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「はあ、いつも言ってるが、これだけじゃ何もわからねえよ」 | 「はあ、いつも言ってるが、これだけじゃ何もわからねえよ」 | ||
「残念だが、俺が言えるのは『これが被害者の死体の傍で床に書き残されていた』ってだけだ……ギブアップするか?」 | |||
「いや……待て。必ず{{傍点|文章=作為}}があるはずだ。時間をくれ」 | |||
「ハハ、そうくると思ったぜ」 | 「ハハ、そうくると思ったぜ」 | ||
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「ほう」 | 「ほう」 | ||
「見た感じでは、全部の言葉を命令形にしているのかと思ったが……少なくともそれに堅固な規則性は見当たらない。『料れ研究しろ家の鰻和弘氏』だの、『あまれ衝撃的たれ素晴らしかれこのアイデア』だの……特に『内容れろ』の部分に関しては、飛びぬけて訳が分からない」 | |||
「……へっ、ホントだよ」 | 「……へっ、ホントだよ」 | ||
「ただ、錯乱して無意味な文章をしたためたと考えると、{{傍点|文章=それにしてはまとまりすぎている}} | 「ただ、錯乱して無意味な文章をしたためたと考えると、{{傍点|文章=それにしてはまとまりすぎている}}という印象だ。確かにこれは意味不明だが、それは文章が破綻していて解釈が不可能であるからというよりは、何故こんなことを書いたのかが分からないからだ。……だから一旦、この文章を『特定の人物に何かを伝えようとしたもの』だと仮定しよう。つまり、この文章には俺たちが気づいていない何らかの解読方法が存在する」 | ||
「まあ、ダイイングメッセージってそういうもんだしな」 | |||
「そう考えると、被害者が生命の危機を感じてから実際に死ぬまでには、ある程度の時間があったことがいえる。何せこのメッセージは長すぎるからな。しかし……ここからが難しいな。このメッセージは『消されていない』」 | |||
「というと?」 | |||
「まずこのメッセージは確実に、犯人に『見られた』か『見られなかった』か、そして犯人にとって『不利益だった』か『不利益でなかった』か、それぞれ必ずどちらかに該当し……つまりパターンが四つある。」 | |||
「回りくどい言い方だな」 | |||
「一つ目は、『見られた』かつ『不利益だった』場合。犯人は被害者が書いたダイイングメッセージを見て、その意味が分かったにしろ分からなかったにしろ、これが自分の罪の発覚に寄与することを危惧した。……しかしこの文章は残っている。犯人は、これを消そうにも消せなかったんだ。」 | |||
「どうしてだ?」 | |||
「このメッセージがどう床に書かれていたのか教えてもらえてないので分からないが、例えば鉛筆で書かれていたのなら消しゴムが無かった、インクで書かれていたのなら塗りつぶす分のインクが無かった、あるいはそもそも彫刻刀で床に刻まれていた……とかだろう。何かの理由で精神的に消すのをためらったという可能性もある」 | |||
「なるほど」 | |||
「ああ、あと、このメッセージは既に改変されている可能性もある。犯人が混乱を生じさせるために、元の文章を削ったり書き換えたりしたんだ。あるいはそもそも、このダイイングメッセージ自体が全て犯人の書いたものだという可能性もある」 | |||
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「筆跡は被害者のもの」 |
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