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==真実== | ==真実== | ||
しかし、当時流れた蜚語の中に、真実は無かった。如何せん"先例"が無かったからのお。もし十分に時間があれば、専門家の本格的な調査も行え、或いは租唖の正体も詳らかにできたのかもしれん。じゃが、この後直ぐに「租唖の悪魔」が<span style="ff3300">あやつ</span>に喰われてしもうたから、租唖という存在は人々の記憶ごと消えてしもうた。 | しかし、当時流れた蜚語の中に、真実は無かった。如何せん"先例"が無かったからのお。もし十分に時間があれば、専門家の本格的な調査も行え、或いは租唖の正体も詳らかにできたのかもしれん。じゃが、この後直ぐに「租唖の悪魔」が<span style="color:#ff3300">あやつ</span>に喰われてしもうたから、租唖という存在は人々の記憶ごと消えてしもうた。 | ||
そこで、あの時何が起こっていたのか。租唖とは何じゃったのか。儂しか知らん真実を、お主に教えてやろう。 | そこで、あの時何が起こっていたのか。租唖とは何じゃったのか。儂しか知らん真実を、お主に教えてやろう。 | ||
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ここまで言えば、流石にお主も判っておるじゃろう。そう、租唖とは、'''[https://ja.m.wikipedia.org/wiki/イタイイタイ病 イタイイタイ病]'''なんじゃ。時代と場所と原因物質が違うだけで、他は驚くほど似ておる。まさか病名のつき方さえも似るとはのう。偶々、ダイク・ニコルセンが住んでおった[https://ja.m.wikipedia.org/wiki/角ヶ仙 角ヶ仙]の地下には、インジウム鉱床が眠っておった。それが地下水に溶け込み、倉見川に流れ込んでおったんじゃ。その下流の行重は、勿論田畑に倉見川の水を使う。こうして、インジウムは少しずつ米を始めとした作物に蓄積していった。当然それを食べる人々の体も蝕まれていったんじゃ。 | ここまで言えば、流石にお主も判っておるじゃろう。そう、租唖とは、'''[https://ja.m.wikipedia.org/wiki/イタイイタイ病 イタイイタイ病]'''なんじゃ。時代と場所と原因物質が違うだけで、他は驚くほど似ておる。まさか病名のつき方さえも似るとはのう。偶々、ダイク・ニコルセンが住んでおった[https://ja.m.wikipedia.org/wiki/角ヶ仙 角ヶ仙]の地下には、インジウム鉱床が眠っておった。それが地下水に溶け込み、倉見川に流れ込んでおったんじゃ。その下流の行重は、勿論田畑に倉見川の水を使う。こうして、インジウムは少しずつ米を始めとした作物に蓄積していった。当然それを食べる人々の体も蝕まれていったんじゃ。 | ||
しかし、直ぐに租唖の悪魔が<span style="color:#ff3300">あやつ</span>に喰われ、インジウムの毒性ごと租唖は消滅してしもうたんじゃ。租唖の罹患者は、租唖の消滅に伴って何事も無かったかのように回復した。否、儂以外にとっちゃあ何事も無かったのか。まあ患者にとっては僥倖じゃったの。 | |||
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じゃが、この物語は終わりじゃあない。租唖が消滅する前、租唖への恐怖を極限まで押し上げた出来事があった。結局、人の運命は人が決めるんじゃ。さあ、最終章に入ろうじゃないか。 | |||
==破局== | |||
租唖が猛威を振るっていた1938年5月、とある男に歪んだ思いが芽生える。 |
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