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    ==なんでも==
    
    
==なんでも==
    
    
 夜が好きなら、夜を文章に書けばいい。そのノートを開くだけで、どこでも夜と出会えるように。
    
<br> 夜が好きなら、夜を文章に書けばいい。そのノートを開くだけで、どこでも夜と出会えるように。


 僕は無口な子供だった。草木が生い茂り、生き物が一年で1番活動的な季節。その頃僕は生物観察に夢中だった。
<br> 僕は無口な子供だった。草木が生い茂り、生き物が一年で1番活動的な季節。その頃僕は生物観察に夢中だった。


「プラトンは言った――」
<br>「プラトンは言った――」
「――愛に触れた者は、誰でも詩人になる。とね」
<br>「――愛に触れた者は、誰でも詩人になる。とね」


 祖母は言った。「その祭りにはいろんなモノが入ってくるけぇ、気ぃつけるんだな」
<br> 祖母は言った。「その祭りにはいろんなモノが入ってくるけぇ、気ぃつけるんだな」
 雲を眺めるのに夢中だった僕はその言葉を聞いていなかった。
<br> 雲を眺めるのに夢中だった僕はその言葉を聞いていなかった。


 その街は白と青で溢れる、海辺の小さな街だった。
<br> その街は白と青で溢れる、海辺の小さな街だった。
 僕は夏休みの間をこの場所で過ごしていた。
<br> 僕は夏休みの間をこの場所で過ごしていた。
 普段は高校は都内のある程度の進学校に通っていた。夏休みの間だけ、実家のあるこの街に帰って来ていたのだ。決していじめられたりしていたわけではない。ただ、休みに遊ぶような友は誰ひとりとしていなかっただけだ。
<br> 普段は高校は都内のある程度の進学校に通っていた。夏休みの間だけ、実家のあるこの街に帰って来ていたのだ。決していじめられたりしていたわけではない。ただ、休みに遊ぶような友は誰ひとりとしていなかっただけだ。


 僕は暇を持て余していた。
<br> 僕は暇を持て余していた。


 僕は言葉遊びが好きな子供だった。
<br> 僕は言葉遊びが好きな子供だった。


 父親は子供に無関心な父だった。母親はいなかった。
<br> 父親は子供に無関心な父だった。母親はいなかった。


 ―――ハロォウ!ディスイズホッターラヴァートーク!レッツゴー!たった今からこのラジオは平日午後4時から始まる、ホッターラヴァートークのお時間だ。俺はパーソナリティのアンソニー・ドロウ、よろしくな。この番組ではみんなのリクエストを待ってるぞ。素敵な恋のエピソードと一緒にダイヤルを回してくれ。今日のテーマは「ひと夏の恋」だ。じゃんじゃん送ってくれ―――
<br> ―――ハロォウ!ディスイズホッターラヴァートーク!レッツゴー!たった今からこのラジオは平日午後4時から始まる、ホッターラヴァートークのお時間だ。俺はパーソナリティのアンソニー・ドロウ、よろしくな。この番組ではみんなのリクエストを待ってるぞ。素敵な恋のエピソードと一緒にダイヤルを回してくれ。今日のテーマは「ひと夏の恋」だ。じゃんじゃん送ってくれ―――


 ある日のことだった。ランチを食べ終えた僕は、海を眺めていた。どこからか無駄にハイテンションなラジオの声が聞こえていた。
<br> ある日のことだった。ランチを食べ終えた僕は、海を眺めていた。どこからか無駄にハイテンションなラジオの声が聞こえていた。


 〈ラジオ〉
<br> 〈ラジオ〉


 すると急に背後から声がした。
<br> すると急に背後から声がした。
「あなた、海のどこが好きなの?」
<br>「あなた、海のどこが好きなの?」
 振り返るとホリゾン・ブルーのワンピースを着た、少女が立っていた。麦藁帽子を深く被っている。この町では珍しい、百合ような白い肌をしていた。瞳はチャコール・グレーだった。
<br> 振り返るとホリゾン・ブルーのワンピースを着た、少女が立っていた。麦藁帽子を深く被っている。この町では珍しい、百合ような白い肌をしていた。瞳はチャコール・グレーだった。
 この街に来て満足に会話していない僕はただ固まったまま、彼女の顔を見ていた。10秒ほど経っただろうか、彼女は気づいていないのかと問いただしているような刺々しい口調で、もう一度言った。
 この街に来て満足に会話していない僕はただ固まったまま、彼女の顔を見ていた。10秒ほど経っただろうか、彼女は気づいていないのかと問いただしているような刺々しい口調で、もう一度言った。
「あなたは、海のどこが好きなのかしら?」
<br>「あなたは、海のどこが好きなのかしら?」
 睨まれた僕は、彼女の態度にすこし驚いたが、すぐに答えた。
<br> 睨まれた僕は、彼女の態度にすこし驚いたが、すぐに答えた。
「僕は別に海は好きではないよ。」
<br>「僕は別に海は好きではないよ。」
「あら、そうなの」
<br>「あら、そうなの」
 彼女はさぞ意外そうになふうに言った。
<br> 彼女はさぞ意外そうになふうに言った。
「では、なんで海なんか眺めてるの?」
<br>「では、なんで海なんか眺めてるの?」
「僕は海を見ているんじゃない―」
<br>「僕は海を見ているんじゃない―」
 僕は遠くを指差して言った。
<br> 僕は遠くを指差して言った。
「水平線を見ているのさ」
<br>「水平線を見ているのさ」
「水平線も海じゃない」
<br>「水平線も海じゃない」
「違うさ」
<br>「違うさ」
「なにも違わないわ」
<br>「なにも違わないわ」
 しばしの沈黙の後、少女はまるでそれが当たり前だというように腰を下ろした。その後、2人は黙って海をみていた。いつも間にかラジオでは流行りのラブソングが流れていた。曲名は思い出せなかった。
<br> しばしの沈黙の後、少女はまるでそれが当たり前だというように腰を下ろした。その後、2人は黙って海をみていた。いつも間にかラジオでは流行りのラブソングが流れていた。曲名は思い出せなかった。
「この街に来るひとはみんな、海が好きなのだと思っていたわ」
<br>「この街に来るひとはみんな、海が好きなのだと思っていたわ」
 彼女は言った。
<br> 彼女は言った。
「だって、海とパブしかない街よ」
<br>「だって、海とパブしかない街よ」
「僕は好きでこの街に来たわけではないからね。」
<br>「僕は好きでこの街に来たわけではないからね。」
「」
<br>「」


 僕は言った。
<br> 僕は言った。
「第4の壁って知ってる?」
<br>「第4の壁って知ってる?」
「知らないわ」
<br>「知らないわ」
 彼女は答えた。
<br> 彼女は答えた。
「第4の壁ってのはね、俳優と観客を分けるように舞台と客席を隔てる架空の壁のことなんだ。」
<br>「第4の壁ってのはね、俳優と観客を分けるように舞台と客席を隔てる架空の壁のことなんだ。」




 たしかに、と僕は思った。問題を解決するには経験は不可欠だ。
<br> たしかに、と僕は思った。問題を解決するには経験は不可欠だ。


 その次の年の夏、僕は彼女の書店を訪れた。
<br> その次の年の夏、僕は彼女の書店を訪れた。
 その書店があった場所は新しめのパブが立っていた。
<br> その書店があった場所は新しめのパブが立っていた。
 彼女は?店の人に聞いてみた
<br> 彼女は?店の人に聞いてみた
「彼女は遠くにいってしまって、今は誰も彼女を知らない」
<br>「彼女は遠くにいってしまって、今は誰も彼女を知らない」
 と言われた。
<br> と言われた。


 月の妖精
<br> 月の妖精
 月と話す少年。
<br> 月と話す少年。


 あなたはそうやっていつもここで座っていますね」
<br> あなたはそうやっていつもここで座っていますね」
「ああ、そうだなぁ…もう10年はこうしてここに座ってるよ…」
<br>「ああ、そうだなぁ…もう10年はこうしてここに座ってるよ…」
「…ひとつ聞いてもよろしいですか」
<br>「…ひとつ聞いてもよろしいですか」
「おうよ」
<br>「おうよ」
「夢っていうのがあるじゃないですか。あの、夜眠ると見れる方の。僕はあれがずっと見れてなんです。」
<br>「夢っていうのがあるじゃないですか。あの、夜眠ると見れる方の。僕はあれがずっと見れてなんです。」
「夢を見たことがないのかい?…」
<br>「夢を見たことがないのかい?…」
「いえ、ああ、でも、最近はずっと。」
<br>「いえ、ああ、でも、最近はずっと。」
「そうかい」
<br>「そうかい」
「それで、ですね。あなたは夢をみますか?」
<br>「それで、ですね。あなたは夢をみますか?」
 こんなふうに拉致のあかない問答を延々と繰り広げた後、結局この主人公は彼を家に連れて帰って世話をすることにした。あの問答の末に主人公と彼との間に不思議な絆が芽生えたらしい。彼との日々は楽しいことばかりとはいえなかったが、もとより一人暮らしの寂しい生活をしていた主人公は彼がいてくれるだけで養う価値があると信じた。
<br> こんなふうに拉致のあかない問答を延々と繰り広げた後、結局この主人公は彼を家に連れて帰って世話をすることにした。あの問答の末に主人公と彼との間に不思議な絆が芽生えたらしい。彼との日々は楽しいことばかりとはいえなかったが、もとより一人暮らしの寂しい生活をしていた主人公は彼がいてくれるだけで養う価値があると信じた。
 彼と暮らし始めて3ヶ月と3日経ったある日、急に彼は主人公の前から姿を消した。1週間程の食糧と、主人公の財産の半分も一緒に消えた。置き手紙などの類いはなかった。それから、彼が姿を現すことはなかった。
<br> 彼と暮らし始めて3ヶ月と3日経ったある日、急に彼は主人公の前から姿を消した。1週間程の食糧と、主人公の財産の半分も一緒に消えた。置き手紙などの類いはなかった。それから、彼が姿を現すことはなかった。
 僕はこの本を読み終えるとなんてつまらない話だ、と思った。どうしようもない、脈絡のない話。オチも理解ができない。僕はそっと本を閉じた。そして、この愚かな主人公に心を馳せながらしばらく波の音を聞いていた。僕がその本を開くことは、もう2度となかった。
<br> 僕はこの本を読み終えるとなんてつまらない話だ、と思った。どうしようもない、脈絡のない話。オチも理解ができない。僕はそっと本を閉じた。そして、この愚かな主人公に心を馳せながらしばらく波の音を聞いていた。僕がその本を開くことは、もう2度となかった。




「この町はね。際限がないの。」
<br><br>「この町はね。際限がないの。」
 彼女は泣きながら言った。
<br> 彼女は泣きながら言った。
「この町の人は朝起きて昼働き、酒を飲んで夜に寝る。それをただただ繰り返す―」
<br>「この町の人は朝起きて昼働き、酒を飲んで夜に寝る。それをただただ繰り返す―」
「―ただそれだけなの。波の音はその間絶えないわ。カモメの鳴き声も朝昼ずっと―――もううんざりよ。」
<br>「―ただそれだけなの。波の音はその間絶えないわ。カモメの鳴き声も朝昼ずっと―――もううんざりよ。」




 その夜はとても暗かった。暗がりはベンタブラックで塗り潰したような闇で、日中の茹だるのような暑さは嘘のように息を潜めていた。
<br> その夜はとても暗かった。暗がりはベンタブラックで塗り潰したような闇で、日中の茹だるのような暑さは嘘のように息を潜めていた。




 15歳の夏だった。僕は田舎の祖母の家に来ていた。
<br> 15歳の夏だった。僕は田舎の祖母の家に来ていた。
 その夏は酷く暑く―――
<br> その夏は酷く暑く―――


 彼は言った
<br> 彼は言った
「やつは靴底にへばりついた汚いガムみてぇな野郎だ―」
<br>「やつは靴底にへばりついた汚いガムみてぇな野郎だ―」
「―居場所がなくて誰かに付き纏って踏まれ続けるしかねえのさ。」
<br>「―居場所がなくて誰かに付き纏って踏まれ続けるしかねえのさ。」


 君の温度は何度なのだろう。
<br> 君の温度は何度なのだろう。


「なぜあの子がまるまる2ヶ月も姿を現さないのか。それは―――」
<br>「なぜあの子がまるまる2ヶ月も姿を現さないのか。それは―――」
 彼はこちらを見て言った。
<br> 彼はこちらを見て言った。
「―――それは君が一番よくわかっているんじゃないのかい?」
<br>「―――それは君が一番よくわかっているんじゃないのかい?」


「ねえ、知ってるかい?先週アメリカが月に着陸したらしいよ」
<br>「ねえ、知ってるかい?先週アメリカが月に着陸したらしいよ」
「そんなこと知ってるわ。すごいビックニュースだもの。着陸の瞬間の映像も見たわ。田舎娘って馬鹿にするのは、やめたほうがいいわよ」
<br>「そんなこと知ってるわ。すごいビックニュースだもの。着陸の瞬間の映像も見たわ。田舎娘って馬鹿にするのは、やめたほうがいいわよ」
 彼女は機嫌を損ねたように僕にくるりと背を向けて、海の方へ向き直ってしまった。僕は世間話をしたかっただけで、決してそんなつもりで言ったわけではない。彼女は考えすぎてしまうことが多いな、と僕は思った。
<br> 彼女は機嫌を損ねたように僕にくるりと背を向けて、海の方へ向き直ってしまった。僕は世間話をしたかっただけで、決してそんなつもりで言ったわけではない。彼女は考えすぎてしまうことが多いな、と僕は思った。
「君はもっと素直になるといいと思う。何事にも。」
<br>「君はもっと素直になるといいと思う。何事にも。」
 僕は空を見上げて小さな声で言った。
<br> 僕は空を見上げて小さな声で言った。
「すみませんね、頑固なもんで。」
<br>「すみませんね、頑固なもんで。」
 彼女の嫌味ったらしい声が聞こえる。
<br> 彼女の嫌味ったらしい声が聞こえる。
 僕は笑った。
<br> 僕は笑った。
 空が青かった。
<br> 空が青かった。




 センター街から西に4ブロック進んだ右側の路地に来い。
<br> センター街から西に4ブロック進んだ右側の路地に来い。
 そこで待ってる。
<br> そこで待ってる。


 ビルの最上階から、高く、飛ぶ。
<br> ビルの最上階から、高く、飛ぶ。


「さよなら」
<br>「さよなら」
 彼女は言った。そして、回れ右をして僕から離れていった。
<br> 彼女は言った。そして、回れ右をして僕から離れていった。
 渋谷の雑踏は彼女の痕跡を冷酷なほどすぐに掻き消してしまう。
<br> 渋谷の雑踏は彼女の痕跡を冷酷なほどすぐに掻き消してしまう。
 僕は声が出なかった。
<br> 僕は声が出なかった。


 ひぐらしがカナカナと鳴いていた。私は姉と2人で、近所の公園の砂場で遊んでいた。辺りは真っ赤な光のベールに覆われていて、私たちのほかには誰も居なかった。
<br> ひぐらしがカナカナと鳴いていた。私は姉と2人で、近所の公園の砂場で遊んでいた。辺りは真っ赤な光のベールに覆われていて、私たちのほかには誰も居なかった。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
<br>「お姉ちゃん、どうしたの?」
 先ほどまでに私と砂の山を作っていた姉が、不自然に遠くを向いたまま動かないのだ。その目線の先を見てみると、少しだけ木が生い茂った林を見ていた。(何を見ているんだろう)それを知りたくて、私もそこを見ていた。だけど私には何も見えなかった。
<br> 先ほどまでに私と砂の山を作っていた姉が、不自然に遠くを向いたまま動かないのだ。その目線の先を見てみると、少しだけ木が生い茂った林を見ていた。(何を見ているんだろう)それを知りたくて、私もそこを見ていた。だけど私には何も見えなかった。
 その時、突然姉が言った。
<br> その時、突然姉が言った。
「帰ろう」
<br>「帰ろう」
「え〜もうちょっと遊ぼうよ」
<br>「え〜もうちょっと遊ぼうよ」
 と言って彼女の目を見た途端、私は固まった。いつもの姉の目ではなかった。私の我儘を許さない強制の目だった。私は惜しがりながらも
<br> と言って彼女の目を見た途端、私は固まった。いつもの姉の目ではなかった。私の我儘を許さない強制の目だった。私は惜しがりながらも
「…わかった」
<br>「…わかった」
 と言って彼女と手を繋いだ。そのまま、彼女に手を引かれるまま家路についた。その手が異常に冷たかった。
<br> と言って彼女と手を繋いだ。そのまま、彼女に手を引かれるまま家路についた。その手が異常に冷たかった。
 家に着くと、両親はいなかった。普段なら母が料理を作っていて、台所から陽気な声で出迎えてくれるはずなのだが。リビングまで2人で入って探してみたが、その姿は見当たらない。おかしい。そう思ったのも束の間、右手がグッと強い力で握られた。はっとして姉の方を見る。姉は感情の読めない目で虚空を見つめていた。(やばい)幼いながらにそう感じた私は手を振り払って投げようとした。しかし、姉の手はびくともしなかった。子供の力ではなかった。そのまま彼女は私を引き摺りながら、彼女の部屋に向かった。私は半泣きになりながら引かれることしかできない。
<br> 家に着くと、両親はいなかった。普段なら母が料理を作っていて、台所から陽気な声で出迎えてくれるはずなのだが。リビングまで2人で入って探してみたが、その姿は見当たらない。おかしい。そう思ったのも束の間、右手がグッと強い力で握られた。はっとして姉の方を見る。姉は感情の読めない目で虚空を見つめていた。(やばい)幼いながらにそう感じた私は手を振り払って投げようとした。しかし、姉の手はびくともしなかった。子供の力ではなかった。そのまま彼女は私を引き摺りながら、彼女の部屋に向かった。私は半泣きになりながら引かれることしかできない。
「助けて。お母さん助けて。」
<br>「助けて。お母さん助けて。」
 私の叫びは空間に吸い込まれるように響かない。怪しい夕陽が家全体に差し込んでいて、不気味なほどに赤く染めていた。
<br> 私の叫びは空間に吸い込まれるように響かない。怪しい夕陽が家全体に差し込んでいて、不気味なほどに赤く染めていた。
(行きたくない。いやだ、いやだ、いやだ…)
<br>(行きたくない。いやだ、いやだ、いやだ…)
 姉は部屋に入るとそのままベッドへ向かっていきそこに登ったそして部屋の一方、たった今入ってきた扉の上の部屋の角を見つめながらこう言った。
<br> 姉は部屋に入るとそのままベッドへ向かっていきそこに登ったそして部屋の一方、たった今入ってきた扉の上の部屋の角を見つめながらこう言った。
「妹に手は出さないで。」
<br>「妹に手は出さないで。」
 そして私の手に加えられていた力がふっと消え、姉はその場でバタッと倒れた。私は扉付近にいるであろうそれに背を向けて、泣きながら姉に抱きついた。熱い。この時姉は熱を出していた。
<br> そして私の手に加えられていた力がふっと消え、姉はその場でバタッと倒れた。私は扉付近にいるであろうそれに背を向けて、泣きながら姉に抱きついた。熱い。この時姉は熱を出していた。




 隣で手を引いていた姉がドスンッとその場で倒れた。
<br> 隣で手を引いていた姉がドスンッとその場で倒れた。


 遊んでいた
<br> 遊んでいた


 私は幼い頃から好奇心が強い子供だった。
<br> 私は幼い頃から好奇心が強い子供だった。
 その日は近所の森で姉と2人で遊んでいた。
<br> その日は近所の森で姉と2人で遊んでいた。


 そのとき私は6歳姉は9歳だった。
<br> そのとき私は6歳姉は9歳だった。
 彼女は原因不明の熱を出していて、悪い夢でも見ていたのだろう、ベッドでうなされていた。そんな姉をずっと看病していた私は、その疲れからか、そのベッドの脇にもたれて、ふと寝てしまったのである。その後目を覚まして顔をあげた。今思えば、深夜2時くらいだったのだろう。それまでそんな夜中まで起きていたことはなかった私は
<br> 彼女は原因不明の熱を出していて、悪い夢でも見ていたのだろう、ベッドでうなされていた。そんな姉をずっと看病していた私は、その疲れからか、そのベッドの脇にもたれて、ふと寝てしまったのである。その後目を覚まして顔をあげた。今思えば、深夜2時くらいだったのだろう。それまでそんな夜中まで起きていたことはなかった私は






 透き通った風が吹いて、僕らのあいだにできた澱みは流されていった。
<br><br> 透き通った風が吹いて、僕らのあいだにできた澱みは流されていった。




 遠くの方に、薄らと除夜の鐘が聞こえる。
<br><br> 遠くの方に、薄らと除夜の鐘が聞こえる。
 彼女はいなくなっていた。
<br> 彼女はいなくなっていた。
「はあ。」
<br>「はあ。」
 僕は天を仰いで、息を吐いた。それは白く色づき、そして霧散していく。
<br> 僕は天を仰いで、息を吐いた。それは白く色づき、そして霧散していく。
 いつの間にか、涙が溢れていた。
<br> いつの間にか、涙が溢れていた。
 とめどなく。
<br> とめどなく。
 絶え間なく。
<br> 絶え間なく。




「なぁ、知ってるか?」
<br>「なぁ、知ってるか?」
「え?なにを?」
<br>「え?なにを?」
「出るんだってよ、あそこ。」
<br>「出るんだってよ、あそこ。」
「出るって?何が?」
<br>「出るって?何が?」
「ばっか、そりゃ出るっつったらアレに決まってんだろ。」
<br>「ばっか、そりゃ出るっつったらアレに決まってんだろ。」
「ええっ、本当?僕そういうの苦手なんだよ。」
<br>「ええっ、本当?僕そういうの苦手なんだよ。」
「な〜そんなビビってないでさ、行こうぜ。俺がついてるからよ。」
<br>「な〜そんなビビってないでさ、行こうぜ。俺がついてるからよ。」
「う〜ん、、大丈夫かなぁ。わかった。着いてってあげる」
<br>「う〜ん、、大丈夫かなぁ。わかった。着いてってあげる」
「よっしゃ」
<br>「よっしゃ」
「え、えと、でも、中には入らないからね。」
<br>「え、えと、でも、中には入らないからね。」
「わかってるわかってる。入り口まででいいって。でも、入り口で一人で待ってる方が怖いかもよ?」
<br>「わかってるわかってる。入り口まででいいって。でも、入り口で一人で待ってる方が怖いかもよ?」
「そんなこと言うなよ、、怖くなっちゃうじゃないか。」
<br>「そんなこと言うなよ、、怖くなっちゃうじゃないか。」
 ………
<br> ………




「一番綺麗なところを見ちゃったら、もう楽しめないじゃない。また今度、次は貴方が帰る時がいいわ。ええ。そうしたほうがいいわ。貴方が帰る日に、また来よう。」
<br><br>「一番綺麗なところを見ちゃったら、もう楽しめないじゃない。また今度、次は貴方が帰る時がいいわ。ええ。そうしたほうがいいわ。貴方が帰る日に、また来よう。」




 僕は、彼女の話を聞くたびに、彼女がとても充実した生活を送っているように見え、僕が自分の話をする度に自分が汚く荒んでいて、取るに足らない人間であるかのように思えた。それほど彼女は輝いていた。
<br><br> 僕は、彼女の話を聞くたびに、彼女がとても充実した生活を送っているように見え、僕が自分の話をする度に自分が汚く荒んでいて、取るに足らない人間であるかのように思えた。それほど彼女は輝いていた。


 難解な数式に美しさを感じる人がいる様に、君の行動を許せないと言う人も一定数いる。偶々それが、私だっただけさ。
<br> 難解な数式に美しさを感じる人がいる様に、君の行動を許せないと言う人も一定数いる。偶々それが、私だっただけさ。


 明晰夢を見るの。
<br> 明晰夢を見るの。
 私はそこではなんでもできる。
<br> 私はそこではなんでもできる。
 だから、
<br> だから、
 出たくない。
<br> 出たくない。


 僕は図書館に行くと、あの子が居ないか。ふと、毎回思ってしまう。もしかしたらここに…なんて思いながら、僕は図書館を巡り続ける。
<br> 僕は図書館に行くと、あの子が居ないか。ふと、毎回思ってしまう。もしかしたらここに…なんて思いながら、僕は図書館を巡り続ける。


 12歳の誕生日に、招待状は届かなかった。
<br> 12歳の誕生日に、招待状は届かなかった。


 あの街には深い闇がある。光がやたら輝いて見えるのは、その影が濃いからさ。
<br> あの街には深い闇がある。光がやたら輝いて見えるのは、その影が濃いからさ。


 落ちうさぎ。君に会いに来たんだ。
<br> 落ちうさぎ。君に会いに来たんだ。




 ❇︎ ✴︎ ✳︎
<br> ❇︎ ✴︎ ✳︎


 家では、父が真っ赤な顔で怒りながら待っていた。僕は彼の前でバイクをおり、そして謝った。
<br> 家では、父が真っ赤な顔で怒りながら待っていた。僕は彼の前でバイクをおり、そして謝った。
「ごめん。父さん俺…」
<br>「ごめん。父さん俺…」
(ピシャリ)
<br>(ピシャリ)
 しかし、謝罪を言い終えるより前に、左頬を叩かれた。小さな稲妻が走ったように感じた。彼の愛車を無断で使っていたのだ。文句は言えまい。むしろそれだけで済んだことを喜ぶべきかもしれない。大きな傷でもつけていれば、彼がどんなことをしていたかわからない。
<br> しかし、謝罪を言い終えるより前に、左頬を叩かれた。小さな稲妻が走ったように感じた。彼の愛車を無断で使っていたのだ。文句は言えまい。むしろそれだけで済んだことを喜ぶべきかもしれない。大きな傷でもつけていれば、彼がどんなことをしていたかわからない。
 父は憤慨しながらバイクと一緒に家に入っていってしまった。僕はなんとなく部屋に戻る気にはなれなくて、あの浜辺へ向かった。
<br> 父は憤慨しながらバイクと一緒に家に入っていってしまった。僕はなんとなく部屋に戻る気にはなれなくて、あの浜辺へ向かった。
 一夜振りの海はとても美しく見えた。
<br> 一夜振りの海はとても美しく見えた。


 僕は、眠りに落ちた。
<br> 僕は、眠りに落ちた。






 その日詩人になった僕は、世界の見方が変わった。その時からこの世の全てが美しく踊り狂っている見え、そして儚げらに微笑んでいる様に見えた。今までの世界に、より色がついたような感じだ。
<br> その日詩人になった僕は、世界の見方が変わった。その時からこの世の全てが美しく踊り狂っている見え、そして儚げらに微笑んでいる様に見えた。今までの世界に、より色がついたような感じだ。
 学校に帰ってからもそれは続き、絶えることはなかった。あれから10年以上経った今でも、僕の眼には世界は変わらず綺麗に映っている。
<br> 学校に帰ってからもそれは続き、絶えることはなかった。あれから10年以上経った今でも、僕の眼には世界は変わらず綺麗に映っている。


 ❇︎ ✴︎ ✳︎
<br> ❇︎ ✴︎ ✳︎


 僕が16歳になった夏休み、もう一度だけ彼女の書店を訪れたことがあった。しかしそこにはあのこじんまりとした建物はもう無く、ただ荒れた空き地が広がっているだけだった。あの蠱惑的な雰囲気も消え去ってしまっていた。
<br> 僕が16歳になった夏休み、もう一度だけ彼女の書店を訪れたことがあった。しかしそこにはあのこじんまりとした建物はもう無く、ただ荒れた空き地が広がっているだけだった。あの蠱惑的な雰囲気も消え去ってしまっていた。
 本通りの奥の、クッキーをくれるパブのおじさん曰く、あの書店の|父娘《おやこ》は遠いところへ行ってしまったらしい。その時の僕じゃ届かないところへ。
<br> 本通りの奥の、クッキーをくれるパブのおじさん曰く、あの書店の|父娘《おやこ》は遠いところへ行ってしまったらしい。その時の僕じゃ届かないところへ。
 
 
 でも、いまなら届くだろうか。
<br> でも、いまなら届くだろうか。
 僕はその日から本屋に行くときに毎回あの子のことが思い浮かぶようになった。
<br> 僕はその日から本屋に行くときに毎回あの子のことが思い浮かぶようになった。


 彼は自分の子供に無関心な男だった。
<br> 彼は自分の子供に無関心な男だった。
 また、僕に母親はいなかった。
<br> また、僕に母親はいなかった。




 ―――ハロォウ。ディスイズホッターラヴァートーク。たった今からこのラジオは平日午後2時から始まる、ホッターラヴァートークのお時間だ。俺はパーソナリティのアンソニー・フィールドだ、よろしくな。この番組ではみんなのリクエストを待ってるぞ。素敵な恋のエピソードと一緒にダイヤルを回してくれ。今日のテーマは「ひと夏の恋」だ。じゃんじゃん送ってくれ―――
<br> ―――ハロォウ。ディスイズホッターラヴァートーク。たった今からこのラジオは平日午後2時から始まる、ホッターラヴァートークのお時間だ。俺はパーソナリティのアンソニー・フィールドだ、よろしくな。この番組ではみんなのリクエストを待ってるぞ。素敵な恋のエピソードと一緒にダイヤルを回してくれ。今日のテーマは「ひと夏の恋」だ。じゃんじゃん送ってくれ―――
 興味のないラジオの音は、まるで周波数をずらしたかのようにきこえなくなっていった。僕は、お洒落な造りの電灯に止まっている騒々しいカモメたちの声に耳を傾けた。そして、ひたすら海鑑賞を続行した。ターコイズの美しい海だった。僕はただ物を眺めるのが好きな子供でもあった。
<br> 興味のないラジオの音は、まるで周波数をずらしたかのようにきこえなくなっていった。僕は、お洒落な造りの電灯に止まっている騒々しいカモメたちの声に耳を傾けた。そして、ひたすら海鑑賞を続行した。ターコイズの美しい海だった。僕はただ物を眺めるのが好きな子供でもあった。
 急に背後から声がした。
<br> 急に背後から声がした。
「あなた、海のどこが好きなの?」
<br>「あなた、海のどこが好きなの?」
 振り返るとホリゾン・ブルーのワンピースを着た少女が立っていた。麦藁帽子を深く被っている。この町では珍しく百合ような白い肌をしていた。
<br> 振り返るとホリゾン・ブルーのワンピースを着た少女が立っていた。麦藁帽子を深く被っている。この町では珍しく百合ような白い肌をしていた。
 この街に来て満足に人と会話していない僕はただ固まったまま、彼女の顔を見ていた。10秒ほど経っただろうか、彼女は気づいていないのかと問いただすような刺々しい口調で、もう一度言った。
<br> この街に来て満足に人と会話していない僕はただ固まったまま、彼女の顔を見ていた。10秒ほど経っただろうか、彼女は気づいていないのかと問いただすような刺々しい口調で、もう一度言った。
「あなたは、海のどこが好きなのかしら?」
<br>「あなたは、海のどこが好きなのかしら?」
 睨まれた僕は、彼女の態度にすこし驚いたが、すぐに答えた。
<br> 睨まれた僕は、彼女の態度にすこし驚いたが、すぐに答えた。
「別に海が好きなわけではないよ。」
<br>「別に海が好きなわけではないよ。」
「あら、そうなの」
<br>「あら、そうなの」
 彼女はさぞ意外だというふうに言った。
<br> 彼女はさぞ意外だというふうに言った。
「では、なんで海なんか眺めてるの?」
<br>「では、なんで海なんか眺めてるの?」
「僕は海を見ているんじゃない―」
<br>「僕は海を見ているんじゃない―」
 僕は遠くを指差して言った。
<br> 僕は遠くを指差して言った。
「―水平線を見ているのさ」
<br>「―水平線を見ているのさ」
「水平線も海じゃない」
<br>「水平線も海じゃない」
「違うさ」
<br>「違うさ」
「なにも違わないわ」
<br>「なにも違わないわ」
 しばしの沈黙の後、少女はまるでそれが当たり前だというように、僕の左隣に腰を下ろした。その後、2人は黙って海をみていた。いつの間にかラジオでは流行りのラブソングが流れていた。曲名は、思い出せなかった。
<br> しばしの沈黙の後、少女はまるでそれが当たり前だというように、僕の左隣に腰を下ろした。その後、2人は黙って海をみていた。いつの間にかラジオでは流行りのラブソングが流れていた。曲名は、思い出せなかった。
「この街に来るひとはみんな、海が好きなのだと思っていたわ」
<br>「この街に来るひとはみんな、海が好きなのだと思っていたわ」
 彼女は言った。
<br> 彼女は言った。
「だって、海とパブしかない街よ」
<br>「だって、海とパブしかない街よ」
「僕は好きでこの街に来たわけではないからね。」
<br>「僕は好きでこの街に来たわけではないからね。」
「そうなのね」
<br>「そうなのね」
 またの沈黙。今度は僕が質問してみた。
<br> またの沈黙。今度は僕が質問してみた。
「君はこの街の人なの?」
<br>「君はこの街の人なの?」
 答えは返ってこなかった。僕は水平線から目を離し、彼女の顔を見た。彼女はグレーの瞳に涙を浮かべて俯いていた。僕は、こんな時何をすべきかを心得ているような、立派な男ではなかった。僕は彼女から目を逸らし、水平線へ向き直った。そしてしばらく彼女と波の音に耳を傾けているような気分になった。次に振り返った時には、もう彼女はいなかった。
<br> 答えは返ってこなかった。僕は水平線から目を離し、彼女の顔を見た。彼女はグレーの瞳に涙を浮かべて俯いていた。僕は、こんな時何をすべきかを心得ているような、立派な男ではなかった。僕は彼女から目を逸らし、水平線へ向き直った。そしてしばらく彼女と波の音に耳を傾けているような気分になった。次に振り返った時には、もう彼女はいなかった。
 そこにはただ純白の砂浜があるだけだった。
<br> そこにはただ純白の砂浜があるだけだった。
 ―――うんうんそうくだ、そうだろうな。ラジオネーム“恋するコウモリ”ちゃん。少しは参考になったかい?よしっ、これで君の悩みは解決さ。来週のこの時間、成功のお便り待ってるぜ。俺は昔は無口でつまらない奴だった。そんな俺を今のようなグッド・ガイに変えたのは“経験”さ。悩んでる子は経験しろ。経験が君を助けてくれるんだ―――
<br> ―――うんうんそうくだ、そうだろうな。ラジオネーム“恋するコウモリ”ちゃん。少しは参考になったかい?よしっ、これで君の悩みは解決さ。来週のこの時間、成功のお便り待ってるぜ。俺は昔は無口でつまらない奴だった。そんな俺を今のようなグッド・ガイに変えたのは“経験”さ。悩んでる子は経験しろ。経験が君を助けてくれるんだ―――
 一羽のカモメが海岸から飛んできて、僕の目前で上昇して行った。僕はその群れを目で追って空を見た。青にその胸の白さが映えていた。
<br> 一羽のカモメが海岸から飛んできて、僕の目前で上昇して行った。僕はその群れを目で追って空を見た。青にその胸の白さが映えていた。
「ああ、思い出した。」
<br>「ああ、思い出した。」
 あのラブソングの名前はたしか―
<br> あのラブソングの名前はたしか―
 ―Never mind,she's just a daydream―
<br> ―Never mind,she's just a daydream―
 ―気にするな、あの子は白昼夢―
<br> ―気にするな、あの子は白昼夢―






 その時からこの世の全てが踊り狂っている見え、そして儚げに微笑んでいる様に見えた。今までの世界に、より色がついたような感じだ。
<br> その時からこの世の全てが踊り狂っている見え、そして儚げに微笑んでいる様に見えた。今までの世界に、より色がついたような感じだ。


 何故だろう。村上春樹が言葉を紡いだ言葉はとても美しく感じられるのに、僕が並べた言葉は酷く陳腐に感じるんだ。
<br> 何故だろう。村上春樹が言葉を紡いだ言葉はとても美しく感じられるのに、僕が並べた言葉は酷く陳腐に感じるんだ。


 言わば、嵐で森で沼で木漏れ日なんだよ。君は
<br> 言わば、嵐で森で沼で木漏れ日なんだよ。君は




「ねえクオ」
<br><br>「ねえクオ」
「どうしたんだよ、急に。」
<br>「どうしたんだよ、急に。」
「ねえ、“―――”って大嫌いなの。」
<br>「ねえ、“―――”って大嫌いなの。」
「それは、何故?」
<br>「それは、何故?」
「“―――”って、ずっと続くのよ。同じ軌道を同じ」
<br>「“―――”って、ずっと続くのよ。同じ軌道を同じ」


 嵐の前の風に含まれる、静寂と少しの危険の香り。
<br> 嵐の前の風に含まれる、静寂と少しの危険の香り。


 この気持ちを忘れたくない。忘れないでよ。未来の俺。
<br> この気持ちを忘れたくない。忘れないでよ。未来の俺。


 流行りは廻るとよく言うじゃない?でも、あれってちょっとと間違ってると思うの。一周まわってきて、ああ懐かしいなってなっても、やっぱり少し違うのよ。
<br> 流行りは廻るとよく言うじゃない?でも、あれってちょっとと間違ってると思うの。一周まわってきて、ああ懐かしいなってなっても、やっぱり少し違うのよ。


 なあ、「資本論」には特定の世代の人口増加に対する対処法は載ってないのか?
<br> なあ、「資本論」には特定の世代の人口増加に対する対処法は載ってないのか?


 貴方の目はずっと孤独だわ。海岸ではじめて貴方を見かけた時からずっと。だから私は声を掛けたの。私から抜け落ちた隙間を、貴方が埋めてくれるんじゃないか、ってね。
<br> 貴方の目はずっと孤独だわ。海岸ではじめて貴方を見かけた時からずっと。だから私は声を掛けたの。私から抜け落ちた隙間を、貴方が埋めてくれるんじゃないか、ってね。




 僕は彼女との体験を詩にし、歌にし、本にした。
<br><br> 僕は彼女との体験を詩にし、歌にし、本にした。




 クッキーをくれるパブのおじさん曰く、あの書店の|父娘《おやこ》は遠いところへ行ってしまったらしい。その時の僕じゃ、絶対届かないところへ。
<br> クッキーをくれるパブのおじさん曰く、あの書店の|父娘《おやこ》は遠いところへ行ってしまったらしい。その時の僕じゃ、絶対届かないところへ。
 でも
<br> でも






 次の日、僕はまたあの海岸にいた。そして今度は砂浜に相応しい本を読んでいた。しかし、ページを捲る手はなかなか動かなかった。読みたいけれど進まない、そういう時があるのだ。仕方がないから僕は栞を挟んで本を閉じ、海を眺めはじめた。その日も太陽は手加減などするつもりがないという様子で、素晴らしく強い光線で僕らを容赦なく焼き続けていた。そういえば、この町は本当に雨が降らないところだ。雲が出ていたのだってあの新月の日くらいだったな。そんなことを考えていると、どこからか―多分あのパーラーからだろう―いつぞやのラジオが流れてきた。
<br> 次の日、僕はまたあの海岸にいた。そして今度は砂浜に相応しい本を読んでいた。しかし、ページを捲る手はなかなか動かなかった。読みたいけれど進まない、そういう時があるのだ。仕方がないから僕は栞を挟んで本を閉じ、海を眺めはじめた。その日も太陽は手加減などするつもりがないという様子で、素晴らしく強い光線で僕らを容赦なく焼き続けていた。そういえば、この町は本当に雨が降らないところだ。雲が出ていたのだってあの新月の日くらいだったな。そんなことを考えていると、どこからか―多分あのパーラーからだろう―いつぞやのラジオが流れてきた。
 ―――そんな男は早く忘れちまいな、コウモリちゃん。俺のラジオを聞くようなキュートでセンスのある女の子を振るなんて、そいつはとんだ大馬鹿者さ。君にはもっと良い人がいるって事だぜ。考えようによってはこれも経験なんじゃないか?まあ、そんなことはどうでもいいか。そういや、プラトンの言葉にこんなのがあったな。『音楽は、世界に魂を与え、精神に翼をあたえる。そして想像力に高揚を授け、あらゆるものに生命をさずける。』あのプラトンさんも言ってるんだ。一曲かまして忘れよう。じゃあ今日はコウモリちゃんが先週もリクエストしてくれたあの曲を流すとしようか。あいつなんかこの歌を聞いてさっさと忘れちまうことだ。じゃあみんな、そしてコウモリちゃん、聞いてくれ、|忌野清志郎《いまわのきよしろう》で『デイ・ドリーム・ビリーバー』―――
<br> ―――そんな男は早く忘れちまいな、コウモリちゃん。俺のラジオを聞くようなキュートでセンスのある女の子を振るなんて、そいつはとんだ大馬鹿者さ。君にはもっと良い人がいるって事だぜ。考えようによってはこれも経験なんじゃないか?まあ、そんなことはどうでもいいか。そういや、プラトンの言葉にこんなのがあったな。『音楽は、世界に魂を与え、精神に翼をあたえる。そして想像力に高揚を授け、あらゆるものに生命をさずける。』あのプラトンさんも言ってるんだ。一曲かまして忘れよう。じゃあ今日はコウモリちゃんが先週もリクエストしてくれたあの曲を流すとしようか。あいつなんかこの歌を聞いてさっさと忘れちまうことだ。じゃあみんな、そしてコウモリちゃん、聞いてくれ、|忌野清志郎《いまわのきよしろう》で『デイ・ドリーム・ビリーバー』―――
 ああ思い出した。そうだ、先週曲名が思い出せなかったのはこれだ。たしかこの曲はザ・モンキーズの『Daydream Believer』を日本語に直したものだった。日本語版では悲哀な感じの失恋ソングだが、本物の方は恋人との惚気話のような歌詞だったはずだ。
<br> ああ思い出した。そうだ、先週曲名が思い出せなかったのはこれだ。たしかこの曲はザ・モンキーズの『Daydream Believer』を日本語に直したものだった。日本語版では悲哀な感じの失恋ソングだが、本物の方は恋人との惚気話のような歌詞だったはずだ。
 コウモリちゃんは失敗したそうだ。そんな彼女には、日本語版のほうが心に染みるのかもしれない。
<br> コウモリちゃんは失敗したそうだ。そんな彼女には、日本語版のほうが心に染みるのかもしれない。


 懐かしいアコースティックギターのメロディが耳をくすぐる。
<br><br> 懐かしいアコースティックギターのメロディが耳をくすぐる。
 人肌が恋しくなる季節。
<br><br> 人肌が恋しくなる季節。


 そうだ。僕は詩人だ。詩人が紡ぐものは全て物語だ。僕のこの人生も、
<br><br> そうだ。僕は詩人だ。詩人が紡ぐものは全て物語だ。僕のこの人生も、


 図書館奇譚
<br><br> 図書館奇譚
 僕は、何を失った?何を得た?
<br> 僕は、何を失った?何を得た?
 9/27 17:40
<br> 9/27 17:40


「夜が好きなら、夜を文章に書けばいい。その本を開くだけで、どこでも夜と出会えるように。だから僕は君を書いた。」
<br>「夜が好きなら、夜を文章に書けばいい。その本を開くだけで、どこでも夜と出会えるように。だから僕は君を書いた。」
 彼女は泣きながら言った。
<br> 彼女は泣きながら言った。
「貴方って|気障《キザ》ね。変わらないわ。」
<br>「貴方って|気障《キザ》ね。変わらないわ。」
 僕は彼女を引いて抱き締めた。
<br> 僕は彼女を引いて抱き締めた。
「僕は|気障《キザ》なんかじゃない。」
<br>「僕は|気障《キザ》なんかじゃない。」
「―ただの詩人さ」
<br>「―ただの詩人さ」


 僕は彼女に、仕返しのキスをした。
<br> 僕は彼女に、仕返しのキスをした。


 帽子の下にこっそり角を隠すユニコーンのように
<br> 帽子の下にこっそり角を隠すユニコーンのように


 人間は、ときとして、充たされるか、充たされないか、わからない欲望のために、一生を捧げてしまう。その愚をわらうものは、畢竟、人生に対する路傍の人にすぎない。
<br> 人間は、ときとして、充たされるか、充たされないか、わからない欲望のために、一生を捧げてしまう。その愚をわらうものは、畢竟、人生に対する路傍の人にすぎない。
 芋粥―――芥川龍之介
<br> 芋粥―――芥川龍之介


 刹那の幻想を、お楽しみください。
<br> 刹那の幻想を、お楽しみください。


 恒川光太郎の何かがそこに残っている気がした。
<br> 恒川光太郎の何かがそこに残っている気がした。


 川端康成のサインの入った全集がそこにはあった。
<br> 川端康成のサインの入った全集がそこにはあった。


 本の良さを僕に伝えようとするたびに彼女は読んだ時の興奮や感動思いだしては、笑いながら泣いていた。いい笑顔だった。僕はこんな幸せな涙があるのかと思った。
<br> 本の良さを僕に伝えようとするたびに彼女は読んだ時の興奮や感動思いだしては、笑いながら泣いていた。いい笑顔だった。僕はこんな幸せな涙があるのかと思った。
 とてもいい時間だった。
<br> とてもいい時間だった。


 きっとこういう時に人はリスカするんだろうな。
<br> きっとこういう時に人はリスカするんだろうな。


 僕は彼女をベッドに座らせた。
<br> 僕は彼女をベッドに座らせた。
「君は裸でこのベッドで座っていてくれないか。座っているだけでいいんだ。何もしないでいい。いや、スマホとか眺めてリラックスしていてくれ」
<br>「君は裸でこのベッドで座っていてくれないか。座っているだけでいいんだ。何もしないでいい。いや、スマホとか眺めてリラックスしていてくれ」


 僕は自分の詩集を手に取った。
<br> 僕は自分の詩集を手に取った。
 赤いダッフルコートを着た彼女は言った。
<br> 赤いダッフルコートを着た彼女は言った。
「その詩集、いいですよ」
<br>「その詩集、いいですよ」
 僕は聞いた。
<br> 僕は聞いた。
「この詩集が好きなんですか」
<br>「この詩集が好きなんですか」


 最悪だ…!
<br> 最悪だ…!
 やばすぎる
<br> やばすぎる


 その夜に僕は幽霊を見る。
<br> その夜に僕は幽霊を見る。
 海辺のカフカ―――村上春樹
<br> 海辺のカフカ―――村上春樹


 濃密さが足りない
<br> 濃密さが足りない


 なんて魅力的な|濃密さ《、、、》なんだろう…!
<br> なんて魅力的な|濃密さ《、、、》なんだろう…!


 僕は自分から抜け出せない。
<br> 僕は自分から抜け出せない。


 凄まじいんだ
<br> 凄まじいんだ


「あの風だ。」
<br>「あの風だ。」
 僕はそう思った。僕はその時海辺のカフカを読んでいて、途中塾の受講室から外に出たところだった。
<br> 僕はそう思った。僕はその時海辺のカフカを読んでいて、途中塾の受講室から外に出たところだった。
 冷たい風が吹いてきたのだ。身体と服の間の温度をしっかりと拭い去っていくような風だ。
<br> 冷たい風が吹いてきたのだ。身体と服の間の温度をしっかりと拭い去っていくような風だ。
 僕は駐車場にたってじっと虚空を見つめていた。いやその時僕は世界を感じていた。小学校の頃、午後5時、友人と遊んだ工事現場。多分今とちょうど同じ頃。この風が吹いていた。瓦礫の上で僕はこの風に吹かれていたんだ。空と空気の色もおんなじだ。それは白くくすんでいて、生気がない分さっぱりしている。
<br> 僕は駐車場にたってじっと虚空を見つめていた。いやその時僕は世界を感じていた。小学校の頃、午後5時、友人と遊んだ工事現場。多分今とちょうど同じ頃。この風が吹いていた。瓦礫の上で僕はこの風に吹かれていたんだ。空と空気の色もおんなじだ。それは白くくすんでいて、生気がない分さっぱりしている。
 僕は瓦礫の上に佇む僕を見た。その時の僕には、それはまるで僕のメタファーの様に感じられた。それは確かに僕で、もう僕には欠けらも残されていない様な僕だった。
<br> 僕は瓦礫の上に佇む僕を見た。その時の僕には、それはまるで僕のメタファーの様に感じられた。それは確かに僕で、もう僕には欠けらも残されていない様な僕だった。
 15歳の僕はあと2ヶ月しか生きられない。
<br> 15歳の僕はあと2ヶ月しか生きられない。
 死に場所は探せるのか?
<br> 死に場所は探せるのか?


 10/10
<br> 10/10


 33章やばい
<br> 33章やばい


 たった今僕は真実に気がついたよ。本も世界も心も扉もみんな―――ひらくものだ。
<br> たった今僕は真実に気がついたよ。本も世界も心も扉もみんな―――ひらくものだ。


「恋をしたことがないんです。」
<br>「恋をしたことがないんです。」
 僕は噛み締めるようにもう一度言った。
<br> 僕は噛み締めるようにもう一度言った。
「恋をしたことがない。燃えるように熱い…って言うのは野暮なんでしょうか。」
<br>「恋をしたことがない。燃えるように熱い…って言うのは野暮なんでしょうか。」


 実を言うと僕はこの本に心を鷲掴みにされていた。いや、 もしかするとこの本ではなく、現実にある何かしらに僕の心は囚われていたのかもしれない。しかしそれは僕には判断がつかなかった。もともと現実と幻想の輪郭を薄めてグラデーションにしていき、最後にはひとつにしてしまうような、そんな本であった。僕はその本の思惑通り、ひどく混乱していた。この心を捕らえて掻き乱すものはなんだ?
<br> 実を言うと僕はこの本に心を鷲掴みにされていた。いや、 もしかするとこの本ではなく、現実にある何かしらに僕の心は囚われていたのかもしれない。しかしそれは僕には判断がつかなかった。もともと現実と幻想の輪郭を薄めてグラデーションにしていき、最後にはひとつにしてしまうような、そんな本であった。僕はその本の思惑通り、ひどく混乱していた。この心を捕らえて掻き乱すものはなんだ?
 
 
 僕の心も、すっかり秋に衣替え。
<br> 僕の心も、すっかり秋に衣替え。


 10/11
<br> 10/11


 僕は単純明快なんだ。それでいて曖昧模糊、複雑怪奇。
<br> 僕は単純明快なんだ。それでいて曖昧模糊、複雑怪奇。
 掴みどころもないんだ。
<br> 掴みどころもないんだ。




 海辺のカフカを読み終え受講室を出るとそこには彼がいた。彼の名はガチョウ。僕の親友だ。
<br> 海辺のカフカを読み終え受講室を出るとそこには彼がいた。彼の名はガチョウ。僕の親友だ。
 彼は言った。
<br> 彼は言った。
「話をしよう。」
<br>「話をしよう。」
 僕は黙って彼の横に座る。彼は空を見上げた。辺りは日が暮れる前の、闇が染み出してくるような、この時間独特の気配がしていた。何者かがゆっくりと、しかし確実に光を束ねて明日へと持っていくのだ。
<br> 僕は黙って彼の横に座る。彼は空を見上げた。辺りは日が暮れる前の、闇が染み出してくるような、この時間独特の気配がしていた。何者かがゆっくりと、しかし確実に光を束ねて明日へと持っていくのだ。
 僕は彼に向けて言葉を放つ。
<br> 僕は彼に向けて言葉を放つ。
「なあ、僕は君に話したいことがある。多分一方的に話すことになるけど、聞いてもらっていいかい?」
<br>「なあ、僕は君に話したいことがある。多分一方的に話すことになるけど、聞いてもらっていいかい?」
 彼は親の機嫌を伺う痛々しい雛鳥のような笑顔で答えた。
<br> 彼は親の機嫌を伺う痛々しい雛鳥のような笑顔で答えた。
「もちろん。君の好きなようにすればいい。」
<br>「もちろん。君の好きなようにすればいい。」
 彼はいつもそういう笑い方をする。痛々しく笑うのだ。その痛々しさがどこから来るか、僕は知らない。時々考えてみることがある。僕が彼の笑顔に痛々しさを見るのは、僕が彼に痛々しい負い目があるからなのではないか、と。でもその度に僕は思う。彼の笑顔にあるその痛々しさは、彼に生まれつき備え付けられていた物なのかもしれない、と。僕はこの問答を幾度となく繰り返してきたのだが、答えに辿り着くような気配は全くない。むしろ混乱していくように感じる。僕は彼の笑顔を見るたびにそう思う。
<br> 彼はいつもそういう笑い方をする。痛々しく笑うのだ。その痛々しさがどこから来るか、僕は知らない。時々考えてみることがある。僕が彼の笑顔に痛々しさを見るのは、僕が彼に痛々しい負い目があるからなのではないか、と。でもその度に僕は思う。彼の笑顔にあるその痛々しさは、彼に生まれつき備え付けられていた物なのかもしれない、と。僕はこの問答を幾度となく繰り返してきたのだが、答えに辿り着くような気配は全くない。むしろ混乱していくように感じる。僕は彼の笑顔を見るたびにそう思う。
 僕は最初のひと言を話し始めようと、息を吸った。しかしそれは空を切った彼の手によって止められてしまう。
<br> 僕は最初のひと言を話し始めようと、息を吸った。しかしそれは空を切った彼の手によって止められてしまう。
「悪い。少し散歩に行かないか。」
<br>「悪い。少し散歩に行かないか。」
 彼は僕に向き直って言った。
<br> 彼は僕に向き直って言った。
「散歩しながら君の話を聞きたいんだ。」
<br>「散歩しながら君の話を聞きたいんだ。」


 ❇︎ ✴︎ ✳︎
<br><br> ❇︎ ✴︎ ✳︎


 僕らは道なりに歩いていた。辺りには冷たい風が吹いていた。僕はひとつひとつの言葉を確かめるように話し始めた。
<br><br> 僕らは道なりに歩いていた。辺りには冷たい風が吹いていた。僕はひとつひとつの言葉を確かめるように話し始めた。
「君は芥川龍之介の作品を読んだことがあるかい?」
<br>「君は芥川龍之介の作品を読んだことがあるかい?」
 返事はない。僕は彼との会話にまともな返事は求めてないし、彼も返事することは望んでいない。
<br> 返事はない。僕は彼との会話にまともな返事は求めてないし、彼も返事することは望んでいない。
「彼は天才だと思うんだ。彼の文章はまるでがちがちに固まった銀の檻のようだ。全てが計算し尽くされたロジックでできている。でも多分それは彼自身が計算した物ではないんだ。彼は彼が生きている世界を隅から隅まで捉えて、それを端から端まで文章にしただけなんだ。その世界の澱を自由を含みを必要な分だけ絶妙に取捨選択して、選んだ全てで造られている。もちろん作家は基本的にそうだ。彼が天才たる所以はこの時の“捉える”というところにあると思う。」
<br>「彼は天才だと思うんだ。彼の文章はまるでがちがちに固まった銀の檻のようだ。全てが計算し尽くされたロジックでできている。でも多分それは彼自身が計算した物ではないんだ。彼は彼が生きている世界を隅から隅まで捉えて、それを端から端まで文章にしただけなんだ。その世界の澱を自由を含みを必要な分だけ絶妙に取捨選択して、選んだ全てで造られている。もちろん作家は基本的にそうだ。彼が天才たる所以はこの時の“捉える”というところにあると思う。」
 彼は難しい顔をして黙々と前へ進んでいく。僕は話題を変える。
<br> 彼は難しい顔をして黙々と前へ進んでいく。僕は話題を変える。
「まあそんなことはいいんだ。」
<br>「まあそんなことはいいんだ。」
 僕はまるで芥川龍之介が素晴らしさはこの世界とは全くの無関係で誰にも必要とされていない物であるかのようにそう言った。
<br> 僕はまるで芥川龍之介が素晴らしさはこの世界とは全くの無関係で誰にも必要とされていない物であるかのようにそう言った。
「僕はさっきまで“海辺のカフカ”を読んでいてね。村上春樹の作品さ。」
<br>「僕はさっきまで“海辺のカフカ”を読んでいてね。村上春樹の作品さ。」
「ちょっと待って。ジャンパーを着たい。」
<br>「ちょっと待って。ジャンパーを着たい。」
 彼の一言が僕の戯言を遮る。
<br> 彼の一言が僕の戯言を遮る。
「このリュック、少し持っていてくれないか。」
<br>「このリュック、少し持っていてくれないか。」
「いいよ。もちろん。」
<br>「いいよ。もちろん。」
 彼は大きいリュックサックと手に持っていた小さい鞄を僕に手渡し、ジャンパーを着た。僕は受け取ったリュックサックを背負い、小さな鞄は右手に持った。どちらも大きさの割にとても軽かった。
<br> 彼は大きいリュックサックと手に持っていた小さい鞄を僕に手渡し、ジャンパーを着た。僕は受け取ったリュックサックを背負い、小さな鞄は右手に持った。どちらも大きさの割にとても軽かった。
「ありがとう。」
<br>「ありがとう。」
 彼は僕から荷物を受け取ろうとする。僕は気が変わって、出された彼の手を抑えた。
<br> 彼は僕から荷物を受け取ろうとする。僕は気が変わって、出された彼の手を抑えた。
「いや、僕に持たせてくれよ。僕は今まで何も持っていなくて違和感があったんだ。」
<br>「いや、僕に持たせてくれよ。僕は今まで何も持っていなくて違和感があったんだ。」
「それならお願いするよ。」
<br>「それならお願いするよ。」
 彼はまた痛々しい笑みで答えた。僕はなんだか居心地が悪くなる。
<br> 彼はまた痛々しい笑みで答えた。僕はなんだか居心地が悪くなる。
「ひとは不自由な方が生きやすいんだ。“海辺のカフカ”の中でもちょうど同じような話をしていたよ。僕らはある一定の制約の上じゃないとうまく生きられない。ここでは君の不自由という財産を僕が奪ってしまったんだ。」
<br>「ひとは不自由な方が生きやすいんだ。“海辺のカフカ”の中でもちょうど同じような話をしていたよ。僕らはある一定の制約の上じゃないとうまく生きられない。ここでは君の不自由という財産を僕が奪ってしまったんだ。」
 彼は前を向いてこう聞く。
<br> 彼は前を向いてこう聞く。
「それは―――君の自由意志で?」
<br>「それは―――君の自由意志で?」
「そう。」
<br>「そう。」
 僕も前を向く。
<br> 僕も前を向く。
「―――僕の自由意志で。」
<br>「―――僕の自由意志で。」
 暫く歩くと公園が見えてきた。小さい割に立派な遊具のある公園だ。辺りはもうすっかり暗くなっていて、ひとはいなかった。
<br> 暫く歩くと公園が見えてきた。小さい割に立派な遊具のある公園だ。辺りはもうすっかり暗くなっていて、ひとはいなかった。
「そう。」
<br>「そう。」
 僕は公園の入り口の方で彼に向き直った。
<br> 僕は公園の入り口の方で彼に向き直った。
「さっき読んだ本の中に図書館が出てくるんだ。高松の海の近くにある図書館でね。素晴らしいところなんだ。そこには僕がいて大島さんがいて佐伯さんがいたんだ。」
<br>「さっき読んだ本の中に図書館が出てくるんだ。高松の海の近くにある図書館でね。素晴らしいところなんだ。そこには僕がいて大島さんがいて佐伯さんがいたんだ。」
 僕は彼に微笑みかけた。彼の顔は暗くてよく見えない。
<br> 僕は彼に微笑みかけた。彼の顔は暗くてよく見えない。
「大島さんっていうのは難しいけれど素敵なお兄さんなんだ。僕を気にかけてくれる。そして佐伯さんは端正で美しい女性で、その図書館の館長なんだ。僕はその瀬戸内の時の狭間のような世界で過ごすんだ。」
<br>「大島さんっていうのは難しいけれど素敵なお兄さんなんだ。僕を気にかけてくれる。そして佐伯さんは端正で美しい女性で、その図書館の館長なんだ。僕はその瀬戸内の時の狭間のような世界で過ごすんだ。」
 僕はくるりと彼に背を向けて遠くを見た。
<br> 僕はくるりと彼に背を向けて遠くを見た。
「今までで1番至福の読書体験だった。この本を読んで、僕は願い事が2つ増えた。それはなんだと思う?」
<br>「今までで1番至福の読書体験だった。この本を読んで、僕は願い事が2つ増えた。それはなんだと思う?」
 背後の彼から答えはない。彼はぜんまいの切れたブリキのおもちゃのようにそこにいた。いや、もしかしたらそこに彼はいなかったのかもしれない。人間は背後を確認する術を持ち合わせていない。
<br> 背後の彼から答えはない。彼はぜんまいの切れたブリキのおもちゃのようにそこにいた。いや、もしかしたらそこに彼はいなかったのかもしれない。人間は背後を確認する術を持ち合わせていない。
 闇はだんだんと濃くなっている。風は勢いを増す。僕の耳にはその風の音だけが聞こえる。
<br> 闇はだんだんと濃くなっている。風は勢いを増す。僕の耳にはその風の音だけが聞こえる。
「ひとつは“図書館を建てたい”。僕は読み終えた時に、そう願ってしまっていた。僕は自分の図書館が欲しい。うん。そうだ。僕は図書館をつくりたいんだ。そこまで大きくなくていい。ただその建物は明治の頃の建物みたいにレンガで造られて、趣があるんだ。そこには地下室があって、誰かの思い出がそこで眠る。壁には美しい森の絵が飾られて誰かがその絵に吸い込まれていく。館内は正しく管理されたルールに基づいて整理されて、正しい本が正しい場所にある。そして館長の部屋では、僕が万年筆で文章を書いているんだ。そこにある窓からは昼下がりの、もしくは早朝の、あるいは夕暮れの、四季折々の庭が見えるんだ。僕はそこで何かに向き合う。ただ黙々と向き合い続けるんだ。」
<br>「ひとつは“図書館を建てたい”。僕は読み終えた時に、そう願ってしまっていた。僕は自分の図書館が欲しい。うん。そうだ。僕は図書館をつくりたいんだ。そこまで大きくなくていい。ただその建物は明治の頃の建物みたいにレンガで造られて、趣があるんだ。そこには地下室があって、誰かの思い出がそこで眠る。壁には美しい森の絵が飾られて誰かがその絵に吸い込まれていく。館内は正しく管理されたルールに基づいて整理されて、正しい本が正しい場所にある。そして館長の部屋では、僕が万年筆で文章を書いているんだ。そこにある窓からは昼下がりの、もしくは早朝の、あるいは夕暮れの、四季折々の庭が見えるんだ。僕はそこで何かに向き合う。ただ黙々と向き合い続けるんだ。」
 僕は夢を見るような感じで目を閉じた。僕は今僕の図書館にいる。そしてその裏には綺麗な海岸がある。僕はそこにいき水平線を認めながら波の音に耳を澄ます。誰かの記憶は地下室で眠る。絵に吸い込まれたひとは、時間があまり関係の無い場所で暮らす。海岸には僕がいる。書架は整理されている。そこは非常にメタフォリカルな物事に溢れている。
<br> 僕は夢を見るような感じで目を閉じた。僕は今僕の図書館にいる。そしてその裏には綺麗な海岸がある。僕はそこにいき水平線を認めながら波の音に耳を澄ます。誰かの記憶は地下室で眠る。絵に吸い込まれたひとは、時間があまり関係の無い場所で暮らす。海岸には僕がいる。書架は整理されている。そこは非常にメタフォリカルな物事に溢れている。
「そう。そしてその図書館はメタフォリカルなんだ。誰にとってもね。実は本の中の図書館は、僕と大島さんに取っても佐伯さんにとってもメタフォリカルなものではないんだ。その世界は全てメタフォリカルに取って代わることができるから、それは彼らの中で実態を持って互いを繋ぐ、パイプのような物になっているんだ。それは心臓と脳を繋ぐ血管のように無くてはひとは生きられない。でも―――」
<br>「そう。そしてその図書館はメタフォリカルなんだ。誰にとってもね。実は本の中の図書館は、僕と大島さんに取っても佐伯さんにとってもメタフォリカルなものではないんだ。その世界は全てメタフォリカルに取って代わることができるから、それは彼らの中で実態を持って互いを繋ぐ、パイプのような物になっているんだ。それは心臓と脳を繋ぐ血管のように無くてはひとは生きられない。でも―――」
 僕は言葉をきった。ここまで喋るのに息を忘れていた。相変わらず背後の彼と思わしきものは動かない。僕は続ける。
<br> 僕は言葉をきった。ここまで喋るのに息を忘れていた。相変わらず背後の彼と思わしきものは動かない。僕は続ける。
「僕らの生きる世界は良くも悪くもメタフォリカルではないアレゴリーで溢れている。そう。僕らの世界には無くてはならないパイプが多すぎるんだ。だから僕はそこに僕だけのメタファーを創りたい。誰にとってもメタフォリカルな僕だけのメタファーだ。」
<br>「僕らの生きる世界は良くも悪くもメタフォリカルではないアレゴリーで溢れている。そう。僕らの世界には無くてはならないパイプが多すぎるんだ。だから僕はそこに僕だけのメタファーを創りたい。誰にとってもメタフォリカルな僕だけのメタファーだ。」
 僕はだんだんと振り向くのが恐ろしくなっていた。その恐怖に彼は殆ど関係がない。僕は話を終えるのを恐怖していた。できることならこのままずっと話を続けていたかった。僕は話すたびに僕が出来上がっていく感覚にすっかり陶酔していた。もといた世界に戻りたくなかった。
<br> 僕はだんだんと振り向くのが恐ろしくなっていた。その恐怖に彼は殆ど関係がない。僕は話を終えるのを恐怖していた。できることならこのままずっと話を続けていたかった。僕は話すたびに僕が出来上がっていく感覚にすっかり陶酔していた。もといた世界に戻りたくなかった。
「ふたつめ、これはもっとシンプルだ。“愛する人が欲しい”。僕は本気で愛せる人が欲しい。これに関して僕はこれといった注文はない。ただ本気で愛したいと思える、そんな人が欲しくなったよ。」
<br>「ふたつめ、これはもっとシンプルだ。“愛する人が欲しい”。僕は本気で愛せる人が欲しい。これに関して僕はこれといった注文はない。ただ本気で愛したいと思える、そんな人が欲しくなったよ。」
 時間のようだ。目を開けると、辺りは真っ暗で、冷たい風がどうしようもないくらいに吹き荒れていた。そして僕はゆっくりと彼へと振り向く。まるで僕自身が鍵になったかの様に身体を180度回転させる。彼はそこにいる。耳元で扉が閉まるような重い音がした。
<br> 時間のようだ。目を開けると、辺りは真っ暗で、冷たい風がどうしようもないくらいに吹き荒れていた。そして僕はゆっくりと彼へと振り向く。まるで僕自身が鍵になったかの様に身体を180度回転させる。彼はそこにいる。耳元で扉が閉まるような重い音がした。
「僕の話は以上さ。これから僕はもっと強くある努力をしなくちゃいけないな。」
<br>「僕の話は以上さ。これから僕はもっと強くある努力をしなくちゃいけないな。」
「そうだね。」
<br>「そうだね。」
 彼はまた痛々しく笑う。風はもう止んだ。
<br> 彼はまた痛々しく笑う。風はもう止んだ。
 彼は言った。
<br> 彼は言った。
「もうすっかり暗くなってしまった。戻ろう。」
<br>「もうすっかり暗くなってしまった。戻ろう。」
 いつの間にか僕が持っていたはずのリュックは彼の背中にあった。
<br> いつの間にか僕が持っていたはずのリュックは彼の背中にあった。
「散歩はいいな。」
<br>「散歩はいいな。」
 僕は言った。
<br> 僕は言った。


 ❇︎ ✴︎ ✳︎
<br><br> ❇︎ ✴︎ ✳︎


「なあ、好きな音楽流してもいいかな。」
<br><br>「なあ、好きな音楽流してもいいかな。」
 ガチョウは言った。
<br> ガチョウは言った。
「いいよ。もちろん」
<br>「いいよ。もちろん」
 僕は答える。
<br> 僕は答える。


 笑っちゃうくらいいい景色だった。
<br> 笑っちゃうくらいいい景色だった。
 陽だまりの中で駆ける双子の女の子とその親。皆笑顔だった。
<br> 陽だまりの中で駆ける双子の女の子とその親。皆笑顔だった。


 父親を殺してみようか。(デイドリームビリーバー)
<br> 父親を殺してみようか。(デイドリームビリーバー)
 そして、明晰夢を絡めてみよう。(天才か…?)
<br> そして、明晰夢を絡めてみよう。(天才か…?)


 よくもこんな無茶な計画が立てられたものだ。これじゃあまるで蠱毒ではないか。
<br> よくもこんな無茶な計画が立てられたものだ。これじゃあまるで蠱毒ではないか。


 17年も待ったんだ。
<br> 17年も待ったんだ。


 その少年と母親の姿を見てクオはなんとも言えない寂寥感に襲われた。
<br> その少年と母親の姿を見てクオはなんとも言えない寂寥感に襲われた。


 アヒルとガチョウのモチーフ
<br> アヒルとガチョウのモチーフ


 私はこう思っていた。この世界の振れ幅はおかしい、と。究極の幸福と究極の絶望が同時に存在し得るなんて。
<br> 私はこう思っていた。この世界の振れ幅はおかしい、と。究極の幸福と究極の絶望が同時に存在し得るなんて。
(友の死)
<br>(友の死)
 それは簡単に、交錯することを知った。
<br> それは簡単に、交錯することを知った。


「これは夢なのかなぁ」
<br>「これは夢なのかなぁ」
 君は笑う。
<br> 君は笑う。


 山田香帆里
<br> 山田香帆里


 人物像を掴む為の特訓が必要だ
<br> 人物像を掴む為の特訓が必要だ


 バレンタインデーの学校は、青春に染まる。
<br> バレンタインデーの学校は、青春に染まる。
 この話の主人公こと僕、|村上光太《むらかみこうた》は1年B組の教室でひとり本を読んでいた。
<br> この話の主人公こと僕、|村上光太《むらかみこうた》は1年B組の教室でひとり本を読んでいた。


 もし、人の生きる理由がより多くの幸せを感じることだとするならば、お金を持っている金持ちよりも貧乏人の方が、今を生きる人として優れているのではないだろうか。
<br> もし、人の生きる理由がより多くの幸せを感じることだとするならば、お金を持っている金持ちよりも貧乏人の方が、今を生きる人として優れているのではないだろうか。
 そう思うことが時々ある。なぜなら幸せは相対的なものだから。考えてみて欲しい、レコードを一つ貰って幸せを感じる人と、フェラーリを何台貰っても幸せと感じられない人。どちらが幸せだろう。
<br> そう思うことが時々ある。なぜなら幸せは相対的なものだから。考えてみて欲しい、レコードを一つ貰って幸せを感じる人と、フェラーリを何台貰っても幸せと感じられない人。どちらが幸せだろう。
 では、なぜ人はよりお金を稼ぎ、名誉を重んじ、社会の仕組みの中で偉くなろうと命を削るのだろう。
<br> では、なぜ人はよりお金を稼ぎ、名誉を重んじ、社会の仕組みの中で偉くなろうと命を削るのだろう。
 それは偏に、僕らは幸せを追い求める生き物であると同時に“勝利”というものの依存症だからだ。僕らは“勝利”に依存することでこの自然界を生き延び、現在のような“勝利”無しでも快適に生きることのできる、殆ど理想郷のような世界を創り出すことができた。しかし、僕らは歴史を歩むうちに“勝利”無しでは途轍もなく心配になるくらい、それに頼りきってしまっていたんだ。
<br> それは偏に、僕らは幸せを追い求める生き物であると同時に“勝利”というものの依存症だからだ。僕らは“勝利”に依存することでこの自然界を生き延び、現在のような“勝利”無しでも快適に生きることのできる、殆ど理想郷のような世界を創り出すことができた。しかし、僕らは歴史を歩むうちに“勝利”無しでは途轍もなく心配になるくらい、それに頼りきってしまっていたんだ。


 “勝利”によって生まれる“優越感”というものは非常に甘い罪の香りがする。人は、その香りが大好きだ。
<br> “勝利”によって生まれる“優越感”というものは非常に甘い罪の香りがする。人は、その香りが大好きだ。


 理解というものは、つねに誤解の総体に過ぎない。――村上春樹「スプートニクの恋人」
<br> 理解というものは、つねに誤解の総体に過ぎない。――村上春樹「スプートニクの恋人」


「つまり――ホームなのにアウェイってことかい?」
<br>「つまり――ホームなのにアウェイってことかい?」
 彼はひとしきり笑って言った。
<br> 彼はひとしきり笑って言った。
「俺が言ったことにしてよ。」
<br>「俺が言ったことにしてよ。」


 “ご祝儀感情”ねぇ……
<br> “ご祝儀感情”ねぇ……


 どこにでもいる女の子なんてどこにもいない。
<br> どこにでもいる女の子なんてどこにもいない。


 確かに、創作物の中で自分の思うように行動しない主人公というのは機能しないコントローラーと一緒で全くストレスの溜まるものだ。
<br> 確かに、創作物の中で自分の思うように行動しない主人公というのは機能しないコントローラーと一緒で全くストレスの溜まるものだ。


 黒板に爪立てて引っ掻いてる音聞いてるような不快な感じや
<br> 黒板に爪立てて引っ掻いてる音聞いてるような不快な感じや


 反知性主義は最近では論破するための論理だと思われているが、それは単に本当に馬鹿な人々が曲解してできた認識であって、本来の意味はエリート層等の所謂知識・思想を持った奴は普通の何も知らない奴より偉いんだという特権意識を持って国が運営されていることこそがおかしいんじゃないか、というところに反応した一種の皮肉である。
<br> 反知性主義は最近では論破するための論理だと思われているが、それは単に本当に馬鹿な人々が曲解してできた認識であって、本来の意味はエリート層等の所謂知識・思想を持った奴は普通の何も知らない奴より偉いんだという特権意識を持って国が運営されていることこそがおかしいんじゃないか、というところに反応した一種の皮肉である。
 したがって反権威主義、反権威的知性主義と呼ぶこともできるであろう。
<br> したがって反権威主義、反権威的知性主義と呼ぶこともできるであろう。
 反知性主義というのは、本来選民思想へのアンチテーゼなのだ。
<br> 反知性主義というのは、本来選民思想へのアンチテーゼなのだ。


 三島由紀夫はアイドルやな
<br> 三島由紀夫はアイドルやな


 最も猥褻なものは縛られた女の肉体である――サルトル
<br> 最も猥褻なものは縛られた女の肉体である――サルトル
 by三島由紀夫
<br> by三島由紀夫
 主体性があるのにそれが発揮できない状況に置かれているという美
<br> 主体性があるのにそれが発揮できない状況に置かれているという美


 サルトル――実存主義←その裏切りによる傷――W村上→「終わらない日常」日本人のテーマ
<br> サルトル――実存主義←その裏切りによる傷――W村上→「終わらない日常」日本人のテーマ


 アフォリズム&デタッチメント→村上春樹≠連帯
<br> アフォリズム&デタッチメント→村上春樹≠連帯
 自傷&観察(放浪)&行動→村上龍
<br> 自傷&観察(放浪)&行動→村上龍


 ラディカルなうえで下品じゃない女性→やれやれと受け入れる村上春樹(逆らわない)
<br> ラディカルなうえで下品じゃない女性→やれやれと受け入れる村上春樹(逆らわない)


 モノ執着への終わり→z世代
<br> モノ執着への終わり→z世代
 モノ執着→田舎を切り捨てた文章
<br> モノ執着→田舎を切り捨てた文章


「あるいは」「そうかもしれない」同調と諦め。自分は空っぽ。同調しているようで突き放しているそのミラーリングによる孤独。
<br>「あるいは」「そうかもしれない」同調と諦め。自分は空っぽ。同調しているようで突き放しているそのミラーリングによる孤独。


 3.11→最後のチャンス
<br> 3.11→最後のチャンス


 ノルウェイの森→迷いの森 バブル以降の日本の預言の書
<br> ノルウェイの森→迷いの森 バブル以降の日本の預言の書


 風の歌を聴け→ずらしずらしずらし救済
<br> 風の歌を聴け→ずらしずらしずらし救済


 三島由紀夫 耽美の仮面の裏の祈り
<br> 三島由紀夫 耽美の仮面の裏の祈り


 浅ましい目だ。あんな目にはなりたくないね。
<br> 浅ましい目だ。あんな目にはなりたくないね。
 
 
 
 
     なんでも2 入寮
     == なんでも2 入寮 ==
     
     
     
     
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