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「お姉さん先に逃げてるからね、ぼくも早く逃げるのよ?」
「お姉さん先に逃げてるからね、ぼくも早く逃げるのよ?」


そういうと、OLは階段を駆け降りていった。そうだ、まだ助かったとは限らない。雅登は後ろを振り返った。血の気が引いた。
そういうと、OLは階段を駆け降りていった。そうだ、まだ助かったとは限らない。雅登は後ろを振り返った。巨人は変わらず聳え立っていた。重力は消えたのに、体は崩れていない。吸引をやめただけで、体を構成するパーツへの重力は保っているのかもしれない。その時、血の気が引いた。


{{傍点|文章=巨人が動いた}}。
{{傍点|文章=巨人が動いた}}。


見間違いか? いや、確かに、動いている。この時、雅登は初めて巨人の細部を観察した。巨人は長い腕と太い胴、同じくらい太い脚があり、人の頭に当たる部分はない。まるで首を斬られたようだ。車やビルから飛んできたであろう事務用品、看板、タンク……。大量のものがモザイク画のように集まり、20mほどの巨体を形作っている。連結部分が引きちぎれたモノレールの車両2つが両腕の骨となり、それをさらにたくさんのものが覆っている。脚は、主に潰れた車からなる塊だ。ガソリンに火がついたのか、ちらちらと炎が覗いている。胴には電線が巻きつき、青い火花が散っていた。
見間違いか? いや、確かに、動いている。この時、雅登は初めて巨人の細部を観察した。巨人は長い腕と太い胴、同じくらい太い脚があり、人の頭に当たる部分はない。まるで首を斬られたようだ。車やビルから飛んできたであろう事務用品、看板、タンク……。大量のものがモザイク画のように集まり、20mほどの巨体を形作っている。連結部分が引きちぎれたモノレールの車両2つが両腕の骨となり、それをさらにたくさんのものが覆っている。脚は、主に潰れた車からなる塊だ。ガソリンに火がついたのか、ちらちらと炎が覗いている。胴には電線が巻きつき、青い火花が散っていた。鬼神。そんな言葉が浮かんだ。


さながら、鬼神。
そして、その腕がゆっくりと上がってきている。雅登は、ホームにへたり込んだまま、巨人を見つめていた。腕が地面と並行にまで上がったとき、唐突に腕が横に走った。轟音とともに、ビルが砕け、コンクリートの欠片が散る。わずかに遅れてホームが揺れる。そこで、雅登は我に返った。巨人は、破壊行為をしている。ここは、危険だ。
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