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===いまさらの制作===
===材料の調達===
3月2日当日、服毒自殺最大の障害・品瀬琢内を遠ざけるため、志仁田は一計を案じた。早朝、志仁田は品瀬に一通のメールを送った。そのメールには一枚の写真が添付されており、それはコルコバードの丘をバックに、丸々と肥えたフグを両手で掲げ持ち笑う、セーター姿の志仁田の写真であった。それを見た品瀬は15秒後にはタクシーを捕まえて空港へと急がせていた。しかし、その写真は、この前その辺のスタジオで撮った志仁田の写真にネットで拾ってきたリオの画像を合成したものだった。隕石騒動のとき品瀬を騙した経験から、志仁田は品瀬を遠ざける完璧な方法を思いついていたのだ。経由地のダラスからとんぼ返りしても、日本に帰ってくるまで二日近くかかる。今日の自殺は、品瀬のいないところで邪魔されることなく果たせるのだ。品瀬の乗った飛行機が羽田を発ったのを確認してから、志仁田はいまさらの制作に取り掛かった。志仁田は最大の障壁をさっさと除くことに成功したのである。
3月2日当日、服毒自殺最大の障害・品瀬琢内を遠ざけるため、志仁田は一計を案じた。早朝、志仁田は品瀬に一通のメールを送った。そのメールには一枚の写真が添付されており、それはコルコバードの丘をバックに、丸々と肥えたフグを両手で掲げ持ち笑う、セーター姿の志仁田の写真であった。それを見た品瀬は15秒後にはタクシーを捕まえて空港へと急がせていた。しかし、その写真は、この前その辺のスタジオで撮った志仁田の写真にネットで拾ってきたリオの画像を合成したものだった。隕石騒動のとき品瀬を騙した経験から、志仁田は品瀬を遠ざける完璧な方法を思いついていたのだ。経由地のダラスからとんぼ返りしても、日本に帰ってくるまで二日近くかかる。今日の自殺は、品瀬のいないところで邪魔されることなく果たせるのだ。品瀬の乗った飛行機が羽田を発ったのを確認してから、志仁田はいまさらの制作に取り掛かった。志仁田は最大の障壁をさっさと除くことに成功したのである。


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すぐ近くのなんか人が多くいる広場に行くと、志仁田はそこにいた人々になぜかめちゃめちゃ歓待された。志仁田が大きな机と皿を借りたい旨を話すと、なぜかめちゃめちゃ快く貸してくれ、あまつさえ手伝いを申し出てくれもした。志仁田はありがたく河川敷に机と皿を用意してもらい、いまさらの材料集めをお願いした。人々の歓迎ぶりには、先の小惑星事変の際、超人的な強靭さで次々と隕石を砕き割っていく少女の姿が世界中で広く伝えられたという背景があったのだが、そのときの志仁田には知る由もない。
すぐ近くのなんか人が多くいる広場に行くと、志仁田はそこにいた人々になぜかめちゃめちゃ歓待された。志仁田が大きな机と皿を借りたい旨を話すと、なぜかめちゃめちゃ快く貸してくれ、あまつさえ手伝いを申し出てくれもした。志仁田はありがたく河川敷に机と皿を用意してもらい、いまさらの材料集めをお願いした。人々の歓迎ぶりには、先の小惑星事変の際、超人的な強靭さで次々と隕石を砕き割っていく少女の姿が世界中で広く伝えられたという背景があったのだが、そのときの志仁田には知る由もない。


朝10時、13人の人々が志仁田から買い物を仰せつかった。志仁田自身ももちろん買い出しに行くので、総勢14名が手分けしていまさらの材料を買いに出かけた。人々は「サラダを作る」とだけ説明を受けていて、中には到底サラダの具材とは思えないものを買いに行かされる人も少なくなかったが、そこは地球を救った英雄、何か深いわけがあるのだろうと思い、誇らしげに自らの任務に就いた。
朝10時、13人の人々が志仁田から買い物を仰せつかった。志仁田が適当に順番に指を差していき、買うものを割り当てていった。志仁田自身ももちろん買い出しに行くので、総勢14名が手分けしていまさらの材料を買いに出かけた。今日中にいまさらを作り終えるために、午後二時にはこの河川敷に帰ってくることを確認し、14人は散開した。人々は「サラダを作る」とだけ説明を受けていて、中には到底サラダの具材とは思えないものを買いに行かされる人も少なくなかったが、そこは地球を救った英雄、何か深いわけがあるのだろうと思い、誇らしげに自らの任務に就いた。


志仁田は野菜を買いに[[八百屋]]に向かった。華の都・東京に商店は少ないのではないかと思っていたが、近隣住民に聞いた道を辿ると、あっさりと八百屋に行き当たり、さすがは東京だべ……と出身地でもない東北訛りを心中で披露してしまう志仁田であった。かくして八百屋に到着した志仁田は、難なくレタス・キャベツ・白菜・小松菜・ブロッコリー・トマト・きゅうりをゲットした。隕石騒動のあと、志仁田は偉い人になぜかめちゃめちゃ感謝されてお金を貰ったので、購入資金には困らなかった。なお、おつかいに行ってくれている人々にも、そのお金を渡している。大体の野菜を調達した志仁田だったが、ただ一つ、八百屋には水菜がなかった。旬はそう外れていないのになあ困ったなあと思いながら、志仁田は別の八百屋を探して歩いていった。
志仁田は野菜を買いに[[八百屋]]に向かった。華の都・東京に商店は少ないのではないかと思っていたが、近隣住民に聞いた道を辿ると、あっさりと八百屋に行き当たり、さすがは東京だべ……と出身地でもない東北訛りを心中で披露してしまう志仁田であった。かくして八百屋に到着した志仁田は、難なくレタス・キャベツ・白菜・小松菜・ブロッコリー・トマト・きゅうりをゲットした。隕石騒動のあと、志仁田は偉い人になぜかめちゃめちゃ感謝されて、無敵クレジットカードみたいなカードをいっぱい貰ったので、購入資金には困らなかった。なお、おつかいに行ってくれている人々にも、そのカードを渡している。大体の野菜を調達した志仁田だったが、ただ一つ、八百屋には水菜がなかった。旬はそう外れていないのになあ困ったなあと思いながら、志仁田は別の八百屋を探して歩いていった。


キャベツ農家のおじさんはハムとウインナーを買いに肉屋へと向かっていた。どうせなら専門領域である野菜を買い、新鮮で美味しいサラダをあの少女に食べさせてあげたかったが、少女がそこに集まった人々に適当に買うものを割り振ったので、仕方がない。おじさんは近くの商店街へと出かけ、肉屋を訪ねた。そこで豚のハムとウインナーを購入し、火を通すためのカセットボンベを用意しなくちゃな、などと考えながらゆっくりと河川敷へ戻っていった。
キャベツ農家のおじさんはハムとウインナーを買いに肉屋へと向かっていた。どうせなら専門領域である野菜を買い、新鮮で美味しいサラダをあの少女に食べさせてあげたかったが、少女がそこに集まった人々に適当に買うものを割り振ったので、仕方がない。おじさんは近くの商店街へと出かけ、肉屋を訪ねた。そこで豚のハムとウインナーを購入し、火を通すためのカセットボンベを用意しなくちゃな、などと考えながらゆっくりと河川敷へ戻っていった。
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舞妓さんはまきびしを買いに、忍者の里へと向かっていた。どうせなら持っている和傘を志仁田はんにあげたかったが、志仁田はんがそこに集まった人々に適当に買うものを割り振ったので、仕方がない。どうやら近くに甲賀流忍者の里東京支部があるようなので、舞妓はそこを目指していた。それにしても、サラダを作りはるのにまきびしがなんの役に立つんでっしゃろ? と舞妓は思ったが、わからないものは仕方がない。やがて甲賀市東京支部に着くと、忍者グッズの売店に入った。手裏剣の横にまきびしコーナーはあり、さまざまな種類のまきびしが陳列されていた。店番のくの一から丁寧な説明を受けつつ、どのまきびしが最適か、舞妓は吟味し始めた。
舞妓さんはまきびしを買いに、忍者の里へと向かっていた。どうせなら持っている和傘を志仁田はんにあげたかったが、志仁田はんがそこに集まった人々に適当に買うものを割り振ったので、仕方がない。どうやら近くに甲賀流忍者の里東京支部があるようなので、舞妓はそこを目指していた。それにしても、サラダを作りはるのにまきびしがなんの役に立つんでっしゃろ? と舞妓は思ったが、わからないものは仕方がない。やがて甲賀市東京支部に着くと、忍者グッズの売店に入った。手裏剣の横にまきびしコーナーはあり、さまざまな種類のまきびしが陳列されていた。店番のくの一から丁寧な説明を受けつつ、どのまきびしが最適か、舞妓は吟味し始めた。


[[Sisters:WikiWiki麻薬ショナリー#「伊賀流忍者」|伊賀流忍者]]は50mm擲弾筒を買いに、東急ハンズへと向かっていた。どうせなら帯びているまきびしをあの<ruby>女子<rt>おなご</rt></ruby>にあげたかったでござるが、女子がそこに集まった人々に適当に買うものを割り振ったので、詮方ないでござる。しかし、「ごじふみりてきだんとう」とは、いかなるものでござろうか。通りすがりの男に訊ねてみると、「さあ? なんか武器っぽいけどね」との応えでござった。拙者、忍びが用いる暗器には詳しいものの、近頃の世事にはとんと疎い。そこで、大抵のものが売られているという<ruby>大店<rt>おおだな</rt></ruby>、「とうきふはんず」に向かっているのでござる。ところが、駅前の店に着き、店員の娘に聞いてみたでござるが、目的の品は取り扱ってござらぬとのこと。天下の大店、とうきふはんずにも売ってござらぬならば、浮世で入手するのは至難の業、蓬莱の玉の枝ほどに希少な珍品でござろう。途方に暮れた伊賀流忍者は、ふとある品に目を留めた。
[[Sisters:WikiWiki麻薬ショナリー#「伊賀流忍者」|伊賀流忍者]]は50mm擲弾筒を買いに、東急ハンズへと向かっていた。どうせなら帯びているまきびしを志仁田殿にあげたかったでござるが、志仁田殿がそこに集まった人々に適当に買うものを割り振ったので、詮方ないでござる。しかし、「ごじふみりてきだんとう」とは、いかなるものでござろうか。通りすがりの男に訊ねてみると、「さあ? なんか武器っぽいけどね」との応えでござった。拙者、忍びが用いる暗器には詳しいものの、近頃の世事にはとんと疎い。そこで、大抵のものが売られているという<ruby>大店<rt>おおだな</rt></ruby>、「とうきふはんず」に向かっているのでござる。ところが、駅前の店に着き、店員の娘に聞いてみたでござるが、目的の品は取り扱ってござらぬとのこと。天下の大店、とうきふはんずにも売ってござらぬならば、浮世で入手するのは至難の業、蓬莱の玉の枝ほどに希少な珍品でござろう。途方に暮れた伊賀流忍者は、ふとある品に目を留めた。
 
ミリオタの男はゴールボールを買いに、スポーツ用品店へと向かっていた。どうせなら界隈民御用達のミリタリー関係のセカンドショップをあの女子に紹介したかったが、あの女子がそこに集まった人々に適当に買うものを割り振ったので、仕方がない。ゴールボールを買ってこいと言われたときは「スポーツを⁈」と驚いたが、買えるからには使われるボールのことだろう。慣れない歩行で滝のように流れる汗を拭い拭い、到着した店ではしかし、ゴールボールは売っていなかった。まあそこまで一般人に膾炙した競技じゃないしなあと思いつつ、落胆を隠せなかった男に、店主は声をかけてきた。事情を知った老齢の店主は、男に孫の話をし始めた。
 
ゴールボール好きの女性は自学帳を買いに、文房具店へと向かっていた。どうせなら視覚障害者の仲間とやっているゴールボール同好会の備品を貸してあげたかったが、志仁田さんがそこに集まった人々に適当に買うものを割り振ったので、仕方がない。白杖をつきながら、歩き慣れた歩道をゆっくりと進む。しかし近頃周りの景色がめっきり変わってしまったので、油断はできない。だがどうやら目当ての文房具店にたどり着いたようで、彼女は初めて店内に足を踏み入れた。すると店員らしき若い男性の声がし、ノートが一冊欲しいと話すと、一瞬奥に引っ込むとすぐに持ってきてくれた。女性は代金を払い丁重に礼を言うと、店を辞した。そして、来た道を往路と同様、慎重に戻っていった。その後、若い男性がどうも嫌な感じの笑い声を上げたが、彼女の耳には届いていない。
 
公立中学校に通う男子は、そこらへんを足速に歩き回っていた。どうせなら今も持っている自学帳をあのお姉さんにあげたかったが、お姉さんがそこに集まった人々に適当に買うものを割り振ったので、仕方がない。その日は休日だったが、口うるさい親にせっつかれ、図書館へと勉強しに出かけたのだ。スマホは親に預けさせられ、勉強用具と最低限の貴重品だけを入れた肩掛けバッグを持ち、しかしなんとも気が向かないので川辺をぶらぶらしていたところで、世界を救った有名人に会ったのだ。だが、買い物もせずせかせかと歩いては人と肩をぶつけてしまい小声で謝ることを繰り返しているのには、わけがあった。三階フロアは手に入らないが、でも仕方ない。時間を適当に潰して戻ろう。このカードさえ返せば大丈夫だよな。だって……
 
マンション王はYSー11を買いに、スーパーへと向かっていた。どうせなら自分が所有するマンションの三階フロアを少女風ちゃんに提供したかったが、そうはいかなかったので仕方がない。それにしてもYSなんとかってなんなんだろう。知らないがとりあえずスーパーに来たんだからどうにかなるだろう。早速レジの爺さんに聞いてみると「それはとっくのとうに生産終了しとるよ」と言われてしまった。生産終了しているならどうしようもない。中古品を手に入れられるだろうか、いや限られた時間では厳しいか、などと考えるマンション王の前に、一つの値札があるのに気づいた。それを見た瞬間、マンション王は確信した。なんとかかんとかは生産終了したが、後継商品が発売されていたのだ!


==脚注==
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