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席に着くと友人たちが近づいて来て私のテーブルを囲い、興奮気味に、薫くんと何かあったの? と聞いてきた。いくつか他のグループも遠巻きに私を見つめているようで、私は人々の関心を集める快感に暫し身を浸した。ちらりと薫を盗み見る。彼は窓際で静かに本を捲っている。私は先刻手渡された覚悟を以て、いや、何も無いよと笑顔で答えようとしたものの、やはり隠すことは叶わず、込み上げて来た赤に顔を染めて俯くばかり。周囲のテンションが上がって行くのが俄かにわかり、私は居た堪れない気持ちになった。 | 席に着くと友人たちが近づいて来て私のテーブルを囲い、興奮気味に、薫くんと何かあったの? と聞いてきた。いくつか他のグループも遠巻きに私を見つめているようで、私は人々の関心を集める快感に暫し身を浸した。ちらりと薫を盗み見る。彼は窓際で静かに本を捲っている。私は先刻手渡された覚悟を以て、いや、何も無いよと笑顔で答えようとしたものの、やはり隠すことは叶わず、込み上げて来た赤に顔を染めて俯くばかり。周囲のテンションが上がって行くのが俄かにわかり、私は居た堪れない気持ちになった。 | ||
その放課後、学校近くの喫茶店、仲の良い四人に半ば強制的に連れられ、薫について根掘り葉掘り聞かれた。元々乗り気で無かった私は上手に喋ることができなかったように思うけれど、そういうことに無限に飢えた少女達には、私の話し手としての技量など些細な問題だったらしい。大変盛り上がった挙句、漸く解放された時には外は薄ら暗くなる時間帯だった。帰り道が同じ方向だった友人は他の理由で早めに帰ってしまっていたから、私は一人家路を急いだ。 | |||
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