あなた、言語を創作したいと思ってますね?ええ、分かってますよ。人間とは常に創作言語の創作を欲するものです。
しかし、創作言語に敷居の高さを感じている常習者も多いでしょう。そこで、オリジナル言語の創作における大まかな流れをまとめてみました。
なお、これは言語学にわかであるキュアラプラプ個人の経験等に基づく見解であり、誤りを含む可能性があるので、怖い人に指摘されたりするかもしれませんが、勘弁してください('
まず、言語を創作する上で最初にしたほうがいいこととして挙げられるのは、その言語の「話者の設定」を決めることです。
架空の言語には、架空の話者が存在しなければなりません。そして、日本文化と日本語が切り離せないのと同じように、その架空の話者たちの文化を考えておくと、言語の創作は捗ります。
例えば「ピロリ語」では、話者がピロリ菌であるというものが大きな柱となっており、文法や語彙、表現にもこれが影響していますね。また、「開いた口が塞がらない語」(これを言語とできるかどうかは怪しいが)では、結果的とはいえ話者が平和的であるという理屈が生じています。
話者の特徴や文化をある程度定められたら、次は音韻・文字体系を考えてみましょう。
「音韻」とは、言語において用いられる音のことです。ここでは、実際に発声される音である「単音」と、その言語において一つの音と認められる単音の範囲である「音素」を定めましょう。
例えば、日本語の音韻「ら」は、音素/r/と/a/によって成り立っています。そして音素/r/は、[ɾ](無声歯茎はじき音)や[ɖ](有声そり舌破裂音)、[l](歯茎側面接近音)など、いくつかの単音によって発声されます。
音素の創作は、いわば範囲の決定であるため自由度が高いですが、単音に関しては既に確立され広く認められている体系が存在しているため、無理に再発明せずIPAにあやかりましょう('
音韻が出来たら、文字に取り掛かりましょう。文字の区分には実に様々なものがありますが、ここでは分かりやすいように「音メイン」と「意味メイン」に分けて説明します。
音メインの文字は、ひらがなやカタカナ、ラテン文字(所謂アルファベット)などが一般的です。これにも大きく分けて「音素文字」と「音節文字」が存在し、
それぞれラテン文字のように個々の音素に対応した文字の体系、そしてひらがなやカタカナのように(これには例外があるが)音素のまとまりである「音節」の個々に対応した文字の体系を指します。
実際の文字媒体では、これらを繋げ合わせて語を作り、それをつなぎ合わせて文を作ることになりますね。
一方、意味メインの文字には、漢字やヒエログリフなどがあります。「表語文字」である漢字は、一つの語が一つの字で表されます。例えば、「犬」は「犬」ですね。
また、「表意文字」であるヒエログリフは、一つの意味が一つの字で表されます。このように、文字を創作する上では、文中のどこで一文字の区切りをつけるかが重要になります。
効率面においては、少ない種類の文字を組み合わせて多くの意味を示すことができる音メインの文字が優れていますが、
意味メインの文字は音に縛られにくく、意味を単独でも持てるため造語しやすいことから、ジャパニーズマンガの厨二ルビ振りKANJI技名のようなロマンがあります('
音韻や文字を創作できたら、次はいよいよ文法です。
まず、言語には「文法範疇」というものがあります。これは、言語に備わっている、「複雑な何かを意味する」ための機能と言っていいでしょう。たぶん。('
例えば、あなたが単語しか使えない状態だとして、「ジョンに数学を教えていたのは私だ。すぐに泡を吹いて倒れてしまったけどね。」ということを言わなければならないとき、相当苦労しますよね。
まあとりあえず、物は試しです。やってみましょう。「ジョン 数学 教える 私」… ううん、これだとジョンが私に数学を教えているみたいですね。
じゃあ、「私 ジョン 教える 数学」にすれば… とまあ、このような感じで文法は生みだされます。
ここでは、文法範疇の一つである、文中でのその語の役割を表す「格」を、語順によって示そうとしていましたね。この方法をとる言語は「孤立語」に分類されます。
また、「屈折語」という分類もあります。これでは、その語を「曲用」、つまり形を変化させることで格を表示させます。なお、日本語は「に」等の「接辞」によって格を表示する「膠着語」です。
他にも、文中の一節「教えていた」に着目すると、ここには二つの文法範疇が入っています。一つは「時制」、もう一つは「相」です。
時制には聞きなじみがありますね。これは述べられている事柄の時間的なことを表します。一方、相はその動作の時間的な分布を表し、「進行相」や「完了相」などがあります。
日本の英語教育では、例えば「現在進行形」「過去完了形」のように時制と相は一緒くたに扱われますが、実はこれらは異なる文法範疇なのです。
そしてこれらは、一般的に動詞を「活用」、つまり形を変化させて表示します。このため、「教えていた」は「教える」が活用して、過去時制と進行相が表示された動詞だといえます。
文法範疇には、他にも話者の心理的な態度を表す「法」や、動作の視点を表す「態」、動作の起点について表す「人称」、語のカテゴリーである「性」など、様々なものがあります。
なお、その文法範疇の表示にも、曲用や活用のような語形変化をはじめ、語順の変更や助動詞の使用など、いくつかの方法が存在しています。いい感じになるように頑張りましょう。('
文法で表す事柄、またその表し方を決めたら、次は品詞分類や、文の成分の分類などをしてみましょう。
言語学において、文における構成要素は小さい順に「単音→音素→形態素→語→句→節→文」となっており、品詞は「語」、文の成分は「句」の、機能的な分類にあたります。
品詞には、一般的に名詞や動詞、形容詞、冠詞、接続詞、間投詞などが、文の成分には、一般的に主語や述語、目的語、補語、修飾語、独立語などが存在します。
ちなみに、日本語における品詞分類は、実際には意味を持つ最小のかたまりである「形態素」にまで達しているっぽいです。
この分類を行うことで、あなたの言語の概観を再認識し、その構造や体系を見直す足掛かりにできるばかりか、愉悦に浸ることだってできます。
さて、ここまできたら、あなたの創作言語は完成したようなものです。
これからは、単語を増やしてみたり、文法をいい感じに改良したり、はたまたその言語の通時的な変化を考えてみたりして、自分の言語を楽しみましょう。
身の回りのさまざまな言語の文を、手当たり次第に翻訳しまくると、勝手に単語が増えるし、問題点も見つかるので、是非。
あと、いろいろと詳しく知りたければ、寛大な心でペヂァの言語学関連ページをめっちゃ読め('
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