「利用者:キュアラプラプ/サンドボックス/乙」の版間の差分

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 数十分の説得の末、祥子は不貞腐れたように、ゆっくりと立ち上がった。テーブルに置かれている制作途中の折り鶴は、二年前と比べて形が歪んでいるのが嫌でも意識される出来栄えだった。
 数十分の説得の末、祥子は不貞腐れたように、ゆっくりと立ち上がった。テーブルに置かれている制作途中の折り鶴は、二年前と比べて形が歪んでいるのが嫌でも意識される出来栄えだった。


 
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「治験薬?」
「治験薬?」
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 二人で話し合って、薬はやはり飲むことにした。俺や娘夫婦が悲しむことで最も悲しむのは、祥子自身なのだ。俺は最初、少しだけ、祥子をあたかも押さえつけるようなつもりでいた部分があったかもしれない。そう思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。そして、それと同じくらい、これからも皆で頑張ろう、と思った。どんなに辛いことがあっても、家族で乗り越えていこう。そう思った。
 二人で話し合って、薬はやはり飲むことにした。俺や娘夫婦が悲しむことで最も悲しむのは、祥子自身なのだ。俺は最初、少しだけ、祥子をあたかも押さえつけるようなつもりでいた部分があったかもしれない。そう思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。そして、それと同じくらい、これからも皆で頑張ろう、と思った。どんなに辛いことがあっても、家族で乗り越えていこう。そう思った。


 
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 それから徐々に、祥子は大人しくなっていった。暴力行為がなくなったことに娘は安心したようで、再び介護のために家を訪れてくれるようになったし、去年産まれたばかりの孫も連れて家族で来てくれることも増えた。「あの薬があって本当に良かった」と、娘は言った。
 それから徐々に、祥子は大人しくなっていった。暴力行為がなくなったことに娘は安心したようで、再び介護のために家を訪れてくれるようになったし、去年産まれたばかりの孫も連れて家族で来てくれることも増えた。「あの薬があって本当に良かった」と、娘は言った。
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 このサイトに書かれていることが正しいのかは分からない。しかし、俺は一刻も早く祥子の担当医と話がしたいと思った。スマートフォンをテーブルの上に置く。気づけば長い時間が経っていたようだが、祥子はまだしくしく泣いていた。気づくと俺は車の運転席にいて、病院に向かっていた。
 このサイトに書かれていることが正しいのかは分からない。しかし、俺は一刻も早く祥子の担当医と話がしたいと思った。スマートフォンをテーブルの上に置く。気づけば長い時間が経っていたようだが、祥子はまだしくしく泣いていた。気づくと俺は車の運転席にいて、病院に向かっていた。
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