過ぎないという確信に近い予感。
 ・自分の思考(創作物)はどこかで、宇宙の内外を論外として存在しているという感覚。世界への認識。
 ・この世界はどこまでも広く、全てが存在し得るという認識。
 
 自我は消滅しない。
 
 皆さんは死をどう捉えていますか?
 死んだら何もなくなる? 天国、又は地獄へ行く?
 きっとこれも人それぞれだと思います。
 というか、そもそも真剣に考えた事がある人さえ、少ないと思います。そこで、今日は僕が新しい世界の見方。世界観の提案をしたいと思います。
 それは、20世紀のイギリスで生まれた「無理数的宇宙観」です。元は中央アジア付近の思想が元になっていると言われています。この世界観において、世界はどこまでも広く、あらゆる事象が既に起きています。その中で我々の自我というものは肉体と結びつきながらもあらゆる世界を観測する道具と定義されます。自我というものが時空を超えて世界を知覚するのです。
 つまり、私たちの精神活動の副産物である創作活動の全ては世界の観測なのです。
 我々の世界において、「知覚(認識)=存在」であるから、つまり、我々の創作活動は、世界の創造なのです。
 
 
 きっと我々は死んだ後、もしくは何かしらの形でこの世界との決別を迎えた後、無限の世界のどこかで新しい形で生まれ変わるのでしょう。世界は無限に存在するのです。もしかしたら何かの創作物の中にあなたの変化した先の姿が観測されているかもしれないですね。
 以上です。
 
 自我を投影する
(我々の認識する世界において一番近いと思われる表現)
 ゲーム性とは? どこかの本能を擽るもの
 勝敗の分かれ目。
 
 
 その比喩として「無理数の数列に思いついた数字が入っているような世界」というもの。
 イギリスの哲学者ランディの言葉
 
 思考がどこかで存在しているという世界の認識
 
 
 思考の中で発現すること自体、実質的に存在していると言える。
 何かしらの接続によって思考内に像を結ぶ。
 我々の世界において知覚することこそ存在することであり、つまり思考による観測こそこの世界においてのその世界の創造である。
 そういった点であらゆる思考・創作物はつまり世界の認識(切り取り/創造)でありそれらは次元を超えた接続を可能にする自我に用意された能力・手段であると言える。
 
 
 志
 人々の思想に火を灯すような作品を創り出す。疲弊し切ったこの日本社会に、新しく火を灯す。
 軈て全てを飲み込み、末端まで強烈な熱を届ける火だ。
 
 
 
 ただそこにはその時の僕らにしか出せない特有の空気があって、その時の僕らはその中でしか生きられない生物だった。僕はその中でも運転が得意な方で、何度か通う頃には、ある程度のバイクの運転方法を心得ていた。
 
 
 
 永遠の顕現
 
 社会の変革
 
 
 私の人生の目標として、最も大きなものを私は二つ挙げることができる。
 一つは精神的世界における最も困難な野望であり、一つは社会ないし肉体における最も突拍子もない願望である。
 端的にいうとするなら、前者はこの世界における永遠の顕現。又は自我の世界の脱出である。そして後者は文学による日本思想の再生である。
 私は芸術家であるから欲は人一倍強いと自覚しているつもりである。故に、その他にも成したいと思うことはそれこそ、星の数ほどある。
 これらを達成するために私は生きる。
 
 
 
 薄桃の 花弁、水面を 見ないふり
 
 ぽつんと灯 吹く風中に 遠囃子
 
 
 
 三島由紀夫の全集を置いて欲しいです。
 最近は、以前読んだ本を再読することが増えてきています。すると、幼い頃の自分の面影を行間にみつけたり、自分の成長を否応なく知覚させられたりします。先日梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ」を、小学校中学年ぶりに読みました。初読の時に感じた温もり、美しい庭の情景、主人公の心の動き。そんなものが思い返され、とても素敵な読書体験となりました。何より私は、何年も前に体験した世界がそのまま保存されていたというのが非常に嬉しかったです。
 
 
 世界も自分自身さえもシュミレーションで
 誰かが観測してるいるからこそ
 存在を保てていて、その存在が消えてしまったら
 我々は泡沫の夢のように消えていくものだと思ってます。
 
 私が、 認識の光を放射して視 覚 器 官 を 「透 視 」 し 、 外 界 を サ ー チ ラ イ ト の よ う に 照 ら し 出 し て ク オ リ ア を 「発 見 」 す る 、
 と い う の が 、 「私 が 見 る 」 と い う こ と な の だ 。 ギ ブ ソ ン は 、 意 味 は 脳 が 作 り 出 す の で な く 、 環境世界に先在するとい う。 世界は元々 クオリアに満ち、認識の光がその一部を発見する のである。 なるほど、 私が見る北極星の姿は、 1000年前の もの だ。 その 意は、私は、 認識 の光を物理学的な光に時間逆行して送り出し、1000 年過去の 北極星へ と到達させるとい う ことなのだ。中世の認識論では、 目に光が入っ て物が見えるのではなく、 目から光が出て 物が見える、 とい う説明が主流だっ たとい う。かかる 「逆生理光学」 は、決して既存の物 理学体系と相矛盾するもの ではない。 ただ、 「私」 の い る場面で、方程式の時間の向きを逆 転させればよい だけなのだから.
 
 一人称的認識論が人々を納得させない理由
 独我論的世界をもたらす→それは人々の感情的反発を生じさせる。
 
 
 
 私は、私を閉じ込めている宇宙の恐ろしい空間を見る。そして自分がこの広大な広がりの中の一隅につながれているのを見るが、なぜほかの処ではなく、この処に置かれているか、また私が生きるべき与えられたこのわずかな時が、なぜ私よりも前にあった永遠と私よりも後に来る永遠の中のほかの点でもなく、この点に割り当てられたのであるかということを知らない。私はあらゆる方面に無限しか見ない。…私の知っていることのすべては、私がやがて死ななければならないということであり、しかもこのどうしても避けることのできない死こそ、私の最も知らないことなのである。
 — ブレーズ・パスカル (1670年) 『パンセ』、前田陽一訳
 
 
 ケイムズ卿のご意見をお聞かせください。私の脳がその本来の構造を失い、その何百年か後にその同じ素材で同じ知的なものが制作された場合、その存在は私と言ってよいのでしょうか、またもし私の脳とまるで同じものが二つ,三つと作られた場合、そのすべてが私なのでしょうか、つまりそれらすべては一つの同一の知的存在なのでしょうか。
 — トマス・リードからケイムズ卿への手紙(1775年)
 
 鏤める 猛り狂う 猖獗 猖獗を極める
 
「すべては物理的である(Everything is physical)」物理主義
 デカルト的な心についての考えが「機械の中の幽霊」といった形で批判を受けた。
 
 志向性(しこうせい、独: Intentionalität)あるいは指向性(しこうせい)とは、エトムント・フッサールの現象学用語で、意識は常に何者かについての意識であることを表す。この概念はフッサールが師事したフランツ・ブレンターノから継承したものであり、ブレンターノは志向の対象の存在論的・心理学的状態を扱う際にこの用語を使った。
 
 全ての心的現象は中世のスコラ学者が対象の志向的(もしくは心的)内在性と呼んだものおよび、完全に明確ではないが、対象つまり内在的対象性と我々が呼ぶかもしれないものによって特徴づけられる。あらゆる心的現象は、必ずしも同じようにではないが、自身の内に対象として何者かを含む。表象においては何者かが表象され、判定においては何者かが肯定または否定され、愛においては愛され、嫌悪においては嫌われ、欲望においては欲望され、…というように。志向的内-在性は専ら心的現象が持つ特性である。物質的現象はこのような特性を示さない。したがって、心的現象はそれ自体の内に志向的に対象を有する現象だと定義できる。
 
 
 ① シスコンのマラソンランナーが、孤島にいる。
 ③ 欲望に支配された棋士が、樹海にいる。
 
 
 じっと彼女の顔を見詰めていた。
 秒針が鳴らす規則的な音だけが部屋の中に響いていた。
 寝息は聞こえず呼吸による胸の動きも微かだから、僕は彼女が死んでしまっているように錯覚した。
 暫くして、零時の鐘が鳴る。
 ベッドから起き上がると、裸にジーンズと薄いシャツを着た。
 目を覚ますためにカップに残っていたコーヒーを飲み、それをシンクに片付ける。
 ナイトテーブルに置いた財布を取ろうとした僕の腕を、彼女のひんやりとした手が掴んだ。
「私も行く」
 そう言うと彼女はベッドからするりと抜け出した。
 開け放った窓から入った月明かりが彼女の真っ白な身体を照らす。
「これ、履いていい?」
 僕が頷くと、彼女は落ちていた僕のトランクスを履いた。それから上にオーバーサイズのプルオーバーパーカーを着ると、満足げに僕の手を握った。
 コンビニへと向かう途中、僕はどうして彼女の家に居るのかについて思いを巡らせた。街灯が照らす彼女の顔を僕はちらりと盗み見た。
 名前が、どうしても思い出せない。
 
 
「知ってる? この世界がどうやって成り立ってるか」
 
 
 
 
 
 彼女が窓を開け放つと、冬の風が吹いてきて、真白なレースカーテンがひらりと舞った。その瞬間から豊かな月明かりが差す。床に落ちた月光は風が吹く度にかたちを変え、風が止むとともに消えた。
 彼女は隣に腰掛けた。窓に面したベッドサイド。再び風が吹く。
 露台に蝶が飛んできて、囲う柵に伸びた薔薇の蔦にとまった。夜だから蛾かもしれない。それは僕には判断がつかない。
 彼女は徐に側のランプに光を灯し、ベッドに置かれたままの僕の手を強く握った。
「私に付けさせて」
 彼女はそう言うと、極めて艶やかに微笑んだ。
 
 
 
 ロマンティカ
 
 
 リュート
 チェレスタ=カリヨン
 ファゴット
 ヘッケルフォン
 ヴィブラフォン
 オンドマルトノ
 フリューゲルホルン
 ハルモニウム
 サクソフォン
 シロフォン=マリンバ
 フレンチホルン
 コントラファゴット
 ワーグナーチューバ
 
 
 スウィートチェストナット
 森林など、適度に湿り気のある目の粗い土壌に育ちます。約20mくらいの高さになる大きな木です。開花期は一般のクリに比べて遅く、新緑のあとの6月から8月にかけて咲きます。花は花穂のように見え、香りが強いのが特徴です。
 
 
 啓理
 
 
 初恋       染野太朗
 
 悲しみはひかりのやうに降りをれど
 会ひたし夏を生きるあなたに
 
 文庫本二冊携へ水買へば
 旅がはじまる熱海への旅
 
 出のわるいシャワーに髪を流しつつ
 しづかな今がふいに厭はし
 
 嫌われぬためだけにことば選びつつ
 要は性欲だらう初冬の
 
 雨の午後のきみでなき人とするセックスに
 息乱るればぼくは笑ひぬ
 
 泣けないな 青信号と秋の陽が
 ごぞつて人を動かしてゐる
 
 君には恋人がゐるといふだけのことを
 どうしてきみもぼくも花束のやうに
 
 
 たったこれだけの後悔でこれほど不快なんだ。たったこれだけ。たったこれだけ。
 どうしよう。俺はこのあとどれ程の後悔に身を窶さなければいけないのだろう?
 今からでも間に合うだろうか?
 
 
 人生を設計しよう。キャリアをデザインしよう。そんな考え方が大嫌いだ。
 資本主義に侵された人は何て愚かなのだろう? とか思ってしまう。恥ずかしい。
 そもそも幸せってなんだろう? 人はなんのために生きているのか?
 一生を苦しみ抜き終えた人はどうして生きたのだろう? 一生を平穏に過ごし、たくさんの幸福と共に過ごした人と比べると、その人は哀れなのだろうか? 僕は哀れか?
 
 進路実現のための……。
 めんどくさかったり、自信が持てないだけなのでは?
 
 
 
 
 
 
 大学教員(研究者)の仕事
 ・研究
 ・教育
 ・地域貢献
 ・大学運営
 
 
 
 ジョジョみたいなんおもろいな〜
 スタンドかっけえな〜
 新しい扉や!
 
 
 「卵」とは始まりである。生き物はすべて、それから誕生する。
 
 
 僕と卵焼き
「卵焼きを作るということはつまり、性行為である」
 そう説いたのはバルザックだったかゴダールだったか、はたまた太宰治であったかは知らない。しかし、時を超えて残る言葉というものは一定の真実性あるいは一つの技巧、——気の利いたジョーク——が含まれているもので、例に漏れずこの言葉も、なかなか味わい深いものがある。
 「卵」と聞いてまず思い浮かぶのは鶏卵だろう。あの暖かな白に、黄金比のフォルム。我々のタンパク源筆頭として、非の打ち所がない造形をしている。その白さと整然さにどこか人工物のような正確性があるが、生命を感じる形でもある。実に不思議な表裏一体だ。またそこには完全性も含有していることを忘れてはいけない。卵ほど完結性に富んだ形をしたものが他にあるだろうか? 私は未だそんなものに出会ったことはない。但し、複数個の鶏卵を観察するとなると話は変わる。鶏卵は一つ一つの形や大きさは様々なのである。おまけに茶色い卵もある。そこには生命の個性、多様性がある。
 鶏卵の良さはその造形の他にもたくさんある。例えばその一つがその殻である。鶏卵は殻の耐久力、その具合が、非常に丁度いいのだ。誰しも鶏卵くらい手に取ったことはあるだろう。仲良くパックに並べられた一ダースの卵たち。嫌に爽快感が伴うあのバリバリ[#「バリバリ」に傍点]を剥ぎ取り、左角手前の鶏卵を手に取る。その硬さが、言い換えればその柔らかさが、とても丁度いいのである。力を入れれば握り潰す事も出来るだろう。だがしかし、料理に使う時に割ろうと思うと話が変わる。料理には殻を入れてはならない。よって必然的に卵を綺麗に[#「綺麗に」に傍点]割らなければならないが、それは手によってだけでは成し得ない。キッチンの硬い角を使わなければならないのだ。その絶妙さが人に
 
 
 調理のためには殻を破らなければならず[#「破らなければならず」に傍点]、そして取り去った殻を捨てなければならない[#「捨てなければならない」に傍点]卵を取り巻く、その一連の制約には、我々人間が看過してはいけない象徴性が包摂されている。
 我が家の朝食でウインナーと並んで不動のレギュラーとなってから実に久しい。
 
 
「卵」の中にはいつか生まれるひよこが、常にいるのである。
 
 
 
 双眼鏡と可視光線の例え。
 双眼鏡=自我
 可視光線=我々が認識できる要素(この世界にあるもの)
 紫外線=我々が認識できないもの(謂わば上位存在)
 窓の外と闇の奥。
 何も考えてない時。
 
 
 跡奉
 
 
 
 
 2.青年期自我の時代的変遷
 1980 年(昭和 55 年)代後半からソビエト連邦で進められた政治改革運動である「ペレストロイカ」(perestroika)は、それまでの米ソ冷戦がおさまり、青年がそれまで重視してきた社会の価値観 に即したアイデンティティの確立や確信していたイデオロギーを弱めるという結果を生んだと思わ れる。また、わが国で 1991 年(平成 3 年)から 1993 年(平成 5 年)に生じたバブル経済の崩壊も 青年にとっては目標に向かって頑張れば達成できるというやる気を低下させる結果をまねいたと思 われる。筆者は、戦前からの青年の自我と今世紀に入ってからの青年の自我の大きな相違は、この ペレストロイカとバブル崩壊時を分岐点にして「自己顕示(self-assertion)・自我同一性(ego identity) の確立」を重視してきた点と「自己愛」(narcissism)を重視している点とに分けられるととらえた。
 図 1 は、青年期自我の時代的変遷をまとめたものである。以下に図 1 をもとに戦前から今世紀ま での時を追って青年のさまざまな心の問題について考察する。
 
 
 Erikson(1950)は、アイデンティティが確立されていない不適応青年を「同一性拡散」と名付け、 とくに決断力がない、時間展望がない、対人的距離が取れない、勤勉さがないなどの特徴をあげた。 この「同一性拡散」は、後述する精神医学でいう「境界例」と同様なものとしてとらえられる。
 わが国では、アイデンティティの問題は 1970 年(昭和 45 年)代から 1980 年(昭和 55 年)代ま で青年心理学や精神医学で盛んに取り上げられた。この時期の書籍「青年の精神病理」(笠原ら編; 1976、弘文堂)はよく購読された。また、小此木(1981)は、当時の青年の特徴として、「モラトリ アム(15)」(moratorium)、つまり、いつまでも青年期を満悦し、アイデンティティを確立しない点を取 り上げた。
 
 笑顔が太陽みたいでした。
 11/8
 
 先輩めっちゃ可愛かったです。
 円形ステージ
 下の方の段々で二人。
 並んで食べたかき氷。
 11/10
 
 
 メジャー化について
 
 
 怒りを書き記せ
 
 
 日本のジェンダー論の問題点は「女性を守ることを前提にしていること」と「権利ばかりで義務の議論がない」ことです。
 欧米の「平等の歴史」を見てみると、権利拡大と共に《義務の拡大》|と《保護の減少》が付随しています。たとえば階級差別から階級平等になったフランス革命は、同時に「平民以下の徴兵義務」も同時に行われています。
 また南北戦争では、奴隷制を維持したい南軍は奴隷を徴兵しなかったし奴隷の志願も認めなかったのに対して、北軍は解放奴隷の志願を受け入れています。これは「義務を果たすなら権利が得られる」という考え方であり、奴隷は「権利を得るための義務を選択することができない」のが差別だったわけです。
 男女平等も同じで、男女平等には「社会で権利を得るなら社会的義務を果たす」必要があり、政治家や政治幹部がジェンダー指数としてカウントされるのは「女性が義務を果たしたいのに、果たすことができない差別がある」とされるからです。でも日本は戦後すぐに被選挙権も平等にしたので、女性が政治家としての社会的義務を果たすための障壁は100%無いのに、その点はまったく議論になりません。
 だから日本の女性達は欧米女性達にくらべて明らかに「義務を果たさずに権利ばかり得ている」といえ、だからこそ17分ぐらいで「日本は(女性が)居心地がよい」という発言につながります。そりゃ「社会的義務」を果たさずに、権利を執行できるなら居心地が良いのは当たり前、男性の自殺率が女性よりも多いのは「社会的義務の負担が重すぎる」からです。
 段ボール授乳室の話は、よくある「平等と公平の議論のイラスト」で説明できます。ただし、イラストの違いではなく「箱を用意するのはだれか?」という視点です。動画内では「お金払うのは国民」と指摘していますが、それよりも「そのお金を授乳室に使うと決めたのはだれか?」が問題なのです。
 じゃあ誰が決めたのか?日本が(女性達が言うように)男性社会(男性中心社会)であるなら、それを決めたのは男性政治家と男性役人です。女性達が「女性の尊厳が!!」と反発するのは、彼女たちに「自分達には公平性を担保する義務がない」と思っているからです。政治家は公平性をどうやって担保するか、を議論し決定する仕事ですから、日本の女性達が義務を果たさないことがそのまま段ボール授乳室につながっているわけです。
 結局日本は「女を守ること」が大前提の社会であり、女性達自身が「社会に甘えること」しか考えない、女性達に「社会的義務を果たせ」と言えない社会であることが諸悪の根源になっています。
 
 
 エロティックとグロテスクの本質は全く同一のものである。
 そこにある生命の尊厳の侵犯に呼応し、我々の保有する生命も沸る。その効果が全く同じなのである。
 どちらも生命を損なうという現象によって、生命を感じる。
 
 私が貴校を志望する理由は、貴校が日本で一番水準の高い授業を展開するからである。
 私は私の人生を、自分や世界の存在意義やその成り立ち、その他あらゆる形而上の命題ついて考究し続けることに費やしたいと願っている。その願望を叶えるにあたって、今現在の私に不足しているものは、既存の形而上学への造詣ばかりではなく、むしろ形而下の知識であると私は考えている。よって多様な学問を最も高い水準で学習することができる且つ、入学後に進路選択の自由がある貴校のその素晴らしい環境は、私の目標達成に大きく寄与するであろうことを、私は確信している。
 私のやりたいことは職業ではない。つまり一般的な社会的意義というものは、存在しない。私が将来、長い年月を懸けて自我の正体を突き止めたとして、それが社会を構成する誰かに良い影響をもたらすとは想像し難い。
 だがここで問いたいのは、人間を、人間たらしめるものは何なのか、という問いである。私はこの問いに「精神活動」だと答える。自我を考究する、芸術を探求する、そういった命題について頭を悩ませ、限りある時間を消費することこそが人間を人間たらしめているのだ。人類が滅ぶときとはつまり、全員が考えるのを辞めたときだ。私がこう信じているが故に、私がそういった問いの答えを模索し続け、命をすり減らしている間は、まだ人間は人間であるという尊厳を保持し、生き永らえ、命を繋ぐことができるのである。
 社会とは、集団で生きる我々人間という生物の、生存のためのシステムである。そう定義したとき、私の願望というものは、資本主義社会により数値と成り下がってしまった幸せを、属する小集団に還元するといった、一般的な社会的意義のある仕事等よりも、ずっと重大な別種の意義があると私は信じる。
 貴校は私が羽ばたく場として、最も適当であると私は考える。是非とも私に、入学の許可を頂きたい。
 
 気付くかどうかである。
 社会的思考方法の定義
 
 
 薄桃の 花弁、水面を 見ないふり
 
 
  
 袖口を 押さえて追うは 君の影
 
 
 心急く 鼻緒に足を 突っ掛けて
 
 
 帯押さえ 追うは先行く 君の背中
 
 遠囃子が 止んだ。露台で 歯を磨く
 
 祭囃子 紅い鼻緒を 突っ掛けて
 
 揺る裾は 祭囃子の 急かすまま
 
 祭笛 鼻緒の痛みも どこへやら
 構造と力
 
 
 音楽創造計画
 
 雨宮静
 
 計目理佐 
 ドロップポップマップス
「」
 
 反対運動のお兄ちゃん
 
 
 
 
 
 
 
 合理主義者を騙る奴が嫌い
 合理主義者でない人を見下すその姿勢
 
 他人の迷惑を考えずに速さを求め、それによってセーブされた時間をを有効活用するでもないのに、その姿勢を取らない人を軽蔑する奴ら。
 
 
 シルダリヤは川。温暖化で湖に
 
 (ブラキオ・ブルーベリー革命)
 
 エアコンの前に惰眠を貪る人類は環境変化の前には無力であったのだ。
 
 
  少女はナイフを研ぐ。
 縋るように丁寧に、汚れを削ぎ落とすように力を込めて。
 刀身の擦れる音が清純な一室に響いた。
 ナイフの切れ味が増すたび、少女は自分の中の抑圧された狂気が身悶える声を聞く。
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