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「すみません。あなたが年上だとは知らなくて。そもそも話せるとも思っていませんでした。ところでここはどのような場所なのでしょうか? あなたの名前はなんですか?」
「すみません。あなたが年上だとは知らなくて。そもそも話せるとも思っていませんでした。ところでここはどのような場所なのでしょうか? あなたの名前はなんですか?」
 僕の態度にやや不機嫌アヒルであったが、可愛らしいスーツのネクタイを弄ると、諦めたように答えた。
 僕の態度にやや不機嫌アヒルであったが、可愛らしいスーツのネクタイを弄ると、諦めたように答えた。
「私の名前はニジュウゴ。年も二十五歳だ。年を取るたびに私は名前が変わる。あと半年もすれば私はニジュウロクだ。……いやはや[#「いやはや」に傍点]、四半世紀も世界を見てきた。君たちからすれば短いと思われるかもしれないが、人間に換算すると百二十歳を超えておる。長い、あまりに長い時間だった……。ここでは時間などあまり関係ないが……。それでも長い時間だ。隣の生意気な黒猫はキュウだ。よろしく」
「私の名前はニジュウゴ。年も二十五歳だ。年を取るたびに私は名前が変わる。あと半年もすれば私はニジュウロクだ。……いやはや[#「いやはや」に傍点]、四半世紀も世界を見てきた。君たちからすれば短いと思われるかもしれないが、人間に換算すると百二十歳を超えておる。長い、あまりに長い時間だった……。ここでは時間などあまり関係ないが……。それでも長い時間だ。隣の生意気な黒猫は  だ。よろしく」
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 五号館を出ると、きつい日差しがアスファルトを焼いていた。遠くで、雑木林の影に入った柳が、涼しそうに揺れていた。私は腕時計を確認して、食堂へと向かった。
 五号館を出ると、きつい日差しがアスファルトを焼いていた。遠くで、雑木林の影に入った柳が、涼しそうに揺れていた。私は腕時計を確認して、食堂へと向かった。
 混雑のピークを過ぎた食堂は、広い空間に並べられた机に、ちらほらと人がいるだけであった。いつもは席の検討を予めつけておくのだが、空きコマ三限、ランチタイム終了間近の学生食堂は随分と空いていたから、私は食券を購入し、チキン南蛮のプレートを受け取ってから席を探した。
 混雑のピークを過ぎた食堂は、広い空間に並べられた机に、ちらほらと人がいるだけであった。いつもは席の検討を予めつけておくのだが、空きコマ三限、ランチタイム終了間近の学生食堂は随分と空いていたから、私は食券を購入し、チキン南蛮のプレートを受け取ってから席を探した。
 窓際の席を取ろうと近づくと、窓の外に、真夏の炎天下に一人、カウンター席でスケートお姉さんが食事をしているのに気がついた。スケートお姉さんとは、ピンクのヘルメットを被り、キャンパス内をローラースケートで移動する、この大学のちょっとした有名人だ。私が入学する前からいるらしいから、三年生か四年生だろうと踏んでいる。窓際に座った彼女はヘルメットを脱ぎ、いつもは見えない茶色のポニーテールを、風に靡かせていた。すでに半分腰掛けたような格好になったが、興味が湧いたので、再び立ち上がり、自動ドアをくぐって彼女に話しかけた。
 窓際の席を取ろうと近づくと、窓の外に、真夏の炎天下に一人、カウンター席でスケートお姉さんが食事をしているのに気がついた。スケートお姉さんとは、ピンクのヘルメットを被り、キャンパス内をローラースケートで移動する、この大学のちょっとした有名人だ。私が入学する前からいるらしいから、三年生か四年生だろうと踏んでいる。窓際に座った彼女はヘルメットを脱ぎ、いつもは見えない茶色のポニーテールを、風に靡かせていた。すでに半分腰掛けたような格好になったが、興味が湧いたので、再び立ち上がり、自動ドアを出て彼女に話しかけた。
「こんにちは! お隣いいですか?」
「こんにちは! お隣いいですか?」
 彼女はびくっと驚いた様子で顔をあげた。そして私を認めると、本当に柔らかに顔を綻ばせて、「ええ、もちろん!」と言った。考えていたいくつかよりも、ずっと好意的な反応だったから、私も思わず笑顔になって、「良かったです。断られたらどうしようかと思いました」と言いながら隣に座った。
 彼女は驚いた様子で顔をあげた。そして私を認めると、本当に柔らかに顔を綻ばせて、「ええ、もちろん!」と言った。考えていたいくつかよりも、ずっと好意的な反応だったから、私も思わず笑顔になって、「良かったです。断られたらどうしようかと思いました」と言いながら隣に座った。
「私は木嶋菜月です。経済の一年生です」
「私は木嶋菜月です。経済の一年生です」
「私は佐藤妃実です。」
「私は佐藤妃実と言います。」
 よろしくお願いします、そう言って彼女は上品に会釈をした。
 よろしくお願いします、そう言って彼女は上品に会釈をした。
 いただきます、と手を合わせ、私はチキン南蛮を口に運び始めた。
 では、あの、いただきます、と手を合わせ、私はチキン南蛮を口に運び始めた。
「妃実さんはどうしてローラースケート履いてるんですか?」
「妃実さんはどうしてローラースケート履いてるんですか?」
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